おとり効果とは
概要
おとり効果は選択肢の中に不適切な選択肢を入れて特定の選択肢を選ぶ可能性を上げる心理効果です。
おとり効果は主にマーケティングで用いられていて、商品の陳列の際にはこれを意識した陳列がされている事が多いです。
具体的な販売方法としては同じ中身のドリンクでも容量によって価格が異なる事が多いです。
- Lサイズ 500ml 625円 1.25円/ml
- Mサイズ 330ml 495円 1.5円/ml
- Sサイズ 180ml 360円 2円/ml
このように、内容量が多い方がお買い得になるように商品価格に設定されている事が多いと思います。
この場合の消費者心理としては
- Lサイズ 500ml 625円
コスパがいい - Mサイズ 330ml 495円
ちょうどいい飲み切りサイズ - Sサイズ 180ml 360円
割高で量も物足りない
このように判断する傾向があるため、多くの人はSサイズの商品を購入しない傾向があります。
2つ甲乙つけがたい選択肢(L・Mサイズ)のみしか提示されない状況では「選択を延期」してしまったり「決定しない」(買わない)という選択をとってしまうため、このような心理を誘導しないためにあえて第三のおとりとなる捨て案の選択肢を用意する事で購買が促進されます。
異なる商品を比較する場合
おとり効果は複数の選択肢がある場合にあえて魅力的ではない選択肢を提示する手法です。
例えば、2つの選択肢で迷っている場合に明らかに魅力的でない選択肢(おとり)を提示する事で、特定の選択をしやすくなります。
具体的には
携帯電話の商品A~Cがあり、販売価格は全て同じだとします。
商品名 | 総合点 | 処理速度 | 記憶容量 | カメラ |
---|---|---|---|---|
A | 8 | ☆☆☆ | ☆☆ | ☆☆☆ |
B | 8 | ☆☆☆ | ☆☆☆ | ☆☆ |
C | 6 | ☆☆ | ☆ | ☆☆☆ |
この表では商品AとBの性能に大きな差はない一方で、商品A・Bよりも劣る商品Cが提示されています。
総合評価で劣る商品Cですが、商品Bよりもカメラの性能は良いです。
この場合、消費者は「全体的にコストパフォーマンスが良くない製品Cよりも劣る部分がある商品B」よりも「商品Cの完全上位互換である商品A」を選択する可能性が高くなります。
飲食店でのおとり効果
昔ながらの飲食店では「松・竹・梅」の異なる大きさが表記されたメニュー表が未だに使われている事もありますが、近年は「大・並・小」などの大きさが表記されたメニュー表を目にする事が多いと思います。
基本的に飲食店のメニュー表では量が多くなるほど量に対しての単価(g単価など)が安くなるため、大きいサイズの方がコストパフォーマンスが良くなりますが、これは飲食店側としては商品価格が高いメニューを選択して欲しいためです。
料理は基本的に量が増えるよりも品数が増える方が手間がかかるため、量を増やして客単価が上がればお店側にとっては利益が出しやすくなります。
そこで、多くの人は「最初から少ないメニューを無くせば利益率があがるのでないか?」と考えるとおもいますが、それでもメニュー表では一番量が少ない商品は基本的にほとんど販売される事がない商品でもおとりとしての役割を持った重要な商品のためメニューから外す事はありません。
まとめ
「高機能で低価格の商品」と「低機能で高価格な商品」があったら前者を購入したいと考えるのが基本的な消費者心理ですが、消費者の中には妥当性のある適正価格を把握できていない人も多いです。
そのため、製品開発能力がとても高い会社でも上手に販売できなければ倒産してしまう事もあります。
そこで、マーケティング分野では売りたい商品・場所・顧客などに合わせて常に最適解が模索されています。
消費者心理を掴む事は売上に直接左右するため、おとり効果のように上手に購買に結びつける手法は昔から研究されています。
また、おとり効果ではダミーの商品を並べる事で利益が得やすくなると期待されていますが、その一方で商品の種類が多くなりすぎると決定麻痺(決断することに疲れてしまう)を起こしてしまうためジャム理論(ジャムの法則/決定回避の法則)のように購買行動が抑制されてしまうと考えられています。
他にも、あえて高価な価格設定にする事で購買行動が刺激されるヴェブレン効果(ベブレン財)も広く知られています。
そのため、販売したい消費者に合わせて上手に販売戦略を考える事は利益を上げるためには重要な要素になっています。