適者生存とは
概要
適者生存は環境に適応できるものが生き残るというシンプルな発想です。
基本的に生物は進化していきますが、その進化の過程で生き残るのに適さない種は衰退し、適応できるように洗練された生物は繁栄していくのが自然のメカニズムです。
そのため、環境に適した種は生息数や生息域を広げて子孫を増やし進化していきます。
特定の種の中でも更に際立って生存に有利な個体が現れると、その優生な遺伝子の特徴は種全体に広がっていきます。
現在の環境で生き残っている種は自然淘汰された結果生き残った環境に適応した生物の子孫という事になります。
適者とは
基本的に自然界では時間経過によって生物が淘汰されていきます。
そのため、自然環境では生存者バイアス(淘汰されなかった生物が生き残っています)が強く反映されてるため、繫栄しなかった生物の特徴には何かしらの問題点があったと言い換える事もできます。
これは意外な事に、強い生物でも絶滅してしまう危険性がある事の裏付けにもなっています。
良く誤解される事なのですが「適者=強者」という認識を持つ人は多く、弱肉強食という言葉から生態系の上位である強い生物(捕食者)が生き残って生態系の下位の弱い生物が淘汰されると誤解している人も多いです。
しかし、生態系の上位の種は個別の生存能力(生存率や寿命は長い傾向があります)は高いですが種として長く生存できるかは別問題です。
実際に生態系の上位の生物でも環境に適応できずに淘汰される事もあります。
つまり、捕食者として生態系の上位に君臨する種としての生存戦略が、実際には最適でない事も多いです。
これは自然が常に一定の環境ではなく変化が繰り返し起こっている事が影響しています。
その環境変化に適応できる適応能力が高い生物が生き残り、適応できない生物は淘汰されてしまいます。
※自然に淘汰されていくのは自然淘汰説や自然選択説と言われます。
適者生存と弱肉強食の違い
弱肉強食は強いものが弱いものを捕食するというシンプルな考え方です。
基本的に生体ピラミッドの上位の生物は強者で下位の生物を捕食している傾向が強く、この生体プラミッドの頂点は捕食者である肉食獣です。
※肉食獣を撃退できる強い草食動物もいます。
基本的に頂点捕食者は哺乳類か爬虫類である事が多いです。
※ライオン、ワニ、蛇など
生態系の上位にいる生物は生物単体としての生存競争では有利な傾向がありますが、その強さは種として生存できる強さに比例はしません。
例えば
サーベルタイガー(剣歯虎)と呼ばれる猫科の大型動物は生態系の上位の肉食獣でしたが、現在は絶滅してしまいました。
引用:wiki剣歯虎より
サーベルタイガーの大きな牙(20cm程度の短刀状の牙)は大型動物を専門に狩るための武器として使っていたと考えられています。
このような捕食者でも環境に適していなければ絶滅してしまうのが自然の摂理です。
※現在は絶滅危惧種を保護する動きもあるので人類に護られている生物も多いです。
反対にゴキブリのような単体としては弱い生物でも長い間ほとんど種としての戦略や構造が大きく変わらずに存在できている生物は適応能力がとても高い生物であるため、自然界は適者生存(適応できる者が生き残る)と言われています。
※人類の祖先は200万年前から存在していると考えられていますが、ゴキブリの祖先は3億年以上前から存在していると考えられているため、ゴキブリの方が人類よりも優れた環境適応能力を持っているのかもしれません。
適者生存と人間の発展
自然界ではライオンやワニのような捕食者より人は弱い生物で、道具を使わずに素手で捕食する事ができる人はとても稀です。
このような弱い生物なのに地球の歴史的から考えると人類が誕生してからの歴史はとても短いため、主として生存できているのは環境への適応能力が高かった種であると考える事もできます。
時期 | 誕生 | 備考 |
---|---|---|
46億年程度前 | 生物が誕生 | 海の中に単細胞生物のみ |
10億年程度前 | 多細胞生物が誕生 | |
4億年程度前 | 陸上生物の誕生 | |
3億年以上前 | ゴキブリの誕生 | |
2億3千年程度前 | 恐竜の誕生 | 6千6百万年程度前に絶滅 |
200万年程度前 | 人類の誕生 |
当初の人類も他の霊長類のような生活をしていたと推測されていますが、自然発火などによって生じた残り火を使えるようになった事で文明が始まったと考えられています。
火の影響によって夜間や低気温でも活動する事ができるようになりましたし、加熱調理によって安全(病原菌が減少します)で栄養価の高い食事(加熱する事で栄養を吸収しやすくなります)にも繋がりました。
肉食獣は肉を食べるだけですが、人類は食べた獣の牙や爪なども活用して武器を作って捕食者から身を護るようになります。
他の生物が強い爪や牙などを発達させて得る能力を疑似的とはいえ短期間で身に着けます。
