ジャム理論について
概要
ジャム理論は選択肢が多くなると選択肢の中から1つをチョイスする事をあきらめてしまう事を証明した実験です。
ジャム理論では「多数の選択肢」と「少数の選択肢」を提示した際の違いによって意志決定に与える影響を調べました。
直感的には「多くの選択肢の中から好きなものを選択する事ができれば満足度が向上」すると思いますし、ビジネスシーンでは「販売されている商品の品ぞろえが良い方が売り上げが促進される」と考えてしまう人も多いと思いますが、実際の実験では「ジャムの種類を少なく絞った方が売り上げが良い」という結果が得られました。
これは選択肢が多すぎると決定麻痺(決断することに疲れてしまう)を起こしてしまう事で「選択を行う」という行為がストレスになり購買意欲が減少してしまうためと考えられていて、このような現象の特性から「決定回避の法則」とも呼ばれています。
そのため、選択肢を限定して意思決定を行いやすくすると購買意欲を低下させずに商品購入までつながると言われています。
実験の内容
実験の条件
ジャム理論の検証実験をした論文では、ジャムの種類が多数の時と少数の時でジャムの販売成績を比較しました。
具体的にはスーパーにジャムを陳列して売れ行きを調査します。
- ジャムの種類を6種で販売
- ジャムの種類を24種類で販売
この二つの条件を比較検証しました。
実験結果
ジャムの種類が24種の場合
- 購入率 3%
- 試食をする人が多かったです。
- 試食後の売れ行きは思わしくありませんでした。
ジャムの種類が6種の場合
- 購入率 30%
- 試食をする人は少なかったです。
- 試食後の売れ行きは良かったです。
24種の場合は人は多く集まりますが、それが購入に繋がる確率は低くなってしまい6種の方が売上が良かったです。
これらの事から、人は選択肢が多いと悩んでしまいますし、悩みが多いと意思決定をする事がストレスとなるため購入を避けてしまう事が裏付けられました。
具体例
お出かけをした帰りに、飲食店で晩御飯を食べてから帰ろうと思う事がある人も多いと思います。
帰り道に何件か寄る事ができる飲食店が1店舗だけならば迷わずそこへ寄ると思います。
しかし、寄る事ができるお店が複数あると迷ってしまい、どこに寄ろうか迷いながらとりあえず家に向かっていると、1店舗過ぎ、2件過ぎと次第に選択肢が減っていきます。
選択肢が減っていく間に寄りたい店舗を選ぶことができれば良いですが、次第に考える事が億劫になってしまい、いつも寄っている最寄りのスーパーマーケットでお惣菜を購入して帰る事もあると思います。
このように選択肢が多いと選択を決定する事が嫌になってしまう人が多いです。
ビュリダンのロバ
複数の選択肢から一つを選択する際には多くの人が比較対象についての情報を分析して最適解を選ぼうとする傾向があります。
この現象に関する思考実験でビュリダンのロバがあります。
『ロバが干し草を探していると「同じ条件の二つの干し草を見つけます」が、ロバは「どちらを先に食べようか」を論理的に検討するものの答えが出せないまま餓死してしまう』という内容です。
人の場合は「条件を精査しても回答が導き出せない」ような状況の時は思考を辞めて「選ばない」という第三の選択肢を取りやすい傾向があります。
特に早急に必要ではない物の場合は「後で購入すればいい」と購入を見送る可能性がとても高くなります。
ビュリダンのロバでは「ロバは論理的な観点から最適解を導こうとする」という前提から「選択できない」という結果になってしまう事から自由意志の重要性が指摘されています。
そのため、複数のジャムが陳列されているような状況の場合は「オススメ商品」などの意思決定に影響を与える外部要因を提示して上手に購買意欲の向上に活用する事で購入を促進する事が期待できます。
ネットショッピングではWEBサイトの一部に「お買い得商品」「タイムセール」などのピックアップ情報が表示されたり、甲乙つけがたい類似品を販売する際には「1番人気」「売れ筋No1」などの追加の情報を提示しされる事があると思いますが、このような手法はジャム理論の応用例の一部で、ちょっとした工夫の積み重ねは売り上げに影響を与えていきます。
なりますし、
このように、ジャム理論はマーケティングでは重要な戦略として考えられているため理解を深める事でビジネスシーンでメリットを受けられる事が期待できます。
実際の店舗販売の場合は店頭(コンビニ・デパート・百貨店など)で一般消費者が目にする陳列棚の商品が多すぎると購買意欲がなくなってしまいますが、少なすぎると多店舗へと行ってしまうため最善のバランスは常に検討されています。
また、店舗がないインターネット上のネットショップ・ECサイトなどでも商品数が多すぎると情報を精査できないためWEBマーケティングで成功するためのポイントとして重要視される事もあります。
まとめ
人は基本的に多くの選択肢を提示されるとその選択の意味や理由を入念に考えて疲れてしまいます。
そして、このように労力がかかるような行為はエネルギーを浪費する行為であるため、遺伝子レベルで避ける傾向があります。
※人の生存戦略上、カロリーを温存するための言動を重視しやすいです。
その結果「選択を行う」という行動自体を放棄しやすい傾向があります。
このような基本的な心理傾向を知る事は人生において重要です。
例えば
目標を定めない場合は選択肢が無数に広がっていきます。
そのため「なにからやればよいのか」を選択する段階で決定を放棄してしまう事が多くなってしまい「なにかやろう」としてもその「何か」を考えるだけで終わってしまいます。
具体的には
なんとなく部屋を片付けるようとする時は要注意です。
手当たり次第に片づけを行う人の多くは残す物を選択していく傾向がありますが、この方法では片付いている実感を得る事が難しいため途中でやめてしまう人が多いと思います。
しかし、「捨てる物」を選択していくと次第に整理が進んでいくので片づけが進んでいる実感を得られますし、物が減ると更に片づけがしやすくなります。
つまり、選択肢を整理する事は目標に向かうためには大切な要素となっています。
備考
ジャム理論はジャムの法則(Jam study)とも言われ、コロンビア大学に所属するシーナ・アイエンガー教授が1995年に発表しました。
実験によってはジャム理論の効果が確認できない事もあるため、現在は疑問んの声も上がっていて「本当にこの原理が正しいのか?」という疑いの声も耳にします。