安全余裕率(経営安全率/損益分岐点比率)とは
概要
安全余裕率は経営が安定しているのかを判断するための指標の一つです。
基本的に会社の経営状態が健全であるのかを示す指標の一つとして使われ、売上高と損益分岐点の差である利益の割合を計算した数字です。
そのため、安全余裕率が高ければ損失への耐性が高くなり安定した経営に繋がりやすい傾向があります。
つまり、経営の安全性を示す指標の一つとして考える事もできます。
安全余裕率の計算式は
安全余裕率=(売上高-損益分岐点売上高)÷売上高
で示す事ができるため、売上高の割合が多ければ安全余裕率が向上します。
安全余裕率の目安
基本的に損益分岐点よりも多くの収益がなければ経営を継続する事はできません。
そのため、損益分岐点付近の収益しか取れずに収支が限りなくプラスマイナスゼロに近い状態の企業は危険な状態だと考えられています。
具体的には
安全余裕率 | 評価 |
20%超 | 安全(経営が安定しています。) |
20%~10%以上 | 安全(大きなトラブルが発生しなければ大丈夫) |
10%未満~0%以上 | 不安(赤字手前) |
0未満 | 危険(経営不振) |
これらは全体的な目安で、業種や売上額によって異なるためこの水準を満たしいていても安心はできませんし、安全な基準を満たしていないからと言って経営不振であると判断するには時期尚早です。
特に、安全余裕率が20%程でも一件当たりの売上額が大きい業種では一回のトラブルで安全余裕率がマイナスとなってしまう可能性もあります。
また、独自性などの特徴がないと安全余裕率を確保する事が難しいため、優れた技術を独占しているような会社の場合は安全余裕率が高い傾向があります。
その反面、経営方針として安全余裕率を抑え込んで技術開発や生産性の向上などを目的として積極的に投資をしている会社もあるため、この指標のみで会社の経営状態を判断する事は危険です。
具体例
企業Aでは「年間売上が1億円」「損益分岐点売上高が8,000万円」とします。
この会社では一件当たりの売上が2,500万円、損益分岐点売上高を2,000万円の案件が年に4件入り年間売上が1億円となっています。
一件当たりの安全余裕率は
(2,500万円-2,000万円)÷2,500円=500/2,500=1/5
安全余裕率は20%となります。
企業全体で見ると
(10,000万円-8,000万円÷10,000万円=2,000/10,000=1/5
安全余裕率も同じく20%となり、安定的な経営をしているように見えます。
しかし、この企業の案件は一件2,500万円です。
そのため一件でもトラブルが発生し代金をいただけない事になった場合、売上が75,000万円となってしまいます。
7,500万円-8,000万円÷7,500万円=-500/7,500=-1/15
約7%の赤字となってしまいます。
まとめ
安全余裕率の目安は企業によって異なり、経営内容や経営方針に応じて様々です。
そのため、全体的な目安の水準に達しているからといって安心することはできません。
特に親会社があるなど、取引先が極端に限られた企業の場合はその会社との契約が上手くいかなければ経営は一気に悪化して赤字に転落してしまいます。
そのような事態に備えるためには常に利益を追い求め、非常時に備えて資金を確保しておくことが求められます。
これは企業に限った事ではなく、一般生活でも生活防衛資金として一定期間生活できるだけの余裕を持つ事が推奨されています。
可処分所得を全て交際費や娯楽費として使ってしまうと病気やケガなどの際に家計が破綻してしまう可能性があります。
備考
安全分岐点と損益分岐点の合計は100%となります。
(安全余裕率+損益分岐点比率=100%)
そのため、どちらかが導き出せれば、もう片方も導き出せます。
しかし、100%とならない場合はどこか間違いが発生しています。