このように他の生物は何世代もかけて進化する事で環境の変化に適応していくのに対して、人は進化を辞めて文明を発展させる事で繁栄してきました。
道具は狩猟だけではなく、植物の栽培や採取などにも使われ食料の確保が効率的になっていきます。
この生存戦略は大きな成功だと考える事ができると思います。
世界の人口は爆発的に増加して2011年には70憶人に到達しました。
世界人口 | 西暦 | 経過年数 |
---|---|---|
10億人 | 1804年 | – |
20億人 | 1927年 | 123 |
30億人 | 1960年 | 33 |
40億人 | 1974年 | 14 |
50億人 | 1987年 | 13 |
60億人 | 1999年 | 12 |
70億人 | 2011年 | 12 |
人類は雑食ですがそれでも通常は食料難という壁によって生態系の上位の種でも一定数以上になる事はありません。
※生態系の頂点に君臨していたとしても、生態系のピラミッドの下位が減少すると上位を補うだけの食料が手に入らなくなるためです。
しかし、人類はこの問題を植物の栽培や家畜の育成によって乗り越える事に成功しました。
更に人工交配による品種改良を行って効率的に生産量を増やして食糧難を乗り越えてきました。
現在、日本で飢えに苦しむ人は少ないですが、急速に増えた世界の人口によって世界全体では従来の方法では食料が不足傾向に向かってきているようです。
※今までも食糧難になると予想される事は何度もありましたが人類は創意工夫する事で乗り越えてきました。
まとめ
適者生存は人間社会のみではなく、自然界に生息する生物の生存闘争において環境適応能力が高い生物が生き抜いていく(生存競争に勝ち抜いていく)という考えで、生物の進化では重要な概念として考えられています。
自然界では生存者バイアスが強く作用されているため、多くの生物は子孫を残す過程で環境に適した特性が継承される事で進化していき、生存に有利な要素を持った遺伝子が脈絡と継承されてきました。
人間もその例外ではなく、現在までに多くの個体が誕生しては死亡していく過程で新しい命を繋ぐサイクルが保たれてきたため、現在では世界的に多くの人類が生存しています。
しかし、基本的に人類は単体の生物としてはお世辞にも強い生物(暴力的な強さ)だとは言えません。
※人類は脳を拡張するために生理的早産になったとも考えられるほどです。
特に現代の日本人は生物単体としての強さには期待できません。
大人が1人で自然の中になにも持たずに取り残されたとして、1週間生存できる人はほとんど皆無だと思います。
※水や食料の確保・病原菌の対策・獣の脅威・病気や怪我などを少し想定するだけでも長期間の生存が困難な事がわかります。
このような生き物が安心して衣食住を行うというのは自然環境ではありえないと思います。
それだけ文明の恩恵は大きく、人工的に作られた衣類・食料・住居は生存に大きな影響を与えています。
しかし、食べ物と寝床は安全が確保できないと困ると思っても、衣類については疑問に思う人もいると思います。
衣服は常に当たり前のように身に着けていて役目を深く考える事をしないため恩恵を忘れがちですが、
例えば
山道を裸足で10mも歩けば足の裏が痛くなって靴の恩恵を再認識する事ができると思います。
そのため、まず衣類を身に着ける事で怪我をする事は減ります。
そして、怪我以外のリスクも大きく減少させる事ができます。
具体的には、衣服を着るだけで蚊などの虫や病原菌に対してある程度の防衛能力が高まります。
※蚊に刺されるだけでも毎年100万人以上が死んでいます。
このように、人類は頭脳を鍛えて文明を築くという生存戦略を選ぶことで環境適応能力を大きく補助する事に成功して急速に繁栄しました。
そして、この文明社会では暴力的な強さがいくらあっても適応できなければ淘汰されてしまいます。
反対に、体が弱くて直接的な生産能力が低くい人(第一次産業などに適していない人)でも高い専門知識をもつ事で生産者以上に豊かな生活をする事もできます。
例えば
生物の変化に手を加えて品種改良(自然ではなく人工的気に種の選択を行って自然淘汰とは異なる進化を促進させる)の研究を行ったり、高い金融知識から利益を獲得する方法など様々な方法があります。
そのため、自分の得意な分野で社会に貢献できれば安定した生活を行う事ができます。
しかし、社会では能力の需給バランスがあるため、取得難易度が高いにも関わらず評価が低い能力や、取得難易度が低いのに評価が高い能力もあるので、自分の適性と照らし合わせて能力を伸ばすことが望ましいです。
備考
イギリスの社会学者ハーバード・スペンサーによって提唱されました。
生物の進化論で有名なダーウィンも影響を受けたと考えられていて、著書の「種の起源」で出てきます。