睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
概要
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は睡眠中に呼吸が止まったり、浅くなってしまう病気です。
多くの人は少し呼吸が止まり良質な睡眠の妨げとなっても日常生活に大きな支障がでないと考えて軽視してしまいがちですが、重症化すると危険な病気であるため放置してしまうのは危険です。
睡眠時無呼吸症候群は治療を受ける事で改善する病気ですが、一人で寝る事が多い人はその症状に気が付かない事が多いです。
寝るときに誰かが一緒である場合は「いびきが酷くなった」「呼吸が止まっている」という事に周囲の人が気が付くことが多いため発見されやすいですが、軽度の状況で改善に通り組む人の割合は多くはありません。
また、睡眠時無呼吸症候群は他にも似た症状がでる病気があるため、思い込みを捨てて多様な視点から分析する事が大切です。
病院へ行くと睡眠時の酸素濃度などを測定する事のできる機器の貸し出しもしてくれるため、疑わしいと感じたら一度受診する事をお勧めします。
睡眠時無呼吸症候群の症状
睡眠時無呼吸症候群は呼吸に影響が現れて睡眠を阻害しているため、睡眠時間が十分に確保できていないためしっかりとした休息が取れずに体の疲れが残ってしまう人も多いです。
意識がある状態で意識的に呼吸を10秒止めるのは少し苦しいと思う人が多いと思いますが、睡眠時無呼吸症候群は寝ている間に呼吸が止まるため無意識にこの苦しさを味わっている状態です。
このように具体的なイメージを持っていただければ睡眠が阻害されてしまう事で十分な睡眠時間を確保できなくなってしまうのはご理解いただけると思います。
そして、十分な睡眠時間が確保できないと日常生活に悪影響がでて、集中力・認知機能の低下などの問題が起きてしまいます。
そのため、睡眠時無呼吸症候群の初期段階では睡眠不足に似た症状(日中の眠気、疲労感、倦怠感、集中力が続かないなど)や夜中に目が覚めてしまう事もありますが、この段階で睡眠時無呼吸症候群だと自覚できる人は少ないです。
また、疲労による一過性の可能性も考えられるため疲労を取る事で改善する可能性も高いです。
重症化すると呼吸への影響が大きくなり血中の酸素濃度の低下(血液の酸素濃度は基本的には96%以上ですが、無呼吸状態になると90%以下に低下してしまいます)につながるため、脳をはじめとした身体への酸素供給が不足してしまいます。
血中の酸素濃度が低下すると心拍数や血圧が上昇するなどの影響がでます。
睡眠時無呼吸症候群は、その影響によって自律神経や循環器系への病気へと発展する可能性や、心疾患や脳卒中のリスクが上昇してしまい、最悪の場合は事故死や突然死の可能性も考えられる怖い症状であるため早急な治療が求められます。
睡眠時無呼吸症候群の重症度について
WHO(世界保健機関)による睡眠時無呼吸症候群の判断基準は、「睡眠中に10秒以上呼吸が止まる事が、1時間のうちに5回以上」もしくは「10秒以上呼吸が止まる事が、1晩の睡眠で30回以上」であるという条件です。
呼吸が止まる時間の長さや回数が増えると重症となっていき、体調不良を訴える人も増えます。
一人で寝ている人でも重症になると自覚症状がでて病院へ受診する人も多いようです。
日本の病院では1晩の睡眠における無呼吸状態の回数で重症度を判断する事が多いようです。
症状の度合い | 1晩で10秒以上呼吸が止まった回数 |
---|---|
軽度 | 5~14回 |
中度 | 15~29回 |
重度 | 30~ |
病院で貸し出された機械で自宅での睡眠状態の簡易検査(貸出の機械で呼吸が止まっている回数・酸素濃度・脈拍などを測定)を行い、10秒以上呼吸が止まっている状態が1晩で30回以上確認された人は重症であるため、治療を受ける必要があります。
※簡易検査の精度は環境によって左右されるため、簡易検査で重症の疑いがある人は病院内で再検査を受けます。
1晩の睡眠で無呼吸状態が15回未満の軽度の人は健康保険の適用外のため、日常生活に大きな問題はないと判断されます。
しかし、睡眠時無呼吸症候群が大きな原因ではないにもかかわらずに自覚するほどの体調不良がある場合は他の病気を疑った方がよいかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群の原因
