ダニング=クルーガー効果 | あむぶろ 学校では教えてくれない大切なこと

心理学

ダニング=クルーガー効果

投稿日:2020年10月9日 更新日:

ダニング=クルーガー効果とは

概要

ダニング・クルーガー効果は「能力が低い人ほど自己評価が高く、能力が高い人ほど自己評価が低い」という現象が起きてしまう効果です。

ダニングクルーガー効果は直感的な印象とは逆のイメージを受けてしまう不自然な錯覚に感じるかもしれませんが実際に多くのケースでこのような現象が起きてしまうと考えられています。

このような”おかしい自己評価”になってしまう原因は「自己評価の能力」と「他者評価の能力」の差にあります。

語弊を恐れずに理解しやすい表現にすると「能力が低い人ほど”自分が無知である”と理解するだけの知識や経験がない」という事です。
※これは挑戦や努力を怠った結果として視野が狭くなってしまっている事が原因です。

職場や学校のように多くの人が長い期間一緒に活動する場所では「能力の低い人ほど自己主張が強い」という現象を体感する機会も多いですが短期間しか一緒に過ごしていない場合は実際の能力を確認するには時間が足りないケースが多いです。

自己評価が過大になってしまう背景には「自分の能力不足を認識できない」「どの程度の能力が不足しているのかがわからない」「他者の能力を正確に認識できていない」などの根本的な要因が隠れていますが「自己主張をしないと埋もれてしまう人並みの能力」もしくは「人並み以下の能力」である事が原因で自分のメンタルを保つための”自己防衛本能”の一種として過大評価する事で劣等感から身を護るというケースも多いです。

基本的に人は自分を護るために優越の錯覚(他人よりも優れていると思い込む心理)の影響を受ける影響で他者からの評価よりも自己評価が高くなり認識の差が発生してしまう傾向があるため「自分が優れている」と錯覚するのは自然な事ですが「自信過剰」になり過ぎると周囲の嫌悪感が強くなってしまうためコミュニケーションでのトラブルが発生する危険が増加するので注意が必要です。

「チョットデキル」について

IIT技術の世界では最高熟練度を表す言葉として「チョットデキル」という言葉が度々使われます。

これはLinux(リナックス)というOSの製作者であるリーナス・トーバルズ(Linus Torvalds)が「ワタシハリナックスチョットデキル」というTシャツを着ていた事から広まりました。
※リナックスはサーバーに搭載されているOS(オペレーティング・システム)でトップシェアを誇っていて、世界中のスーパーコンピュータのトップ500には何らかの種類のLinuxが稼働し、柔軟性の高さからロボット・テレビ・車・人工衛星にも搭載され、LinuxをベースとしたスマートフォンOSのAndroid OSが70%以上のマーケットシェアを獲得しています。

このことから、IT系の詳しい知識を持っている人の間では

  • 完全に理解した
     製品を利用をするためのチュートリアルを完了できた状態
  • なにもわからない
     製品が本質的に抱える問題に直面するほど熟知が進んだ状態
  • チョットデキル
     同じ製品を自分でも1から作れる状態、または開発者本人

このような常識が広まっているほどですが関連業種から遠い人ほど「チョットデキル」と言われると嘘や冗談だと思うか、本当に「この人チョットできる人」という認識になってしまうと思います。

