愛着障害(アタッチメント障害)とは
概要
愛着障害は幼少期に家族から十分な愛情を受ける事ができずに育った影響で、対人関係で友好的な関係を形成する際に問題が生じる状態です。
機能不全家族のような家族の役割が正常に機能していない家庭で成長すると、愛情が満たされずに育った影響からコミュニケーション経験に乏しかったり、他者と正しい距離感を持った関係の構築が出来ずに苦労する傾向があります。
医学的に愛着障害と確定認定を受ける大人は稀ですが、自らが愛着障害ではないかと悩む人は多く「誰に対しても馴れ馴れしい」「誰に対しても信用していない」などの偏った距離感になりやすいです。
一般的に愛着障害で一番大きな影響を与える要因は3才前後までの家庭環境にあると考えられていて、幼少期に親から受ける影響がとても大きいと考えられています。
※日本の家庭環境の場合は父親よりも母親と一緒に過ごす傾向が強いため、母親の影響は大きいと考えられています。
幼少期のこの時期に承認欲求が十分に満たされない事で様々な精神的不安の原因となりやすく、他者とのコミュニケーションがうまくいかず、対人関係で問題が起きやすかったり、自身を抑制しすぎて精神的に疲弊してしまう方が多いです。
一緒にいる時間が長くなりやすいため影響が大きくなりやすい事が原因であるとも考えられていますし、親からの遺伝的な影響も影響すると考えられています。
また、成長過程で児童虐待(身体的虐待・精神的虐待・ネグレクト・性的虐待など)の被害者である人も多いですし、虐待とは言えないまでも精神的に大きなストレスを受けて育った人もます。
両親の仲が悪くて家庭内暴力(DV/ドメスティック・バイオレンス)が起きているような家庭では、実際に被害を受けたことがなくても通常の人間関係を構築するために必要な「当たり前」の基準が世間とずれてしまうため、良好な人間関係を形成する事に苦労する人もいます。
愛着障害の人の特徴
愛着障害は父母のような教育者と子供の関係で十分な愛情を感じられなかったり、離別によって愛情を受けることなく育つ事が原因である事が多いです。
特に乳幼児の時期に信頼関係が構築されない場合(お腹が減って泣いているのに無視されたり、オムツが汚れているのに放置されるなどの積み重ねの影響も大きいようです)に、その後の信頼関係にも大きな影響がでるようです。
そのため、日常的な声かけなどのスキンシップが愛情形成の第一歩になっているため、生後間もない期間は特に土台を形成する大事な時期です。
しかし、この期間に怒号や罵詈雑言が飛び交うような家庭であったり、両親から放任されて依存度が全くない状態になってしまう場合は将来に大きな悪影響を与えてしまいます。
このような環境で育った子供には特徴的な傾向がみられます。
- 能力が高く、物事を論理的に考えられる
- 他者へ協力を求めるのが苦手
- 自立している
- 周囲へ気を遣う事が多い
- コミュニケーションが苦手
- 刺激に対しての反応が薄い
- 気分の浮き沈みがある
- 体が弱い
- 自己評価が低い
このように、通常は親という頼れる存在に庇護されて育った人とは異なり、人に頼ることなく自分の力で生きようとする傾向が強いようです。
※自然界では親の元で過ごす環境はどこよりも安全地帯となりますが、親元で辛い・悲しい・苦しいなどのストレスが過剰である場合は成長にも悪影響がある考えられています。
また、自尊心を挫かれて育っているため、自己評価が低くなったり、過度なストレスによって身体的にも悪影響を受けてしまう人も多いです。
注意事項
愛着障害の特徴はアダルトチルドレンに成長する条件に近いため、身体的な成長よりも精神的に大人びて育ちやすい傾向があります。
愛着障害の傾向が過剰にでると生活に支障きたす事もあります。
また、愛着障害を改善できない事で他の精神疾患を発症する事もあるため、セルフネグレクトや自傷行為、心身喪失など多くの症状を混在させる可能性があり注意が必要です。
反対に、他の精神的要因から愛着障害となる事もあります。
対応策
基本的に愛着障害は「十分な愛情を受ける事がなく育ってしまった」という要因が強いため、人とかかわる楽しさや喜びを経験して、コミュニケーションに対してポジティブなイメージを持つことが大切です。
しかし、いきなり深い交友関係を構築する事はできないため、徐々に環境を整備していく事が大切です。
具体的には
- 居場所を作る事が大切で、基本的には「家庭、職場、交友関係」のように少なくても3か所に居場所をつくるのが良いと考えられています。
- 自己評価が低い傾向が強いため、自分の能力を過小評価しやすいので正当な評価を受けられる環境に身を置く事が望ましいです。
- 困った時に頼れる人間関係を構築できると精神的に安定します。
- 「全員に好かれる事ができる人はいない」と理解する事が大切です。
- 人間関係で疲弊したら距離を取って休息する事も大切です。
- 苦手な所を意識するよりも得意な所を意識する事が大切です。
このように、多くの人が行った方が良い事をコツコツと目指していき「ありのままの自分」を晒せる環境をつくれる事が理想的です。
まとめ
愛着障害は成長の過程で十分な愛情を受ける機会が少なかったという前提があるため、何事も自分で行えるように生きなくてはいけない環境で育っている事が多い事から自立している傾向が強いです。
また、感情をないがしろにされて育っている傾向が強いため、感情を表現する事が苦手な反面論理的思考(ロジカルシンキング)が得意な人が多いです。
そのため、能力のポテンシャルが高い傾向が付く一人の方が効率が良い事が多い反面、他者に協力を求める事やコミュニケーションを取ることが苦手です。
また、なんでもできるタイプが多く「なんでそんな事もできないのだろう?」と思う事も多いようで他人に「足を引っ張られる事が多い」という感情を抱いている人も多いです。
そのため、相談や協力する事も苦手な人が多く、基本的にはなんでも一人で解決してしまう一方で、本当に困って解決できないような状態の時は一人で抱え込んでしまう人が多いようです。
愛着障害の人が誰にも相談できずに深く考え込んでしまうような時は医療機関へ行き相談やサポートを受ける事を検討してみるのもいいと思います。
備考
愛着障害はイギリスの精神科医ボウルビィが提唱しました。