学習無力感とは
概要
学習無力感は「自分の力が無力である」という事を学習して行動を起こさなくなってしまう心理です。
抵抗する事ができない理不尽な事(天災などの自然災害による影響とは異なり、本来ならば努力で改善できる事でも他者の介入によって正しさが否定されてしまうような事など)が起こる場合、通常は逃れようと行動しますが、そのストレスの原因を避ける事ができないストレス過多な環境が長期間継続していると、理不尽は回避しようと抵抗しても結果が変わらない事を学習し「頑張っても無駄」「意味がない」と感じて無気力になり、その理不尽を受け入れ心身共に疲弊してしまいます。
強い学習無力感を植え付けられた後では、仮に原因となっている要因から離れる機会を与えられても、そのチャンスを活かせない心理状況になっているため重症化した状態からの改善は難しいです。
具体例
学習無力感は様々なシーンで目にする機会があります。
例えば
会社に勤めている人の多くは職場には上司がいると思います。
しかし、言動に一貫性がなく支離滅裂な指示をする責任感のない上司の場合、部下はその上司のいう事を聞かず「正しいと思ったことをする」ようになる傾向があります。
ここで、上司が部下を激しく注意したり、行動を強く非難して押さえつけて無理やり従わせようとするタイプであり、会社のトップもそれを容認してしまうような組織の場合、部下は会社に不利益が出る事が想定されるとしても「抵抗するだけ損」であると考えて上司の指示通りに行動する様になります。
その結果として会社は大きな損失を生む可能性がありますし、このような上司を放置しておくと会社は倒産してしまう事もあります。
他にも
親が約束を守らない家庭の場合、子供は親との約束に興味を持たなくなります。
そして、これが悪化してしまうと将来を見据えた考えをしなくなってしまう事もあります。
有名な実験としてマシュマロ実験があります。
この実験の対象者は5才以下の子供で「テーブルの上にあるお菓子に手を付けずに15分待つことができたらお菓子を倍あげる」というシンプルな実験です。
この実験は「我慢できるかどうか」の実験結果よりもその後の追跡調査が大切で、お菓子に手を付けずに待つことができた子供は十数年後も自制心が強く社会的に豊かな生活を持続している傾向がありました。
その一方で、待てずにお菓子を食べてしまった子供は成長しても自制心が乏しいという傾向があり、目先の利益を優先した生活をしている傾向が現れました。
つまり、先の事を考えられない子供は将来的に貧しい生活をする傾向があり、生活に余裕がない環境になる人も珍しくはありません。
特に問題視されているのは日常的に虐待の被害にあってしまうような家庭環境で育っている子供で、虐待の被害者が虐待を受け入れてしまう被虐待症候群(BPS)という状態になってしまう事もあり、その後の人生を大きく左右しています。
まとめ
自分の意思決定を妨害されずに自由に行動を行える状況の人は基本的に学習無力感を抱えてしまう事はありません。
その一方で、運悪く意思決定を否定され続けるような環境に陥ってしまう可能性は誰にでもあります。
自らの努力で変える事のできない理不尽な結果がもたらされる環境に長期間にわたって身を置く事は精神衛生上とても劣悪で、学習無力感をもってしまうと自尊心が徐々に欠如していき、自分に自信がなくなり服装などの身だしなみにも興味を示さなくなってしまいます。
このような状況が長期間続くと過去の行動と結果の経験から抵抗しない方が生産的という判断になり「なにも考えない」という選択をするようになります。
特に問題となるのは学習無力感によって「努力は無駄」という認識を幼少期に身に着けてしまいそまま成長してしまうと勉強を怠ってしまうため将来的に大きな影響がでてしまいます。
また、考える事をやめてしまうと成長する機会を失ってしまい現状維持に甘んじる傾向が強くなってしまうため、年齢を重ねるほど自分と他者を比べた時に能力が足りないという認識が強くなってしまう可能性が高くなるので注意が必要です。
備考
学習無力感は下記の様に呼ばれる事もあります。
- 学習性絶望感
- 獲得された無力感
- 学習性無気力