無知のベールは自身や他者の置かれている立場や状況についての知識が無い状態で、無知のベールを纏った状態ならば合理的な判断が期待できると考えられています。
私たちは日々多くの情報を知る機会があり自分の立場からの視点が強くなる傾向があります。
しかし、個の利益のみを追求していは全体の利益とならない事が多いです。
そして、全体の利益を考える際に、全ての状況を考慮しての最適解を導く事は困難です。
そのため、考慮すべき事柄と考慮しない事柄を検討して取捨選択をする必要があります。
そして、この取捨選択の際に自分の置かれている立場についての情報が反映されてしまうと自身の利益を前提に物事を判断する傾向が強くなってしまい、平等や公正といった要素が損なわれてしまうため、知らないという事が重要な要素となります。
無知のベールの具体例
無知のベールを考える際には、自身が今の立場ではなく、それぞれの立場に立っつて考える事が重要です。
つまり、自分の立場を知らない状態として考える事が大切です。
例えば日本で取り入れられている累進課税は立場に応じて税率が変わるため、それぞれの立場に応じて意見が変わると思います。
例えば
収入が200万円の人は約5%の所得税を納める事になります。
200万円×10%-97,500円=102,500円
102,500円÷200万円=5.125%
収入が1,000万円の人は訳18%の所得税を納める事になります。
1,000万円×33%-1,536,000円=1,764,000
1,764,000÷1,000万円=17.64%
収入が5,000万円の人は約35%の所得税を納める事になります。
5,000万円×45%-4,796,000円=17,704,000円
17,704,000÷5,000万円=35.408%
課税される所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
---|---|---|
~195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超~330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超~395万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超~900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超~1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40% | 2,796000円 |
4,000万円超~ | 45% | 4,796,000円 |
このように所得が上がれば税率も上がっていくのが累進課税で、この税率に対してそれぞれの立場に属している人は意見があると思います。
収入が200万円の人は月々の収入が約17万円に対して1万円の税金がかかると生活は決して楽ではないため、所得が多い人に多く納めて欲しいと考えているとします。
収入が5,000万円の人は生活に困る事はありませんが、努力して収入を増やしたのに税率が上がるのには不満を抱いているとします。
そこで収入が多い人が税額を決める権利を持っている場合、収入が少ない人の同じ額の税額や税率に統一しようとすると、収入が少ない人は収入に対しての税額の負担が多くなってしまい、生活を行う事が困難になってしまいます。
このような事を避けるために、立場(現在の自分の収入)を知らないという前提で税率を決めることで、自分がもしもその立場だった場合を論理的思考(ロジカルシンキング)を用いて考慮するようになるため、どこかの立場の人が大きく有益になったり、大きく不利益になったりする事が無いようにする事が重要です。
まとめ
公の制度を決める際には恵まれない人の立場からの視点に立って考える事は重要で、多くの人が幸せに暮らせるような目標としてSDGs(エスディージーズ)が国際的な目標となっています。
日本は恵まれた国で貧困(絶対的貧困と相対的貧困)だと考えられる人の多くは相対的貧困に分類され、絶対的貧困に該当するような人は少数しかいません。
しかし、その恵まれない人の中には機能不全家族に生まれた事で、自身の力だけでは環境を変える事が難しい人もいます。
このような恵まれない人がいるため、日本人は勤勉に働いていて犯罪も少ない平和な国であるにもかかわらず、貧乏な人が多いという認識を持っている人もいます。
しかし、相対的貧困は貧富の差によって発生するため、資本主義が続く限りなくなる事はありません。
海外ではノブレス・オブリージュの考えが浸透しているため、恵まれた人が貧しい人へ富を分け与える文化があります。
「不平等が許されるのは恵まれない者に対して、より多くの利益が訪れるようになる時だけだ」ともいわれるように、貧しい人がより貧しくなるのではなく、貧しさから抜け出す手助けをする事が恵まれた人の義務であるという認識です。
備考
無知のヴェールは「正義論」で有名なジョン・ローンズが正義について考える際に触れています。
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