能力と自信について

能力と自信は必ずしも相関するものではなく多くの場合はハイプ・サイクルのような曲線を描く傾向があります。

そして、これがダニングクルーガー効果の原因ともなっています。

  • 黎明期(れいめいき)
    • 図の一番左下から始まり「馬鹿の山」へ向かって自信が増加していく段階です。
    • 最も初期の段階で自信も能力も低い状態で、多くの人は基本的に”始めたては能力が低い”という自覚があるため自信がない状況から始まります。
    • この状態は「なにがわからないかすらわからない」と思っている段階です。
  • 流行期
    • ダニングクルーガー効果では「馬鹿の山」と言われる段階になります。
    • 初心者を抜けて次第に能力が伸びていくと自信がついていき実際の能力は高くない一方で「自信が最もある」状態で、自分のレベルを過信している状態です。
    • 俗に言う「天狗になっている」状態です。
      ※一見簡単そうなもの(プロがやっていると簡単に見えたりして「未経験でもある程度できる」と思えるような事)の難易度を誤解している状態なども該当します。
  • 幻滅気
    • ダニングクルーガー効果では「絶望の谷」と言われる段階になります。
    • 能力が向上していくと自分よりも優れた人がいるという事実を認識できるようになります。
    • 今までレベルが高すぎて認識できなかった「格が違う人がいる」という現実が理解できるようになる段階です。
    • 今まで「自分の能力は高い」と過信していたのが恥ずかしくなってしまい実際の能力以上に自信がなくなってしまいます。
  • 回復期
    • ダニングクルーガー効果では「啓蒙の坂(けいもうのさか)」と言われる段階になります。
    • 能力が高上していき徐々に自信を取り戻していく段階で「自己の評価」と「他者からの評価」の差がなくなっていく段階です。
  • 継続の大地
    • ダニングクルーガー効果では「継続の大地」と言われる段階になります。
    • 能力が向上と共に適切な自信を持っています。
    • この段階までくると能力開発を継続する大切さがわかっています。
    • 能力が高くなって自分の能力がどのレベルであるのかが適正に判断できます。

能力が高い人は”自分の至らぬ点”を認識できますし周囲には自分よりも優秀な人が集まる傾向があるため比較対象のレベルが高い事が影響して基準点が高くなってしまう傾向があり、自己評価は本来よりも低くなりやすい傾向があります。
※努力する事で様々な視点から自分の能力を正当に分析できるようになるため現実的な評価になりやすいです。

つまり、はたからみると「能力が低い人は自己評価が高い」傾向があり「能力が高い人は自己評価が低い」傾向があります。

具体例

ダニングクルーガー効果で言われる「知らない事すらわからない状態」は少しイメージしにくいと思いますが新しい事に初めて取り組む時は「どこから手を付けていいのかわからない」というケースも多いと思います。
※基本的には何回もやるうちに効率よく応用が利いた対応ができるようになります。

特に単純に思えるものほど実際は奥が深くて難しい場合が多いです。

代表的な例としてチャレンジする敷居が低い”厚焼き玉子”で考えてみます。

基本的には厚焼き玉子は卵を焼くだけのシンプルなものですが火加減や味付けによって全く異なった食べ物となります。

お店で仕事としてプロの料理人が作っている一品に舌鼓をうち「美味しい」と思ってもその味や触感を再現する事は素人には難しいです。

しかし、実際に作った事がない人にはその難易度はわからないため「卵を焼くだけでしょ?」と簡単に思う人が多いと思います。
※惣菜コーナーでポテトサラダを手にした幼児連れの女性が高齢男性から「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と言われた話はニュースでも取り上げられるほど話題となりましたが実際にポテトサラダを作るのは時間や手間がかかりますし子供の世話をしながら作るのは経験しないとわからない苦労が多いと思います。

このような「難易度がわかる人」と「難易度すらわからない人」では知識や経験に大きな差がある状態で、この差が自信と能力のギャップになります。

実際の数字として評価がでる「学生時代に行われたテスト」や「資格試験の合否」を思い浮かべると評価点数と自信の差についてのイメージが付きやすいと思います。

学生時代は「高得点なのにテストの点数に不満なAさん」と「赤点ギリギリなのにテストの点数に満足なBさん」のように両極端な同級生を目にする機会も多いと思います。

しかし、第三者からみたら基本的にはAさんの方が「総合的には努力をしている」と評価するはずです。

このようにA・Bさんはそれぞれの評価基準が異なる(過去の実績や日常的な勉強量など)ため点数が高いAさんは「努力が足りなかった」という自己評価となり、点数が低いBさんは「十分努力した」という自己評価となり本来の評価(学習時間やテストの特典)と自己評価が逆転してしまう事も多いです。

