労使慣行は就業規則に定められた内容とは異なった慣行がある場合は慣行の方が強い力を持つ事があるとするものです。
就業規則は会社で定められたルールですが、そのルールとは別に慣行的(日常的に守られている)なルールが存在する会社も多いと思います。
中には就業規則に反している内容もあります。
しかし、従業員の多くは就業規則を全て理解していない事が多く、そのため、就業規則に反しているのかも知らない事が多いと思います。
そのような慣行は就業規則よりも強い力を持つ事があります。
具体例
従業員の中には年に数回程度、数分だけ遅刻する社員もいると思います。
そして、遅刻の原因が子供であったり、渋滞であったりする場合は周囲も遅刻に対して多めにみる場合が多いです。
しかし、多くの会社の就業規則で遅刻による定めが記載されているはずです。
基本的にはノーワーク・ノーペイの原則によって賃金を支払う義務はありません。
そのため、1分でも遅刻した場合はその分の給料を減給しなくてはいけません。
しかし、実際にこれが行われている会社は少ないと思います。
このような事が行われないという暗黙のルールがあるためです。
この暗黙のルールが労使慣行と呼ばれます。
労使慣行と認められると、先ほどの数分の遅刻に対して、会社側で減給を行う事ができなくなります。
まとめ
労使慣行は労働基準法ではなく、民法の影響を受けています。
民法
第5章 法律行為
第1節 総則
第92条 任意規定と異なる慣習法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意志を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。
つまり、みんなが守っているルールが規定と異なっても、それが秩序を破るような事でなければ定められている規定よりも優先するという内容です。
しかし、労使慣行が実際に力を発揮するためには条件がいくつかあります。
- 長期間繰り返し行われている事
- 労働者が周知している事
- 就業規則の裁定や変更を行う権限のある人が認識している事
- 社長がそのルールを知っている(黙認していても可)事
- 経営者がそのルールを守る方が良いと思っている事
- 公の秩序に悪影響を与えない事
この条件を満たすと労使慣行が認められますが、経営者が異議を唱えると条件はそろいません。
また、基本的に労働環境を悪化させるような内容は公に悪影響があるため、労使慣行と認められない事が多いです。
備考
労使慣行は労働慣行とも呼ばれています。