臓器くじ(サバイバル・ロッタリー) | あむぶろ 学校では教えてくれない大切なこと

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臓器くじ(サバイバル・ロッタリー)

投稿日:2020年3月22日 更新日:

臓器くじとは

概要

臓器くじは「健常者の臓器を取り出して多くの人の命を救う事は善い事であるのか」について考える思考実験として提案されました。

複数人の異なる疾患を持った人を助けるために一人の健常者から複数の臓器を取り出す事で疾患を持つ複数の人が助かるため「少数の犠牲で多くの人が救われる」事になります。

算数的に臓器くじの概要を具体例を交えて考えると

  1. 臓器移植の待機者が5人いるとします。
  2. それぞれ異なった疾患を患っていれば損傷している臓器も異なります。
  3. 1人の健常者から5つの臓器を取り出して複数の移植の待機者へ臓器を配布する事で「1人の犠牲者に対して5人の疾患が改善」されるため幸福の総量は増加していると考えられます。
    ※5人(助かる)-1人(犠牲)=4人(幸福の増加)

つまり「多く人の病気が治る=多くの人が幸福になる」と考えるならば「1人の健常者には臓器を提供してもらい複数人が元気になれば総合的な幸福度は高い」という事になります。

功利主義の基本は「最大多数の最大幸福の最大化」であるため一人の健常者が犠牲になる事が善となります。

このように、臓器くじは功利主義やモラルジレンマを考える際の題材として取り上げられることが多い思考実験です。
関連した題材としてトロッコ問題(トロリー問題)などについての知識もあるとより理解が深まると思います。

臓器くじの具体的な内容についての備考

  • 健常者の中から無作為に一人選び、その人から複数の臓器を傷病者へ分配します。
    ※くじ引きは完全に平等に行われて不正行為も医療的な失敗もなく100%手術は成功します。
  • 臓器を取り出された人は助かりません。
  • 摘出した臓器を移植待ちの患者へ提供します。
    ※人工臓器や死体移植などの選択肢を排除して県所者からの移植以外に助かる方法はないと仮定します。

議論の焦点や問題点

  • 健常者が一人犠牲になる事で多くの人が助かる。
  • 臓器提供を望まない健常者が犠牲になる事への疑問
  • 臓器を摘出される側の気持ち
  • 自分だけでなく家族・友人・恋人などが対象になった時の心境
  • 健常者でいる事への疑問を持つ人が増える
  • 自傷行為を行ってくじの対象者にならないようにする人が現れる
  • 臓器移植を望む数人と健常者一人の社会的需要度
  • 臓器を提供する側が重要人物の場合や提供してもらう側が凶悪犯の場合
  • 病人を殺害する者が現れる可能性

上記の様に倫理的・道徳的問題が多いためモラルジレンマとして取り上げられる事も多く人道的な観点のみでも「賛成意見」や「反対意見」が無数にあります。

まとめ

基本的に日本の社会では臓器くじのシステムが善とされていません。

健常者にとってはデメリットの方が多きいですし道徳的・倫理的観点から考えても多くの人はこのシステムに疑問を持つはずです。

また、臓器に疾患を患っている人でも多くの人は疑問を持つケースの方が多いと思いますが、その一方で提供される立場の人にとってはメリットが多くとても喜ばしいシステムなので賛成する人もいると思います。

しかしこのシステムの根幹は「犠牲になる者よりも救済される者が多ければ良い」という考えです。

つまり「健常者から摘出されるのは善である」と考え賛同する病人がいたとしても臓器くじのシステムでは本質的には必ずしも健常者から臓器を摘出する必要性はありません。

そのため、最低限の内容では犠牲になる人数よりも多くの人が移植を受けられればシステムとしては問題はありません。

そこで、多くの病人は全ての臓器に問題を抱えているケースは非常に稀であるため、臓器を摘出する対象者を「重症な患者」に絞り「軽症な患者」へ提供して1人の犠牲者から最小で2人以上助かる臓器の摘出ができればシステムの根幹には問題がない事になります。

つまり、先ほどは「臓器を提供される立場」だと思っていた人でも少し条件が変化するだけで「臓器を提供する立場」になる可能性もあります。
※臓器くじのような功利主義的な考えに重点を置く場合は健常者から摘出するよりも現実的な意見であるとすら考えられます。

このケースを極端に例えると「脳死状態の患者からの臓器移植」などが該当します。
この方法は世界的に広く周知されていて実際に公な場で手術が行われている方法です。

しかし、日本での現状としては「脳死判定を受けている状態」で「生前に本人から臓器移植の同意が取れているケース」においても親族からの了承を得る際には遺族の感情面による問題で移植が実行されない事も多いようです。
※脳死状態の場合は外傷がないケースも多いため中には ”生前同様の姿” で ”心臓が動いている近親者” から臓器の摘出を決断するのはかなりの精神的な負担を強いる事になると思います。

他にも「脳死判定」事態への疑問や倫理観などの問題もあります。

現在の日本では「功利主義的な考えが必ず正しい」という認識が普及していないという背景もあると思いますし、偏った思考でのみ物事を判断するよりも多面的な視点をもって様々な模索をして最適解を導く方がより良い選択だと思います。
※海外でも「功利主義的な発想が必ずしも正しい」と考えている人は少数派です。

日本人は特に功利主義的な観点を主観に置く人が少ない傾向にありますが、世界的に見ても臓器くじを善とする社会は少ないです。

しかし、一般的に多く普及されている多数決はこれに近い方法になっています。

多数決は簡単に決まりがつく一方で誰かが犠牲になる可能性が高い事も知る必要があります。

そして、何度も少数派に分類されて一方的に意見を押し付けられる立場の人は納得できないまま不満をため込んでしまいやすい傾向があります。

テロなどの暴行事件の背景には社会から見捨てられた立場の人達が関わっている事も多いです。

現実的には「多数の意見=最適解」ではない事も多いため多数決を過信する事には注意が必要です。

例えば、プロ棋士の人が導く一手は素人には想像も及ばない程考え抜かれていますが、それを理解できるのは少数派です。

そのため、民主主義のように定期的に多数の意見を反映させる制度では有権者の教育レベルが社会に大きな影響を与えると考えられます。

備考

臓器くじは哲学者(理論学者)のジョン・ハリスが提唱した思考実験でサバイバル・ロッタリー(survival lottery)と言われる事もあります。

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