生理的早産 | あむぶろ 学校では教えてくれない大切なこと

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生理的早産

投稿日:2021年10月22日 更新日:

生理的早産とは動物学的観点から人を見た場合、他の哺乳類よりも発育状態が遅い状態で生まれていると考えられています。

多くの哺乳類は誕生してから短期間に成熟した大人に近い行動ができるようになります。

例えば

自然界にいる陸上生物で歩行するまでに数年かかる生物はいません。
(特に牛や馬などの草食動物は生後間もなく自力で歩行ができ、1日もせずに走れるまでになります。)

多くの生物は母体の中で進化の過程を経て大人に近い状態で生まれますが、人は母体で30億年分の進化を終えることなく生まれるため、生まれてから残りの進化の道筋(高度な文化社会へ適応するための進化をします)をたどる事が原因だと考えられています。

人の子供は周囲から助けてもらえる前提で生まれているため、発声程度しかできない無力な状態で生まれるので周囲の援助がなければ一日生きる事もできないかもしれません。

生理的早産だと考えられている理由

人の子供が生理的早産だと考えられているのにはいくつかの仮説があります。
その全てが原因の可能性もありますし、全てが原因ではない可能性もあります。

食物連鎖

基本的には食物連鎖で上位に君臨する生物ほど子供を未熟な状態で生む傾向があります。

そのため、捕食されやすい草食動物は生後間もなく自力で移動する事ができるようになる傾向があります。
先ほどの牛や馬などの草書動物は生まれて数時間もしないうちに走り回る事ができます。

しかし、人の子供が歩くには一年以上かかってしまいますし、走るにはもっとかかってしまいます。
※猫は歩くのに3週間程度の時間が必要(生理的早産?)です。
また、他にもネズミやキツツキなども未熟な状態で生まれます。

つまり、人が食物連鎖の頂点に君臨していて安全な環境で子供を育てる事ができるため、未熟な状態で子供が生まれたほうがメリットが多い事が要因だと考えられています。

産道

人の脳は他の近縁の霊長類と比べて成体の脳の大きさは約3倍ですが、当然生まれるためには産道を通らなくてはいけません。

人は完全に二足歩行をしているため、人体の構造上他の四足歩行する生き物よりも産道が狭くなってしまいました。

そのため、成体になると他の生物よりも脳の割合が大きいのに産道が狭いという現象が起こってしまいました。

つまり、分に成長してからは産道を通る事ができないため、他の生物よりも脳が発育する前に産まなくてはならないので、胎児は未熟な状態でも母体から早くでなくてはいけなくなってしまいました。

脳の大きさ(成長度合い)を人以外の近縁である霊長類(チンパンジー)と比較すると

  • 人の子供の脳は生体(大人)の25%の大きさ
  • チンパンジーの子供の脳は生体(大人)の40%の大きさ

このように人の子供は他の生き物よりも脳が未熟な状態で産道を通る必要がありました。
※他の哺乳類の生まれる状態と比べると約11カ月~1年程度早く生まれている(脳の大きさから推定)と考えられています。

可能性を残す

人は自然環境よりも文明社会で生きる事を選んだ種であるため、社会への適応能力が無ければ生存する事が難しいです。

そのため、人の最大の特徴である優れた脳を最大限に活かす事が生存するためには重要な要素になるため、脳を優先的に成長させる事は重要な要因となってきました。

しかし、脳を成長させるためには身体が未熟な状態でも母体の外で多くの刺激を受けて成長する方が良い影響を受ける事ができるため、必要最低限の生命維持ができるようになった状態で母体から出て周囲に保護されながら多くの刺激(教育を受けて知識や経験をする事で刺激になりま)を受けて成長するようになりました。

つまり、生後間もない状態の子供は多くの刺激を求めていますし、今後の能力の根幹を決める大切な時期であるためより多くの刺激を受ける事で伸びしろが多くなります。

まとめ

この世界は厳しい生存競争を生き残るための環境に適応できたものが生き残り子孫を増やす事ができる適者生存の世界です。

自然界での適者生存は弱肉強食の要素が強いため、強いものが弱いものを捕食していくのが原則であるため、生まれた瞬間から常に命の危険がありいつ捕食者に狙われてしまうかわかりません。
※物理的な強さだけではなく、特殊な能力などによって生態系の上位にいる生物もいます。

そのため、自然界では大人になる事が難しいので一度の出産で複数の子供を生む傾向があります。(人の場合は男性の方が体が弱く死亡割合が多いため、若干男性の生まれる割合が高いです。)

基本的には食物連鎖の上位にいる生命体を捕食できる生物が少ないため、上位であるほど狙われるリスクは減少し、その結果少ない子孫でも多くが大人になる事ができるため一度の出産で生まれる子供の数も少なくなる傾向があります。
※特に食物連鎖の頂点にいる人間は多くが無事に大人になれる(人は集団で生活し弱者を保護しながら生活するスタイルの影響も大きいです)ため、一度に生まれる子供の数は1人である事が多いです。

そのため、人は他の生物よりも遥かに捕食者から狙われるリスクが少ないので、自然界の弱肉強食とは少し異なった環境であり、力が弱くても必ず淘汰されるわけではありません。
※自然界では食物連鎖の上位の生物が増えすぎるとその下の捕食される生物が少なくなるので、上位でも過度に増えすぎてしまう事はありませんが、人間は自ら食物を生産するようになったため自然界における食料の問題から解放されて人口が大幅に増加しました。

人間は生存戦略として優れた脳をもつように進化し、個々の長所を活用して生産性をあげていけるように文明社会を構成するように進歩してきました。

その結果、自然界では重要視されないような知識・経験・IQ(アイキュー)EQ(イーキュー)などが重要視される傾向が強くなりました。

人間の最大の武器である脳を発達させるためには、他の生物よりも早く母体から出て様々な刺激をより多く受ける事で、知識や経験に対して高い学習能力を身に着ける必要ありました。

そのため、人は自然界の多くの生物よりも未熟な状態で生まれる事で、文明社会に適応する能力を成長過程で得る事ができるように進化しました。

このことから「人は生まれながらにして人なのではなく後天的に人になる」と言われる事もあります。

つまり、人は遺伝的要因による能力の継承よりも後天的な能力開発に力をいれた生物です。
機能不全家族のような環境で育つと脳の発育に良くないストレスが多いため、脳の発達に悪影響がでる事も多いです。

多くの哺乳類は本能的に泳ぐことができますが、人間や近い種である類人猿(チンパンジー、ゴリラなど)は泳ぐことができません、これは遺伝的な能力の継承よりも後天的な能力に重点を置いている可能性が高いです。

それに対して、食物連鎖の下位の生物になるほど遺伝的に情報を伝達するため、先天的に能力の多くが決まっているのでそれぞれの役割も決まっていますが、人は、能力をどのレベルまで身に着ける事ができるかによって社会に与える影響に差がでるため役割が変化するとともに生活も変化します。

備考

スイスの生物学者でアドルフ・ポルトマンが提唱しました。

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