睡眠時無呼吸症候群は肥満や加齢が原因だと言われる事が多い病気ですが、重傷者の60%は肥満ではありません。
※アジア人特有の小さい顎などの骨格にも原因があると言われています。
睡眠時無呼吸症候群は大きくわけて閉塞型と中枢型に分類されます。
※閉塞型と中枢型の両方の人もいるため注意が必要です。
多くの人は閉塞型(8割)だと考えられています。
閉塞型の多くは食生活・運動・睡眠サイクルをはじめとしたライフサイクルに問題がある事が多く、重症化すると高血圧・不整脈・脳卒中などのリスクが上がるので注意が必要です。
閉塞型(8割が該当)
閉塞型はなんらかの原因によって気道の確保ができない事で呼吸が困難になってしまうのが特徴です。
閉塞型の原因の多くは肥満や加齢である事が多く、肥満の場合は首(特に舌に近い喉の周辺)の脂肪が増える事で気道を圧迫してしまいます。
また、肥満ではなくても下顎(したあご)が後ろ(背中の方によっている)に引っ込んでいたり、下の付け根が大きいなどの要因から気道の確保が難しくなると閉塞型の睡眠時無呼吸症候群になりやすいです。
寝ていて無意識の状態の場合、気道が確保できなくても呼吸をしようと胸やお腹の筋肉を動かしますが、この状態は心臓などへの負担が大きいため呼吸ができないだけだと簡単に考えてはいけません。
喉の気道が確保しにくくなるといびきをかきやすくなるため、閉塞型の人は他の人と寝ていると周囲の人が初期症状に気が付きやすいです。
治療法はマウスピースを付ける方法もありますが、CPAP(シーパップ)という鼻に機械を取り付けて空気を送り気道の閉塞をなくす機械を用いる事もあります。
しかし、使用者はまだ50万人強程度で「眠れない」と使用を断念する人も多いです。
中枢型(中枢性睡眠時無呼吸症候群 CSAS:Central Sleep Syndrome)
中枢型は呼吸をコントロールする身体機能の異常によって引き起こされます。
そのため、閉塞型とは治療法が異なるため、中枢性睡眠時無呼吸症候群と分けて考えられる事もあります。
中枢性睡眠時無呼吸症候群の原因は
- 中枢の機能低下
中枢の機能低下によって呼吸運動が衰弱してしまい、その結果、気流が減少してしまう事で低酸素状態となってしまいます。 - 神経障害
呼吸のために必要な筋肉が麻痺してしまう事でうまく呼吸ができなくなってしまい無呼吸状態となってしまいます。 - 脳の異常
脳から呼吸をするという支持が正しく送られ来ない事が原因で呼吸ができない状態です。
このように中枢型の原因を意識的に改善する事が難しいです。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群は自分で発見する事が難しい病気ですし、その判断の際も体調による影響が大きいです。
※国内の患者は推定500万人とも考えられています。
しかし、睡眠時無呼吸症候群になると、夜はいびきが酷く何度もトイレへ行ったり、昼は眠気や集中力の低下から生活の質は低下する傾向があります。
※在宅勤務の増加で体重が増えて睡眠時無呼吸症候群になってしまう人も多いようです。
そのため「ストレスが溜まっているから」「疲れていたため」「寝つきが悪かった」「前日に〇〇したのが原因」などの独断で判断せずに、睡眠時間を十分にとっているにも関わらず日中に眠気があるようなら睡眠時無呼吸症候群を疑ってみてください。
睡眠時無呼吸症候群は日常生活に問題があると起きてしまうため、生活習慣の見直しが必要であることが多いです。
具体的には、煙草(たばこ)やお酒(アルコール)の摂取や、過食、夜更かしなどが原因といわれています。
軽度の場合は生活を改善する事で健康状態へと向かいますが、いびきをかいている場合は何らかの原因によって気道の確保がうまくできていない事が考えられるため、注意が必要です。
また、呼吸が止まって睡眠時間が不足しているだけだと考える人も多いですが、呼吸が無意識のうちにできないと心臓や肺などへの負担も大きいため、心臓・血管・循環器系の病気(心不全・高血圧・不整脈・大動脈瘤・脳卒中・虚血性心疾患など)になるリスクが高くなる可能性や、大きな病気が隠れている可能性もあるため注意が必要です。