資本主義(資本制)とは
概要
資本主義は営利目的の資本によって経済が動いている環境です。
資本主義は商品の取引を行う中で自然と競争が起きる事で経済が成長・発展していき生活水準が向上していくのが特徴とされています。
しかし、放任するだけで経済成長が進み続けるわけではなく、金融危機の影響などで破綻してしまう恐れがあります。
そのため、破綻を避けるように国家が主体となりある程度コントロールをして上手く調整を行う事が重要だと考えられています。
資本主義の問題点
資本主義はその名の通り、資本が大きな影響力を持っているため大きな資産を持っている方が選択肢が多い傾向があります。
これは資本が多い方がより多くの選択肢の中から有利な選択肢をチョイスする事ができるためです。
例えば、ごはんを食べたい場合
- カップ麵 100円
- お弁当 500円
- 飲食店 1,000円
このような選択肢があるとして、
- 資本が少ない場合(所持金300円)
選べる選択肢がカップ麺しかありません。 - 少し資本がある場合(所持金500円)
選べる選択肢は「カップ麺」「お弁当」の2択になります。 - 資本がある場合(所持金1,000円)
選べる選択肢は「カップ麺」「お弁当」「飲食店」の全ての中から選ぶ事ができます。
このように、資本が少ないと選択肢が狭くなってしまいます。
この例の場合はごはんの質が異なるだけなので大きな影響はないかもしれませんが、現実的な問題として生死を分ける選択も資本の大小によって決まる事があります。
※十分な医療を受けられない場合や生活に困窮してしまう場合など
そのため、基本的に大きな資本があるメリットは大きいですが、個人的な資本のみでは大きな資本を得る事は難しいです。
特に生まれた家庭環境の貧富の差は子供の将来的な貧富の差も決まってしまっているため、貧困層の出身者が現状を覆して富裕層になる事はとても難しいです。
このような資本の差によってもたらされる貧富の差は日本でも近年問題視されるようになってきており、親の貧困が子供へと継承される貧困の連鎖をどうにか改善したいと考える人も現れ始めていますが実際に改善する事はとても困難です。
資本が与える影響の具体例
- Aさんの場合
- 会社員として働いていますが大部分は生活費でなくなります。
- 残ったお金は娯楽のために使います。
- 翌月も翌々月もこの繰り返しで手元に残る資産はありません。
- 俗にいうラットレース の状態です。
- Bさんの場合
- 親から継承した資産が10億円あります。
- 10億円を投資して、年利4%(4,000万円)が不労所得として入ります。
- 所得の多くを再投資に回して残ったお金で生活ができます。
Aさんは一日の多くの時間を労働で過ごし、Bさんは自由な時間を過ごす事ができます。
このように大きな資本があれば労働をしないという選択肢を選ぶ事もできます。
しかし、自己の労働力以外に売るものを持たない人は生活するために資本家に労働力を提供し、生産手段をもつ資本家は雇用した労働者の費用を上回る価値を持つ商品を提供する事で利潤を得る経済構造となっています。
まとめ
資本主義はインカムゲインによる収入のみで生活をする事もできる環境ですが、多くの人はそこまでいくには多くの時間・知識・経験が必要になります。
※海外ではベーシックインカムの導入が検討されている国もあります。
そのため、資本も重要ですが、能力(知識や経験)による差は将来に渡り大きな影響をあたえます。
特に、海外では教育の格差によって貧富の差が日本よりも拡大しています。
日本では国が教育を受ける環境を整備して貧困層でも一定レベルの教育を受ける事ができる人が多いため貧富の差が開きにくくなっていますが、海外では読み書きができない人も多い(7億人以上とされています)ため、日本よりも貧富の差が大きくなってしまうため貧富の差を覆す事は日本より難しいです。
つまり、日本の格差がすくないのは私たちの先祖が教育環境の整備を行ってくれた成果です。
特に「1万円札」にも描かれている福沢諭吉は「学問のすゝめ」で
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と言えり。
されば天より人を生ずるには、万人は万人みな同じ位にして、生まれながら貴賤きせん上下の差別なく、万物の霊たる身と心との働きをもって天地の間にあるよろずの物を資とり、もって衣食住の用を達し、自由自在、互いに人の妨げをなさずしておのおの安楽にこの世を渡らしめ給うの趣意なり。
されども今、広くこの人間世界を見渡すに、かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しきもあり、富めるもあり、貴人もあり、下人もありて、その有様雲と泥どろとの相違あるに似たるはなんぞや。
その次第はなはだ明らかなり。
『実語教(實語教)』に、「人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」とあり。
されば賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりてできるものなり。以下略
※実語教(實語教)は寺子屋などの教科書として使用され,生きるための知恵・学問・道徳などの教えを説き、明治以降近代日本の初等教育においてもこの内容の多くが倫理規範として採用されて後世に影響を与えたものです。
学問のすすめの冒頭一説の「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」は有名で「みんな平等」と言われることが多いですが少し語弊があります。
実際の内容を簡単にまとめると「みんな平等なのに貧富の差が生まれるのは勉強したかどうかだ」という内容になっています。
つまり「学問のすゝめ」はその名の通り勉強を促進する本で、貧困から抜け出すためには勉強した方が良いと教えてくれる本です。
資本主義では金融知識が生活に与える影響が大きいため、貧困で困らないようにある程度の勉強はしていないと生活に困窮してしまいます。
これは実語教(實語教)でも語られており
-前略-
玉磨かざれば光なし
光なき石を瓦となす
人学ばざれば智なし
智なきを愚人となす
倉の内の財は朽ちることあり
身の内の才は朽ちることなし
千両の金を積むと雖も
一日の学には如かず
-中略-
富むといへども貧しきを忘れることなかれ
貴しといへども賤しきを忘れることんかあれ
或いは始は富みて終わりは貧しく
或いは先に貴くして後に賤し
-後略-
このように、学び続ける事の重要性は広く後世に伝わるように語り継がれてきました。