ベン・フランクリン効果(ベンジャミン・フランクリン効果)とは
概要
ベン・フランクリン効果は心の中で均衡を保とうとする心理です。
この効果を上手に使うと「誰かに助けてもらう事で好感度を上げる」という事ができます。
通常は迷惑をかけたら好感度が下がると思ってしまいますが、援助してもらえて好感度も上がるならば「一石二鳥」「渡りに船」のような至れり尽くせり状態です。
この心理をわかりやすく表現しているのは「手のかかる子ほど可愛い」と言われる現象です。
本来ならば手がかかるという事は多くの労力がかかってしまうため、手のかからない子の方が優秀で大切にされるはずだと思う人も多いと思います。
しかし、人の脳はここで「手をかける理由」を無意識で探してしまう傾向があります。
特に際立って嫌悪感を持つ大きな理由がない場合は「好き」「気に入っている」などの事実に左右されない感情面の理由をつける事で自分を納得させようとする傾向が強いです。
つまり、手のかかる子供に対して「そこまで手をかける必要はない」という考えと「手をかけている」という現実には矛盾がありますが、この矛盾によって起こるストレスは「好意がある」という矛盾しないための要因を見つける事で解決します。
そして、後付けの理由から「好意がある相手を助けるのは普通の事である」と結論づけます。
このように人の心は無意識に均等を保とうとする傾向があり、これは脳が持つ自己防衛本能の一種です。
つまり、この心理をうまく使う事ができれば上手にコミュニケーションが取れ、好感度も上昇してお手伝いもしてもらえるためメリットしかありません。
しかし、いくつかのポイントを押さえなければ上手に使う事ができずに「迷惑な人」「足手まとい」などの印象になってしまうため注意が必要です。
具体例
日本は豊かな国で心に余裕がある人が多いため、迷子になっても道を尋ねると多くの人は親切に教えてくれます。
このような小さな親切を身近な特定の人に何度も繰り返し行っていると、最初は好きではなかったはずなのに次第に好感度が上がっていきます。
人によっては最初は「めんどくさい」と思うかもしれませんが、次第にそういう人だと思うようになり、気がつくと支援する事に慣れている事も多いと思います。
この時、脳の中では「なぜ助ける必要があるのだろう?」という認識があるはずですが、脳は手助けした要因を「好感度がある人」だから助けたと矛盾がないようにつじつまを合わせます。
好感度があれば仲良くしたいと思う人も多いでしょうし、仲間をサポートするのは自然な流れです。
そのため、好感がない場合でも心の均衡を保つために好感度が上がっていきます。
助ける要因は他にもあるため必ずしもこうなるわけではありませんし、その人への好感度や親密度などとその時の状況などによって影響は異なります。
反対に、人によっては好感度が大きく下がって嫌われてしまう事もあるため注意が必要です。
良好な人間関係のために
ベン・フランクリン効果は恋愛などの対人関係や円滑なコミュニケーションのために用いる事ができます。
この効果は実際に本人(ベンジャミン・フランクリン)によって実証されています。
ベンジャミン・フランクリンはあまり仲のよくなかった人を味方につけるために「本を貸してほしい(親切にしてほしい)」と頼み事をしたのです。
その後は仲が良くなかった人の態度が一変して優しくなりました。
※政治活動で使った方法なので有名な出来事として語られています。
このような、無理なくできる簡単なお願いをする事で好感度をあげていきました。
多くの場合は無償で人を救う要因はポジティブな感情になることが多いため、手を差し伸べた人に好感を持ちやすいです。
ポイントなのは「簡単な事」を「お願い」する事です。
心理的負担を軽減するための作用ですので、難易度が上がりすぎると依頼自体が負担となる事もあるので注意が必要です。
具体的には、世界の数人しかできない事を「やれ」と命令するような態度では好感度はあがりません。
※十人十色と言われるため好感度があがる人もいるかもしれません。
ベン・フランクリン効果の問題点
この効果の問題点は「悪い事をした時」です。
代表的な例では、いじめがわかりやすいと思います。
「いじめはよくない」と多くの人は思っていますが、実際にいじめている人は「いじめは良くない」という考えと「実際にいじめている」という現実に矛盾が発生しないように「いじめる原因は被害者」にあると脳内で正当化します。
このような状況になるといじめは減少せず、最悪の場合は周りを巻き込んで増加していきます。
周囲にいる人もいじめを止められない原因を脳内で「いじめられる方にも問題はある」などの理由をつけ、いじめを止めない自分を正当化してしまうため、いじめが慢性化している状態からいじめを根絶するには大きく流れを変化させる必要があります。
まとめ
ベンフランクリン効果は心の均衡を保つために、もっともらしい理由を後からつけて知的不協和を避ける心理です。
矛盾している状態は脳にとっては大きなストレスとなるため、人の心は論理的・心理的に納得できない状態の心身への負担を軽減するための言い訳を無意識に探します。
※たとえ真実と異なっても無理に理由付けをして自らを納得させてしまいます。
社会では実際にこのような事が起こるのを多くの場面で目にする機会があると思います。
例えば
- できる子供よりもできない子供をかわいがる親
- 勉強が得意な生徒よりも勉強が苦手な生徒に対して親身になって教える先生
- 能力が高く仕事が早い部下よりもいつも失敗している部下と仲良くする上司
このように多くの組織や集団で目にする事がある現象です。
特に女性はできない人を見ると「母性本能」が刺激される人も多いと言われます。
このような心理効果があると知れば実践してみたいと思う人も多いと思います。
実践する際の注意点として気を付けなければいけないのは、支援してもらう側も「基本的な礼儀ができない」「不衛生」などの強すぎるマイナス要素がある場合は、ベンフランクリン効果が作用しにくいです。
そのため、世間で言われる「ヒモ」と言われるような人は身なりに気を付けて弱者を演じるているように描かれる事が多いです。
※様々な人がいるとは思います。
サービス業や接客業などのビジネスパーソンの場合は様々な営業戦略を持っていて、顧客に合わせたマネジメント方法を取り入れていると思います。
備考
ベン・フランクリン効果は、アメリカの政治家だったベンジャミン・フランクリンが政治活動で活用したことから、ベンジャミンフランクリン効果となり、略されて現在のベンフランクリン効果の名称で呼ばれています。
ベンジャミン・フランクリンは物理学者で政治家で、米合衆国大統領にはなりませんでしたが、米国の100ドル札に彼の顔が描かれています。