スリーパー効果(仮眠効果)とは
概要
スリーパー効果は情報の発信源がどこからなのか時間経過によってわかなくなってしまう現象です。
基本的に情報の信憑性を判断するためには「だれが」「いつ」「どのように」発信していたかという事実は重要で、時にはその情報の真偽を判断する材料となる事もある大切な付随内容です。
そして、多くの人は情報の内容についての信頼性を判断する際に、情報の発信源の信頼性に比例して信頼度を上げてしまいます。
そのため、見ず知らずの人が流している情報よりも、身内で流れている情報の方が信頼度が高いと判断します。
具体的には、親やきょうだいなどの関係が近い人から聞く情報と、SNS(ソーシャルネットワークサービス)で流れてきた情報が反対の意見である場合などは、身近な親やきょうだいの方が信頼度が高いと感じるはずです。
情報の質について
情報は基本的に「情報の内容」と「発信源の情報」では「情報の内容」の方が記憶に残りやすいという心理効果が働くと考えられているため、時間経過と共に「発信源の情報」が忘却されてうろ覚えになってしまうため「情報の内容」のみが記憶に残ります。
※発信源の情報が失われるまでの期間は一般的に1か月と言われています。
ここには重要な問題が隠れていて「情報の発信源」の信頼性が低い場合は「発信源の情報」が失われてしまうと「情報の内容」についたマイナスの要素がなくなり情報に対する信頼度が向上してしうという危険性があります。
反対に、「情報の発信源」の信頼性が高い場合、「発信源の情報」が失われてしまうと「情報の内容」についたプラスの要素がなくなり、情報に対する信頼性が低下します。
つまり、「確定情報としてゆるぎない事実」と「本来ならば真偽が怪しく信頼できない情報」のいずれも時間経過によって信頼度が同じになってしまいます。
スリーパー効果(仮眠効果)の具体例
基本的に情報はその発信源の信頼度の影響を受けるため、信頼度の異なる二人を比較します。
- Aさん
- 普段から真面目で嘘はおろか、冗談すら通じ合に親友のAさんへの信頼度を100%とします。
- 普段から真面目で嘘はおろか、冗談すら通じ合に親友のAさんへの信頼度を100%とします。
- Bさん
- 初めて会うBさんへの信頼度を0%とします。
ここで、同じ内容で嘘か本当かわからない情報X(信頼度を50%)をA・Bさんから聞く場合
- Aさんから情報を聞いた場合
- Aさんの信頼度が高いため、信憑性が怪しい情報でも信頼度が向上して75%まで上がります。
- Aさんの信頼度が高いため、信憑性が怪しい情報でも信頼度が向上して75%まで上がります。
- Bさんから情報を聞いた場合
- Bさんの信頼度が低いため、信憑性が怪しい情報はさらに信頼が低下して信頼度が25%に下がります。
このように、情報源の信頼度によって、信頼度が変化します。
しかし、1か月後には情報の発信源がだれなのかを忘れてしまいます。
そのため、情報Xの最終的な当初の嘘か本当かわからない信頼度50%に戻ってしまいます。
つまり、1か月期間をあける事で、始めた会う人の話も親友の人の話も情報の信頼度だけで判断してもらえるようになります。
この心理効果は様々なシーンで応用する事ができ、恋愛では「〇さんが△さんの事を好きなよう」という話を友人づてで聞くと事実無根でも当事者である△さんは「好かれている」「告白されるのでは」という意識をもってしまうため、無意識のうちに気にかける事が多くなると考えられます。
また、復縁をしたい時なども「□さんは別れた事を後悔している」のように協力的な友人を挟んでおくことでボタンの掛け違いのような原因の場合はよりを戻せる可能性が高くなると考えられます。
しかし、悪意を持っている人からの情報に踊らされてしまう可能性もあり、ある程度の間隔を空けて情報を繰り返し刷り込まれてしまうと、本来は信用できない人の話でも「同じ話を他の人もしていた」という認識ができてしまい、最悪の場合は詐欺などの被害にあってしまうので注意が必要です。
まとめ
情報の信頼性は発信者に対する信頼度に短期的には比例します。
※これはミルグラム効果でも実証されています。
そのため、学者や指導者のような権威がある人からの指示を受けると自身の判断が揺らぎ、過っていると思うような内容でもその指示に従ってしまいます。
また、ドクターフォックス効果(Dr.Fox effect)からもわかる通り「情報の信頼度は内容よりもその雰囲気が重要である」と考えられています。
そのため、話を聞いている時は正しいと思っても、後になって冷静に考えると過ちだったと気がつく事も多いです。
ビジネスではこれを活用して一定期間をあけて何度も宣伝する事で、情報の信頼性のみで勝負する事ができます。
しかし、ここで大切なのは、情報そのものを忘れてしまわないように印象に残る様に工夫する事です。
これがうまくできない場合は発信者の不審さだけが印象に残ってしまうため、詐欺などの悪徳商法に騙される人は当然少ないです。
そのため、情報の発信者は平凡で特徴がない方が情報を印象付けやすく、後に同じ情報を与えられた時に情報を疑う確率が下がります。
また、ウィンザー効果のように、無関係に思える第三者(本来ならばその情報を流すメリットがない人)からの情報は信頼度が高くなりやすい傾向があります。
具体的には
Aさんは実は資産家の子供で親リッチらしい。
このような情報が出ると噂は不思議と広がっていき、事実ではなくてもお金があると周囲の人からお金持ちであるという認識がうまれる事もあります。
そして、このような心理効果を販売促進活動に利用したステルスマーケティング(ステマ)という宣伝方法は近年問題となり、アフィリエイトなどの一見関係のなさそうな第三者がお金をもらって過剰な宣伝を行い、実際の商品とは異なった売買がされている事が明るみに出て規制が厳しくなるという事例もありました。
インターネットの普及に伴い、災害や事故の情報も瞬く間に広がるようになって便利な世の中になりましたが、その一方で悪意を持って誤った情報を流す不届き者も増加しています。
しかし、そのような事を繰り返ししているとブーメラン効果(ブーメラン現象/説得の逆説)のように、情報が紆余曲折して広まっていき収集のつかない事態になる事もあります。
デマを悪意を持って流した人はその後に様々なデメリットを受ける事が多いようで、最悪の場合は損害賠償金として多額の請求を受ける危険もあります。
また、これからの時代は善良な人は特に悪意ある情報に騙されない様に真偽を見極める能力が重要になると考えられ「気がついたら騙されていて犯罪の片棒を担がされていた」という事がないように注意を払う必要があります。
備考
スリーパー効果はアメリカの心理学者のカール・ホブランドが提唱しました。
情報源の信頼性が眠ってしまう事から、居眠り効果、仮眠効果などとも呼ばれています。