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世界五分前仮説

投稿日:2020年11月11日 更新日:

世界五分前仮説とは

概要

世界五分前仮説は「世界は五分前に始まった」という思考実験における仮説です。

多くの人は「5分以上前からこの世界はある」と認識していると思いますが、実際に私たちには”5分以上前の記憶”がありますし”5分以内で作る事が難しい物”もたくさん存在しています。
※人間関係(両親や兄弟、友人など)や動物(特にペット)などの生物に愛着あったり、構造まで理解して思い出がある建物などもそのような記憶がある状態から始まっているという仮説です。

しかし、この仮説では最初から”そのように設計されている”という前提で考えます。

例えば
私たちの記憶は「”5分以上前の記憶がある状態”で創生されたため」という風に、過去の状態は実際には過去ではなくそのような初期状態から作られているだけであると考えるのがこの仮説の難しい点です。

わかりやすく簡単に説明すると「スマホを新しく購入した時に最初からインストールされているアプリ」のように「初期設定の段階で組み込まれている記憶」がある状態です。

この仮説では私たちの知識や記憶という根源的な要素が覆されるような内容のためこの仮説を完全に否定する事は不可能(検証する事すらできません)でもあります。

世界五分前仮説の要点

世界五分前仮説はラッセルが提唱しています。

原文を和訳したものとして

世界が五分前にそっくりそのままの形で、すべての非実在の過去を住民が「覚えていた」状態で突然出現した、という仮説に論理的不可能性はまったくない。

異なる時間に生じた出来事間には、いかなる論理的必然的な結びつきもない。

それゆえ、いま起こりつつあることや未来に起こるであろうことが、世界は五分前に始まったという仮説を反駁することはまったくできない。

したがって、過去の知識と呼ばれている出来事は過去とは論理的に独立である。

そうした知識は、たとえ過去が存在しなかったとしても、理論的にはいまこうであるのと同じであるような現在の内容へと完全に分析可能なのである

このように表現されていて要点をまとめると

引用元はこちら
  • 世界は五分前に創生されました。
  • 私たちの持つ過去の情報は、それを記憶した状態で創生されました。
  • 過去が存在しなくても理論的な問題はありません。

ここで「過去との必然的な結びつき」について疑問に思う人も多いと思います。

しかし、人の思考は基本的に知識や過去の経験からの推測によって導き出されるものとなっているため、その根源である知識や経験をあらかじめ備えた状態で創生されてしまえば、そこに必然性はなくなってしまいます。

具体例
日本の小~中学校の教育課程では基本的に留年はありません。

そのため、7歳ならば小学校1・2年生、13歳ならば中学校1・2年生で4月になると学年が1つずつ上がっていきます。

つまり、基本的に小学校1年生を経験してから中学生や高校生になっていくのが通常の流れです。

しかし、最初からそのような状態(いきなり中学生など)で5分前に創生され、辻褄が合うように定められた年齢を割り振って位置づけされます。

更に抽象化した表現を誤解を恐れずにするならば「イチゴのショートケーキの上には本来あるはずのイチゴが誰かに食べられた状態で目の前にあるとしても、そのようにして世界が作られた」という事になります。

そしてご丁寧な事に、そのイチゴを食べた犯人も事前に用意されています。

しかし、実際にはその犯人はイチゴを食べていませんが、犯人自身もイチゴを食べたという認識をもって創生されています。

このように、条件を満たした状態で創生されているため、過去という概念は記憶や状況証拠としてあるだけで、実際に存在した証明にはなりません。

まとめ

世界5分前仮説は水槽の脳(水槽脳仮説)のように私たちが感じている根源的な要素を否定する考えです。

現在を生きる私たちが昨日の証拠としているものを、そのようにして作られていると言われてしまうと、体感的に感じているだけの根本的な要素が覆されてしまいます。

そして、因果律のように現在の状態が完全に定められている状態ならば、その前後を辿っても矛盾は発生しないため否定する事は難しいです。

今現在の私たちはこれらの事を受け入れる事が難しい人が多いと思いますが、コペルニクス的転回(コペ転/パラダイムシフト)のように、認識が全て逆転することもあるのかもしれません。

備考

世界5分前仮説はバートランド・ラッセルによって提唱されました。

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