親和欲求(親和動機)とは
概要
親和欲求は他者と「友好的になりたい」と思う心理です。
人は基本的に孤独に対して強いストレスを受けてしまいます。
反対に、誰かと一緒にいる事で安心感を感じる人は多いため他者と「友好的になりたい」「仲間に入れてほしい」という気持ちを持ちやすい傾向の人が大多数です。
※特に仲間外れにされる事に対しては強い不安感を感じる人は多いです。
自然界で生活していた頃の人類は集団で生活する事で外敵から身を護っていたため「群れている」状態を好む遺伝子の生存率が高く、孤立してしまうと生存率が大きく低下してしまう傾向がとても強かったため孤独を好む遺伝子は淘汰されてきたたました。
その頃の名残が未だに残っているため本能的に集団に属する傾向が現れやすいです。
特に男性よりも女性の方が集団で生活する事が多かった(狩猟や農業などは子育てや家事よりも比較的コミュニケーションが少ない傾向があります。)ため女性の方が集団意識が強いと考えられています。
女性の多くは群れる事が目的の集団行動(コミュニケーションをすることが目的の集まり)が得意ですが男性はこのような事が比較的苦手と考えられています。
その反面、男性の多くは目的実行のためのチームプレー(目標のために必要なコミュニケーション)は得意ですが女性はこのような事が比較的苦手だと考えられています。
※最近の若者は多忙なようで目的がないのに集まる人は男女ともに減少しているようです。
また親和要求は常に一定ではなく状況に応じて強くなったり弱くなったりと変動します。
この心理を恋愛に応用したのが俗に言う「つり橋効果」になります。
親和欲求が強くなる状況
- 一人でいる時間が長い状況
- 不安や恐怖など精神的に心細い状況
- 失敗や困難な状況で精神的に疲弊しいる状況
- 聴覚刺激を受けた時(特に異性の声だと影響は大きいようです)
基本的に孤独な時間が長かったり、精神的に疲れて心細い状況の時は親和欲求が強くなり誰かに側にいて欲しいと感じる傾向があります。
また「誰かの声を聴くと安心する」と感じる人も多いと思いますが、これにも親和欲求が関係しています。
親和欲求の強い人の特徴
- 一人でいる事が嫌いです。
- 一人でいる時間が長いです。
- 他者から好かれたいです。
- 交友関係を積極的に作ろうとします。
- 人に騙されやすいです。
基本的に孤独な人は親和欲求が強くなってしまう傾向があります。
※IQ(アイキュー)が高すぎるギフテッドやEQ(イーキュー)が高すぎるタレンテッドは周囲と差がありすぎて浮きこぼれ(吹きこぼれ)てしまう人の中には、周囲と合わせる事に強いストレスを抱えてしまう人もいます。
アニメなどで出てくる「ヤンデレ」のようなタイプの人は「好きな人と一緒にいたい」という気持ちが極端に尖った人である可能性が高く、過去の家庭環境や成長過程に問題(親から愛されなかった・信用していた人から裏切られたなど)があった可能性が高いです。
具体例
職場などの集団生活では親和欲求が強すぎる管理者は秩序を乱す恐れが強いため危険視されやすいです。
管理者は基本的には「人から嫌がられる事」もするのが前提の役職のため「他者から好かれたい」という意思が強すぎてしまう場合は決められた規則(暗黙のルールや社会的な倫理・道徳に反する事など)を捻じ曲げても自らが好かれようと行動する事があります。
つまり「無理が通れば道理引っ込む」といわれるように不正が常態化して組織内の規律や秩序が乱れてしまうようになるのは時間の問題です。
これは組織の寿命を短くしてしまう重大な問題で、統率の取れない組織は組織としての役割を果たせなくなってしまいます。
特に組織が大規模化するとそれに比例して組織も複雑化していくため不自然な言動は組織を徐々に蝕んでいく一方で集団に属しているとその少しずつ変わっていく変化に慣れてしまうため、組織を外から見ている人や後から冷静になって考えると「おかしい」と思うような状態でも内部にいる人には問題意識がないケースもあります。
※労基法(労働基準法)を護らないような組織に入社した人も最初は「おかしい」と感じますがやがてそれに慣れてしまう傾向があるためブラック企業も撲滅されないようです。
「組織の大きさはトップの器に比例する」などと言われますが、年功序列意識が未だに強い日本では部下に責任を押し付けるタイプの管理職はどの組織でも多いです。
本来ならば責任を取る立場である「上司の責任」が反故にされている組織の根本的な問題は「責任感のない上司」という存在が改善されないまま役職についている事です。
※パワハラ・セクハラなどのその場にいれば簡単に確認できるようなハラスメント行為が黙認されている組織は指揮系統のいずれかで問題が発生している可能性が高いです。
本来ならばより権限のある人物の裁量によって降格や再教育が必要になりますがそれを怠っている組織の場合は優秀な部下は少子高齢化の影響によって人手不足となった現代では「転職」という道を選ぶ傾向が強いようです。
※優秀な人材ほど転職は簡単にできるため対策をしない組織の人材の質はどんどん低下していく傾向があります。特にサビ残(サービス残業)や長時間残業(法定労働時間の超過)などが常態化している組織は人材を募集しても確保できない状態になっている可能性もあり危険です。
まとめ
親和欲求は誰にでもある気持ちですし、基本的に人は一人だけでは生きていく事は難しいため重要な欲求でもあります。
※自然界になにも持たずに一人だけ置き去りにされて1週間生活できる人はほぼ皆無と言えるほど一人で生きていく事は困難です。
多くの人(ほぼ全人類だと思います)は社会という集団の一員となって生活を送るため、誰かとコミュニケーションをとって周囲の意見と折り合いをつけて協調性をもった生活を送っています。
そのため、スーパーコネクターのように多くの人と強いコネクションがある人を見て羨ましく思う人も多いと思いますが、スーパーコネクターはとても少ないため「友達は友達が多そう」と思っても、実際にはフレンドシップパラドックス(自分は友達が少ないと錯覚するパラドックス)による誤認が大半をしめます。
また、親和欲求が強くなり(社会的に孤立したり、グループから仲間外れにされたり)すぎると「だれでもいいから仲良くしてほしい」という気持ちになります。
※承認欲求も拍車をかけていると思います。
特に、現在はインターネットの普及でSNS(ソーシャルネットワークサービス)などの簡単にコミュニケーションが取れるツールが増えた事で親和欲求を満たすために携帯電話を長時間使用するスマホ依存症は社会的にも問題となり、歩きスマホやながら運転の危険性が世間でも問題視されています。
※寝る直前まで携帯電話を使って誰かと連絡を取っていると気になって睡眠に悪影響を及ぼしますし、スマフォの画面から発せられるブルーライトも安眠の妨げとなります。
また、SNSで自分をよく見せようと危険な行為を行う人も多くなりましたし、インターネットで知り合った人と実際に会って(オフ会など)犯罪に巻き込まれるケースも増えてきました。
このように悪い人が悪意を持って利用する危険性があるため、見ず知らずの人と会う時は注意が必要です。