ザイガニック効果(ツァイガルニク効果)とは
概要
ザイガニック効果は「未完成の状態が気になる心理」です。
人間の心理は基本的に「完成されている状態」よりも「途中の状態」の方が気になる心理的な特性があります。
例えば、道を歩いていて建設中の建物があると「なにができるのかな?」と気になるのに、完成している建物を一つ一つ覚えている人は少ないと思います。
多くの人は自分の趣味嗜好に沿った店舗や仕事の業務に関連しそうなビルや事務所などは記憶している事が多いですが、道案内をする(される)時にはお互いが意識を集中しているポイントが異なる事を実感する人も多いと思います。
※コンビニや銀行などは目印になる事が多いですが「〇の看板」や「〇の木(花)」などの目印は共通認識をしにくい傾向があります。
学生の場合は学校の宿題が終わっていないと(特に夏休みが終わる時期になると)遊んでいる最中でも時折宿題の進捗状況が気になった経験を持つ人は多いと思います。
このように物事が完成されていない未完の状態(中断・進行中)の場合は印象が強く残り、そのことについて意識しる機会や時間が増えます。
特に自分の中で目標を設定している場合などは達成できていなかったり中断している事について意識が強くなるため「後で片付けよう」と思っていてもなかなか進まないような状態はストレスにもなりますし、実際には細かく意識している時間を合計すると片付け終わってしまうくらい時間を割いている事もあります。
特に1・2分で終わるようなちょっとした掃除でもついつい後回しにしてしまい見るたびに気になってしまう人は多いと思います。
掃除が未完成の間(汚い)は意識が集中してしまう一方で掃除が完成(終わって綺麗になる)されると汚かったという過去の意識は感じずに意識が他に向き記憶が薄れてしまう傾向があるので後から鮮明に思い出そうとしても思い出せなかったりします。
また、掃除の場合はやりかけの状態(進度が進み完成に近づいている)の方が強く記憶に残るため、始めたら最後までやってしまいたくなる傾向があります。
ザイガニック効果の原理
基本的に脳は課題を与えられるとそれに対して解決しようとします。
特に知らないものや見えないものに対しては警戒心や恐怖心を強く抱くので不安定な気持ちを軽減するためには解決する必要があるので強く意識してしまいます。
多くの人は宇宙人や幽霊が怖いと思った事があると思いますし、それについて考えた事もあると思います。
また、誰もいないはずなのに気配を感じたらオバケがいるのではないかと脳裏をよぎる事も多いと思いますが、これは無意識に潜在意識から記憶を引き出している状態です。
このように、未完成の状態は課題を投げかけられている状態で、脳はその答えを必死に模索します。
そのため、解決方法を無意識に考えてしまう心理的な傾向があります。
この効果を使うためにマーケティングなどではあえて完成形を隠しておき、意識を向ける手法が取り入れられています。
ザイガニック効果の具体例
宣伝
ザイガニック効果はビジネスでも用いられる事があり、一般的に周知されている手法として映画の宣伝動画などが代表的です。
特にCMなどの映像作品ではお勧めの注目してほしい場面(シーン)を積極的に流しますが最後の結末(ストーリーが完成されるまで)までは映像を流しません。
この手法はクリフトハンガー(プロット)と言われていてドラマやアニメの次回予告や番組の途中で流れるコマーシャルでも効果が発揮されています。
作品の途中までしか知らない状態がもどかしく感じるため本編が気になるように制作されているため宣伝映像を見た人は「この後の展開がどうなるのか」が気になります。
実際に映画の宣伝などを見て映画を見に行きたくなった人も多いと思います。
動画宣伝の場合はキャッチコピーや名セリフを主題歌(有名なアーティストが歌事も多いです)を流す事も多く、話題性が高い傾向があり宣伝を見ていない人にも広く周知される傾向も強いためです。
他にも多くの人が利用する公共交通機関のバスやバス停、電車や駅のホームの広告では興味を引いて詳細を思わず知りたくなるように告知などが制作されている事が多いです。
その一方で情報量が少なすぎると期待された効果が発揮されずにあまり意識されない結果となってしまうので上手に集客するためにはバランスがとても難しいようです。
恋愛
ザイガニック効果は恋愛でも用いられます。
「もう少し話したい」「もう少し一緒にいたい」と相手ところで何かしらの理由によって中断させる事で、心残りを残す事で気になる状態を作為的に作る事ができます。
そのため、相手と直接会っていない間にも気なる存在として考えてもらう事ができ、うまくいけば意識を向ける事ができます。
また、叶わなかった恋や、うまくいっていた恋愛なのにフラれてしまった。
このような状態はザイガニック効果がもたらされる典型ともいえます。
そのため、いつまでたっても強く印象に残ってる恋愛の記憶を持つ人は多いです。
まとめ
ザイガニック効果は未完成であったり隠れている事で意識が向く効果です。
昔からよく使われる手法であるためテレビCMなどでマーケティングを行う際に多様され「衝撃の展開はCMのあと!」「次回、真相が明らかに?!」など、先の展開をテロップとして煽る手法を目にした事がある人も多いと思います。
このような宣伝は実際にとても有効で、ドラマやアニメなどの週間で放映している作品を途中で見るのを辞めてしまう事ができる人はとても少ないと思います。
※一貫性の法則(一貫性の原理)の法則のように、途中でやめる事を妨げる心理も作用していると思います。
近年はインターネットが復旧した影響でSNS(ソーシャルネットワークサービス)などのオンライン広告でも用いられる事が増加しましたし「登録した覚えはないのに・・・」と思うような不思議なダイレクトメールやメルマガが勝手に送られてくることもあります。
このような日々の生活の中で実際にザイガニック効果が使われているのは、この手法が「有効」と考える人が多い(もしくは実績がある)事の証明でもあります、広告の宣伝費用以上の集客効果や売上効果が期待されていなければこのような手法を取る人はいなくなるはずです。
また、ザイガニック効果の特徴として目標を達成する直前が一番記憶に残りやすいという特徴があります。
簡単に表現すると「未完成でありつつもより完成に近い状態」です。
そのため、目標が具体的でなくては効果が薄れてしまう点は要注意です。
この効果を最も有効的に使っているのは現在ルーヴル美術館で展示・管理されている「ミロのヴィーナス」だと思います。
ミロのヴィーナスは美しい女性の彫刻ですが両腕がないため、その両腕がどのようになっているのかを気にしてしまう人が多いです。
実際に多くの芸術家や科学者が欠けた両腕を復元しようと試みていますが、定説すら完成してはいません。
※リンゴを手にしていたという話が広く伝わっています。
これは未完成のものについての興味や関心はとても高く想像を膨らませて好奇心を刺激する事の象徴であるかもしれません。
備考
ドイツの心理学者、クルト・レヴィン、ブルーマ・ツァイガルニクの仮設が由来とされています。
ツァイガルニク効果のツァイガルニク(Zeigarnik)はザイガニックとも読めるため、ザイガニック効果とも呼ばれます。