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心理学

アフォーダンス

投稿日:2020年11月18日 更新日:

アフォーダンスとは

概要

アフォーダンスは周囲の環境が与える心理的な効果です。

人をはじめとした動物は無意識の内に様々な刺激を受けてその刺激に対応した行動を大なり小なり行っています。

自然界で暮らす動物は受けた刺激に対するリアクションが顕著で、行動にわかりやすく表れる事が多いですが、人は霊長類の中でも比較的知能が発達し社会性を持っているため「時と場所に応じた適切な言動」ができるように脳が発達しました。

そのため、外的刺激に対してリアクションをそのまま返すのではなく、受けとった刺激に対して感情的な衝動を押し殺した冷静な対応ができるように進化しました。

具体的には
お腹が減っていてもお店に並んでいる商品を勝手に食べるという事は子供でもあまりしません。

しかし、刺激には様々な種類があり、強さや重要性も異なるため認知して理性的に判断できる情報には限界があるため、実際には無意識に受け取っている情報はとても多い一方で深層心理に様々影響を与えて言動の根幹となる価値観や感情などを形成していきます。

そして、この無意識に受けている刺激に対しての反応がアフォーダンスと言われています。

多くの人はこのような環境による影響を受けていてもそれに気づかずに過ごしている事が多いですが、基本的で単純な刺激に対するリアクションにはパターンがある事がわかっていて、このパターンを学ぶ学問が心理学です。

刺激と言っても人には五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)があるため、様々な刺激が複合的に合わさって影響しますし、その刺激の強さのバランスも多種多様なので他者の心理行動を完璧に把握する事は難しいですし、他人を思った通りに操る(洗脳する)事はとても難易度が高いです。

アフォーダンスの具体例

アフォーダンスは情報は環境に存在していて「人や動物はその意味や価値を見出すという」概念です。

つまり、環境(物)から様々な情報を受けとる事で人の言動が影響を受けている状態になります。

基本的に「無意識にできてしまう」事はアフォーダンスの影響を受けている事が多いです。

例えば

  • 水道の蛇口
    多くの種類の形状がありますが迷うことなく蛇口をひねって水を出すことができます。
  • 取手
    ドアや箱を開閉する時には把手を「引く・押す・上げる・下げる・横にずらす」などのパターンがありますし鍵がついている扉もありますが、無意識でこれらの動作をしていて中には出先で「鍵をかけてきたかな?」と心配になる事がある人もいます。

  • 轍や舗装されている地面があればそこを「道」と認識して目的地へのルートを考えると思います。
  • 境界
    他人の敷地や公共の敷地を正確に見極める事は難しいですが、多くの人は感覚的に「ここは私有地」「ここは公共エリア」と無意識のうちに識別しています。

このように私たちの身の回りには多くの情報が溢れているため、日常的に無意識のうちに環境にあわせた行動を行っています。

そのため、特にデザインの分野ではアフォーダンスを意識して設計される事が多いです。
※デザインの分野に特化したアフォーダンスの概念はシグニファイアと呼ばれています。

具体的には
思わず座りたくなるようなデザインの椅子の研究などがされています。

もちろん、インテリアとしての見た目や状況に合わせてデザインは異なるため「完全に正しいもの」はありませんが「機能性や利便性」だけではなく心理的な影響まで考慮した様々なデザインが考えられています。

実際に住宅などのインテリアの配置では「疲れて帰宅した際に座りやすい場所に椅子が置いてある」場合と「椅子が無い」場合では帰宅後の休憩時間が異なると言われています。
※感覚器にも座りやすい場所に椅子があれば休憩してしまう気がします。

そして、このような日常的な些細な心理的な影響を繰り返し受ける事で私たちの言動は無意識のうちに少しずつ誘導されています。

そのため、自分で考えて行動していたとしても環境的な要因が一切ないと断言する事は難しいです。

反対に、夢や目標があるならば環境を整備する事で周囲の環境的な要因が夢を後押ししてくれるようになります。

環境の影響の具体例

目標に適した環境を整えるとその目標を達成するための行動が変わります。

例えば
貯金ができない人はその環境に大きな要因がある事が多いです。

具体的な例をあげると

  • 家計簿をつけない
  • 余ったらお金を貯金する
  • 生活費と貯金の口座を分けていない
  • 友達からの誘いが多い
  • スーパーよりもコンビニが近くにある
  • 会社から家に帰るまでに頻繁に寄ってしまうお店がある
  • 外食する事が多い

このような環境に該当すると貯金を行おうと努力をしても誘惑が多い環境なためお金は溜まりにくいです。

つまり、該当する項目が多い人はそれらの環境を改善する事で成果が出やすくなります。

また、心理会計(メンタルアカウンティング)による家計管理しか行わず、可処分所得がいくらであるのかも確認しない人は金融事故を起こすリスクもあるので注意が必要です。

実際の事例

心理的な影響が大きければ行動にも大きな影響が現れ、それが繰り返し行われる事で能力や性格にも影響を与えると考えられています。

例えば
長子に生まれた人は小さいうちから末子の面倒を見る事が多いため環境的に頭を使う機会が多いです。

そのため、長子とそうでない人のIQ(アイキュー)を測定すると長子の方がIQが3高いという統計が出ています。
※これは総体的に分析したものなので一般的な基準であるため家庭によっては異なると思います。

他にも
長男と次男を比べると次男の方が社長になる傾向が強いという統計もあります。

基本的に長男は保守的な傾向があると考えられているため、次男の方が冒険心が強く社長になる人が多いと考えられています。

このような分析から、環境的な要因があるという事は完全否定できるほど小さな差ではないという結果となっています。

まとめ

アフォーダンスは環境によって受ける心理的な要因です。

過去に無意識のうちに潜在意識を操作する事がある事が危険視された事例もあります。

日常的に目にする機会が多い広告・CM(コマーシャル)ですが、サブリミナル効果を利用した現象として「繰り返し目にするTVやディスプレイの映像の中に認識できないレベルで潜在意識を刺激するような映像を紛れ込ませる事で行動に影響を与える」事が危険視されました。

実際にサブリミナル効果をマーケティングの一環として活用できるのかを調べた結果、購買を促進する事を目的として作られた映像によって実際に購買行動が確認されています。
※実際の数字として有効だと判断できるような結果になっています。

商品売買ならまだしも、これにいかなる規制もかけずにいると「人の生死にかかわる可能性がある映像」を大多数の人に流す事もでき、大衆の言動を操作する可能性が危険視されたため現在は禁止されています。

このように、深層心理に影響を与える刺激を日々積み重ねる事で人生にも影響を与えかねない事例もあります。

そのため、日常的に接する機会が多いものがどのような心理的影響を与えるのかを見つめなおす事は重要です。

備考

アメリカの知覚心理学者ジェームズ・J・ギブソンが「与える、提供する」などを意味する英語の「アフォード(afford)」から「アフォーダンス」という造語を考えました。
1950年後半にギブゾンが提唱したアフォーダンス理論は認知心理学で「情報は環境に存在し、人や動物はそこから意味や価値を見いだす」という概念です。

似た言葉にシグニファイアがあり、アフォーダンスをデザインの世界に適用させたとして大きな功績だと考えられています。
こちらは、1988年にアメリカの認知科学者であるドナルド・アーサー・ノーマンは現在は広く認知されている「物の持つ性質が行動のヒントや意味を伝達する」と提唱しました。
ノーマンは「信号、合図」などを意味する英語の「シグナル(signal)」から「シグニファイア(Signifier)」という造語を考えました。

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