優越の錯覚について
概要
優越の錯覚は「自分は優れている」と実力以上の過大評価をしてしまう心理です。
基本的に人は「自分の能力は平均以上」であると思っています。
そのため、他者と比べる時に同程度の能力をもっている人よりも自分の方が優れていると錯覚する傾向があり、知識・技術・身体能力・性格などのあらゆる面でこの傾向が出やすいです。
これは人間の生存本能によるもので、他者よりも優れていると考えることで精神的な安定材料になりストレスを抑える効果があるためです。
しかし、その中でも特に優越の錯覚の影響が強い人はナルシスト(自己愛性パーソナリティ障害)の傾向があり、このような人は自制心が乏しく行動や認知機能を抑制する働きが弱い事が研究でも明かされています。
優越の錯覚が強い人の特徴
基本的には多くの人が「他人よりも自分の方が優れている」と錯覚していますし、心理学的にも多少の過大評価は健康的だと言えます。
このように自分の能力を過大評価するのは「他者よりも劣っている」という自覚をもつ事で劣等感を抱いてしまい大きなストレスがかかるため、ストレスを軽減するための自己防衛能力としての側面もあります。
そのため、基本的には自分の長所を過大評価し短所を過小評価する傾向が強いため、多くの人は短所から目を背けていると判断できます。
しかし、冷静な状況判断ができる人は優越の錯覚の影響をほとんど受けずに現状を正しく分析することができます。
※冷静に状況判断ができる人は基本的にポテシャルが高いので錯覚ではなく本当に優秀な人が多いため、他人と比べて劣等感を持つことが少ない事も影響しているかもしれません。
反対に、状況を正しく分析できない人ほど自分の心を護る必要があるため、優越の錯覚を起こしやすくなる傾向があります。
その中でも特に憂鬱の錯覚の影響が強く出るのがナルシストで、他人に対して「バカにする」「批判する」「見下す」などの言動が一般的な人よりも多いです。
また、見下している他者よりも自分がやればうまくできるという心理が働くため、挑戦的な精神状態になりやすい傾向があるため、無謀なチャレンジをして他者から搾取されてしまう事もめずらしくありません。
そのため、本来なら自分の力ではコントロールできないような事でも、自分の力でどうにかできるという錯覚(コントロールバイアス(制御幻想))に陥る人も珍しくはありません。
しかし、このような身の丈に合わない事をする人が社会の繁栄を下支えしているため、一概に悪いとも言い切れません。
このような人がいない優秀な人ばかりの状態では経済成長は鈍化してうまく回らなくなってしまいます。
優越の錯覚を起こしにくい人の特徴
優越の錯覚の影響を受けにくい人は物事を客観的に捉えられる人で、自身の行動や認知機能を抑制する能力が高く、物事を冷静で論理的に判断する能力が高い傾向があります。
そのため、実際の能力が高い傾向が強いため劣等感を受けにくいので自己防衛する必要性も少ないです。
また、仮に能力が劣っているという事に気づいても、そこで成長するチャンスを逃さずに能力を向上させていくため優秀な人材へと成長していきます。
しかし、優越感は心の安定材料ともなるので優越の錯覚の影響を受けない事も一概にいいとは言いきれません。
なにかの影響で能力的に劣る状況になった場合にうつ状態になりやすい傾向があります。
※具体的にはスポーツを一心不乱に取り組んできたのに交通事故によって再起不能になってしまい、今まで積み上げてきたものを失ってしまうなどです。
うつ病改善のための研究
優越の錯覚は鬱病(うつびょう)の患者の治療法に取り入れようと研究が進んでいます。
抑うつ状態の際は能力を過小評価する傾向が強くなります。
このため、一般的な人は軽度の抑うつ状態に陥る事でバイアスのかからない現実的な判断を行う事ができるようになります。
そのため、抑うつの現実主義と呼ばれることもあります。
しかし、鬱状態が悪化すると現実以上に悲観的になり実際以上に過小評価してしまいます。
この状態の打開策として優越の錯覚を意図的に操作しようという研究が進められています。
まとめ
古代ギリシャの格言で 「汝自身を知れ」とあるように、自身のことを正確に知ることはとても難しいです。
そのため「能力が低い人が自身を過大評価」し「能力が高い人が自身を等身大で受け入れる」事でお互いの認識している能力が実際と逆転する現象も起こります。
これは優越の錯覚が引き起こす認知バイアスの影響によるとされ、ダニング=クルーガー効果とよばれています。
多くの会社ではこの歪みが悪影響を及ぼし、優秀で引く手数多の人材が離れて(転職や退職など)いってしまう反面、能力が低く次の仕事を見つけるのに苦労するような人材が留まり続ける(転職できない、しても給料が下がる人など)事で生産性が低下していきます。
優秀な人材が去っていく背景として、能力に差がありすぎる事によって能力の差を認識できなくない能力の低い人に対して優秀な人が一方的合わせなくてはいけないために苦労する事もめずらしくありませんし、年下の人が優秀だと認められない年配の人が足を引っ張る事も多いと思います。
そのため、能力が低く非協力的な態度の古株がいる会社は正しい評価を受ける事ができない可能性が高いので注意が必要です。