具体例のように評価が点数として明瞭な数字が出るシーンでは比較的自己評価と能力の差を確認しやすいですが、社会人になってビジネスを行う場合は「業務を効率的に行っている人」と「他者の足を引っ張り生産性を下げている人」の違いが不明確になりやすい傾向があります。

特に大きな組織になるほど多くの従業員が必要になるため上司と部下のような関係も増えますが「能力の低い上司」と「能力の高い部下」のような関係の場合は組織内の力関係の影響を受けて評価と能力が釣り合わない事も多いです。
※年功序列のシステム的に能力に見合わない出世をしている人もいますし、能力主義のシステムではピーターの法則の影響によって”能力が不足するまで昇進する”組織の場合はポジションに必要な能力を満たせない人が配置されてしまうケースもあります。

特に「資格取得を目指して必死に勉強していて自分の能力不足を痛感している人」と「努力せずに時間を持て余して自らのスキルが十分に高いと誤認している人」との間には大きな差があります。

まとめ

ダニングクルーガー効果が起きてしまうのは自分や周囲の評価が正しく行えない事が原因ですが、様々な要素(心理学的なものやパラドックスなど)が複合的に絡むため自分に対して「正しい評価」を正確に行う事はとても難しいです。

そのため、芸の世界では対処法としてこのような考えが語られています。

他人の芸を見て「あいつは下手だな」と思ったらそいつは自分と同じくらい。
「同じくらいだな」と思ったらかなり上。
「うまいなあ」と感じたらとてつもなく先へ行っているもんだ。

落語家(1890~1973)の5代目 古今亭志ん生(ここんてい・しんしょう)

このように、まずは自分の評価基準と実際の評価が異なる事実を受け入れる事はとても大切です。

自身では高評価なのに他者から低評価を受けてしまうのがナルシスト(自己愛性パーソナリティ障害)です。

このようなタイプの人は身の丈をわかっておらず自分を過大評価して失敗する人が多いです。

自己評価と他者評価が大きく異なるのは優越の錯覚の影響によって起こる心理を抑制できるような理性が乏しい人で、感情に流されてしまう論理的思考(ロジカルシンキング)が苦手な人です。
基本的にこのタイプは自分が知らない事を知ろうともしません。

そのため、自意識過剰が顕著に表れるナルシスト(自己愛性パーソナリティ障害)のような病気の場合は周囲の足を引っ張ってしまう程に著しくレベルが低い可能性があるので注意が必要です。

その反面、優秀な人ほど自分を過小評価するインポスター症候群(自分の実績や能力を認められない状態)の傾向が強いです。

これは理性が強く物事を冷静に受け止められる反面、知識が豊富すぎて知らない事が多い事を知っていて上昇志向も強い影響から自分の優秀さに気付かない場合が多いです。

そして、優秀なのに自己評価が低い原因の多くは、自分にできることは他人にもできて当たり前だと思う傾向が強いようで、先天的な才能の溢れているギフテッドタレンテッドHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)や、長子に生まれたため大人と比べられる事が多く「下の子の面倒を見るのはあたりまえ」という環境で育った場合に陥りやすい心理のようです。

このように、自己評価は主観的な指標によって決定されるため、周囲と比較した実際の能力とは異なった判断基準によって決定されています。
そのため、実際の能力と自己評価による優劣は逆転することがあります。

しかし、能力が低い人に中途半端な知識を与える事には注意が必要です。

多くの場合、能力の低い人は自ら率先して動くことができないため、その怠慢の積み重ねによって能力が伸びなかった人です。

そのような人に中途半端な知識を与えると騙されたり、気づかなかない方が幸せだった事に気づいてしまい不幸になってしまう事があります。
※実際に金融知識の乏しい人が中途半端な知識を得ると金融詐欺にあってしまう事件も多いので十分な知識が必要になります。

日本では「知らぬが仏」ということわざがあるように、世の中には知らない方が幸せな事はいっぱいあります。

見たくない人に無理やり現実をつきつける事はオススメできません。

備考

デビット・ダニングとシャスティン・クルーガーが提唱したため、ダニング・クルーガー効果と呼ばれます。

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