空売り(信用売り/ハタ売り)は株価が下落した際に利益がでる投資方法です。
通常の株や為替の取引の場合「安い時に買って高いときに売る」事で利益がでます。
しかし、空売りの場合は「高い時に売って安いときに買う」事で利益がでるため通常の売買とは異なった特殊な投資方法です。
この違いを順序が逆になるだけだと簡単に考える人も多いと思いますが、投資は基本的に価格が変動する事で損益が発生するためこの順序の違いは大切です。
※現物購入なのか空売り(持っていないものを売っている)のかは違いがいくつかあります。
- 現物購入
- 株価は上昇すると利益・為替は円安になると利益が発生します。
- 基本的に投資額以上の損失になる事がありません。
- 空売り
- 株価は下落すると利益・為替は円高になると利益が発生します。
- 最悪の場合は投資額以上の損失が発生して借金をしてしまうリスクがあります。
株式投資の場合は基本的に通常の取引経験をしてからでないと空売りができるようにならないと思いますが、FX(外国為替証拠金取引)の場合は空売りを最初からできる事が多いと思います。
※空売りは信用取引に分類される手法なので審査が通らない事もあるようです。
特にレバレッジを使った取引で損失が発生すると大きな負債を抱えてしまう事もある(信用売りだけではなく信用買いもリスクが高いです)ので信用取引をする際には十分な注意が必要です。
空売りの詳細
空売りの流れは証券会社から株や通貨を借りて売却した後、同じ株や通貨を買って証券会社に返すという手順になっています。
※現物を返さなくてはいけないのに手持ちがない状態で売却している事から、空(無い事を意味する)売りと言われています。
通常の取引と同様に価格差で損益が発生する仕組みですが、通常の取引では株価が上昇したり円安になると利益が発生しますが、空売りの場合は株価が下落した時・円高に向かった時に利益が発生します。
しかし、株価が上昇してしまう・円安に向かってしまうと損失が発生してしまうので注意が必要です。
また、通常の取引では株価が下落して価値が無くなれば(0円)それより下落する事はありません。
※信用売りが多いとマイナスになる事もありますが、マイナスは一時的で0円(価格が付くこともあります)に向かって上昇します。
しかし、株を空売りしている場合は株価の上昇に比例して損失が増加するため、損失の上限がありません。
更に、空売りは特別な取引であるため証券会社に株を借りている間は何かしらの形で手数料などの費用を取られるのが一般的です。
そのため、空売りの損失は青天(青空天上の略=上限が無い)だと言われています。
このようなリスクのある取引ですが上手に使う事ができればその利益は大きくなります。
株式投資の場合、空売り(信用取引)をするためには証券会社で通常の現物取引で使用している口座(証券総合口座)とは別に、信用取引口座(専用の口座)の開設が必要になります。
しかし、信用取引口座の開設には審査が必要になるため、通常の口座を開設していても必ずできるとは限りません。
これは信用買いの取引をする時も同様で、審査に通らなければ取引はできません。
空売りの具体例
空売りは所有していない株を売買して利益を得る方法です。
そのため、株を借りて売った後に、株を買って返す必要があります。
基本的な流れとしては
- 証券会社から株を借りる
- 株を売却する
- 株価が下落した後で株を買い戻す
- 証券会社に株を返す
この工程で大切なのは株が下落した際に買い戻す事です。
通常の取引でも空売りの取引でも基本的に株価の差で損益が発生します。
そのため、空売りでは株価が下落するほど大きな利益が生まれます。
しかし、株価の下落を狙った投資家が増え過ぎると証券会社で貸せる株が無くなってしまう事があります。
そのような場合は機関投資家などから株を借りて空売りをするため、逆日歩(証券会社が機関投資家などから株を借りる際の手数料を空売りをする投資家に請求する)として追加の費用が掛かる事もあります。
このように証券会社が貸せないほど売りが増えた状態では需給バランスが崩れた影響が大きくなり、市場の混乱を招きかねないと警戒される場合は空売りが制限されてしまう事もあります。
また、下落すると思って空売りをした後に株価が上昇してしまうと損失を被ってしまうので注意が必要です。
※信用取引の際には、取引手数料の他に金利(借りた株の利息)や貸株料(株を借りるための費用)などが必要になる事もあります。
応用
空売りは通常の取引よりも多くの費用が掛かる傾向がありますが、上手に使う事でより多くの利益を得る事ができたり、リスクを抑える事ができるなどのメリットがあります。
例えば
つなぎ売り(クロス取引)という方法が一般的に知られています。
保有株(現物買い分)と空売り(信用売り分)を同じ銘柄・同じ保有数にする事で株価の変動が相殺され、株価の上昇や下落の影響を無くす事ができます。
※手数料はかかってしまいます。
そのため、この方法を用いて権利付き最終日から権利落ち日まで買いと売りの両方を維持しておくことで株主優待を得る事ができます。
※配当金をもらう事はできますが配当落調整金(はいとうおちちょうせいきん)などの費用を支払うため実質的に配当金をもらう事ができません。
ここまで加味してもクロス取引はお得だと思う人が多いと思いますが、証券会社に支払う費用が株主優待よりも多くなる事もあるため注意が必要です。
また、手放したくない保有株の下落が見込まれる時は、空売りをする事で損失を回避する事ができます。
まとめ
空売りは便利な取引方法ですが、その反面扱いが難しいです。
その代表ともいえるのが往復ビンタ(現物買いで損失がたため、更に下がる事を期待し空売りにポジションを変更したら、そちらでも損失がでてしまうため、買いでも売りでも損失が発生してしまう状態)で、判断を間違うと大きな損失を被ってしまいます。
そのため、基本的に現物取引を主軸にしつつ、空売りを行ってリスクを軽減する事が一般的な方法だと考えられています。
保有資産の下落が見込まれる場合に空売りを入れて下落分を相殺する手法は有効的な方法だと考えられる事が多いです。
つまり、空売りは短期的な応急処置として使う事が多いです。
また、空売りだけではなく損切(ロスカット/スロップロス)なども視野にいれたリスク管理を行い、堅実なアセットマネジメント(資産管理・運用)を行う事が重要です。
備考
空売りは信用売りやハタ売りとも呼ばれます。