
モラルジレンマとは道徳的に矛盾した二者択一です。
モラルジレンマは複数の選択を迫られた時にどの選択も正しく、どの選択も間違っているとする矛盾を抱えています。
実社会ではモラルジレンマが起きないようにすることが望ましいです。
モラルジレンマの試行実験はいくつかのパターンがあります。
代表的なものは
トロッコ問題や臓器くじがあります。
しかし、いずれも道徳的に正しと断定できる答えはありません。
具体例(トロッコ問題)
トロッコ問題という有名な例があります。
線路を走っているトロッコが制御不能となってしまいました。
なにもしなければ作業員5人が犠牲になります。
しかし、線路の分岐装置を稼働させ違う道を選択する事もできます。
その場合は、線路の先の作業員が1人犠牲になります。
選択肢A 「なにもせず、5人を犠牲にする。」
選択肢B 「線路を変更し、1人を犠牲にする。」
この6人の命は他の選択で変わることはないとします。
また、法的責任も問われないものとします。
モラルジレンマ問題は、どちらを選択しても道徳的に正しい考えを断定する事は難しいです。
まとめ
多数決は便利ですが、当事者を集め多数決を行う場合は5人の命が助かる可能性が非常に高いです。
仮に客観的な多数決を行う場合、余命幾ばくもない5人と、まだ働き始めたばかりの青年1人だとしたら余命が長い青年の方が多くの票を集める可能性もあります。
また、5人が逃げきれる可能性よりも、1人が逃げきれる可能性の方が高いなど、条件次第で回答が変わる可能性があります。
命の数や重さで判断する事が正しいか、またその選択をできるかどうか。
とても難しい問題です。
しかしこの問題を根本的に解決する方法はあります。
トロッコのメンテナンスが確実に行われ、制御不能になる事がなければこの問題は起こりません。
近年ではモラルジレンマ問題を学校の授業で取り入れる自治体あるようです。
しかし、教育に取り入れるのには疑問を持つという意見もあります。
大切なのはこのような状態にならない事です。
事前に回避できる選択ならば事前に回避するべき課題です。
備考
長崎県にバスの運転手を称え建立された打坂地蔵尊(うちざかじぞうそん)があります。
これが建立された背景には21歳の青年が大勢の乗客を護った実話があります。
当時のバスは木炭を燃料にしており、車両トラブルも多かったです。
特に急こう配が続く街道最大の難所として知られている地獄坂は後ろが崖となっているため、運転手からは恐れられていました。
当時の車両では力が足りずに登り切れず止まってしまう事が多く、乗客が車両から降りてバスを押す事もありました。
その日も満員の乗客30名を載せたバスのエンジンはこの地獄坂で止まってしまいました。
しかし、いつもとは異なりブレーキの故障により停車する事ができず、逆走を始めてしまいます。
車掌の青年は逆走するバスを止めようとマニュアル通りにタイヤの下に石を入れ輪留めとし、バスを止めようとします。
しかし、バスはなかなか止まらず、このまま逆走を続ければ乗客を乗せたバスは崖から落ち大惨事になります。
崖まであと少しというところで、バスが止まり運転手や乗客は安堵しました。
しかし、輪留めとなっていたのは石ではなく青年の体でした。
殉職した青年は素直で気の優しい、物静かな性格だと思われていましたが、人一倍責任感と勇気がある強い青年だったようです。
この事故は車両トラブルが原因(後の調査でブレーキ、ギアシャフトの故障が確認されています)でした。