シュレディンガーの猫は事象を確認するまでは予想に過ぎず、確認する事で事象は確定するという理論の例です。
シュレディンガーの猫は量子力学における思考実験です。
この思考実験のポイントは猫の生死が確認されるまでは、「猫の生存」と「猫の死亡」の可能性が同時に存在している事です。
限りなく0に近い確率でもそれは確定情報にならない事の例えとなっています。
実験内容の概要
- 蓋のある箱を用意して、その中に猫を入れます。
- 箱の中には猫のほかに毒ガスの発生装置を入れます。
- ガスを吸った時猫は高確率で死にます。
- 毒ガスの発生装置が起動しない場合猫は生存しています。
- 蓋を開けるまで猫の生存は確定されません。
毒ガスが発生した場合、箱をあけるまでの時間が長くなるにつれ生存確率が低下していきます。
毒ガスが出たと同時に箱を開けた場合の生存確率は高いと思います。
毒ガスが発生しない場合、猫は生存している可能性が高いです。
しかし、これは憶測でしかなく箱を開けるまでは猫の生存確認ができません。
量子論から考えるシュレディンガーの猫
近代物理学には疑問点が多いため様々な解釈が存在しますし、特にミクロな世界では私たちの直感とは異なった事も起こり常識が通じません。
例えば
「1つの電子でも複数の場所に同時に存在する事ができる」という話は直感的には信じられないと思います。
これを一般的に考えてしまうと、1人の人間が複数の場所に同時に存在する事ができるように思えてしまうような現象です。
※ドッペルゲンガーのようなイメージです。
このような現象はマクロな世界ではとても信じられませんが、ミクロな世界では常識となっています。
他にも、ミクロな世界では物質が壁を通り抜ける事ができる「トンネル効果」と言われる現象もあります。
更に、直進しかしないはずの粒子が波のような動きを見せる事も二重スリット実験(光の粒子が隙間を通り抜けて波のような動きをする事が観測されています)によって証明されています。
また、光を単純な波だと考えると光電効果(金属に光を当てると金属の中から電子が飛び出す現象)の説明がつきません。
※有名なアルベルト・アインシュタインは光電効果の研究でノーベル賞を取りました。
そのため、光は「粒子性と波動性」の二重性を持つと考えられていますが、マクロな世界でこのような物質は存在しないためイメージする事は難しいと思います。
そして、電子も粒子性と波動性の二重性を持っていますが、観測すると粒子としてしか確認する事はできません(観測する事で波が収縮する)し、どこに存在するかは確率的にしかわからないためため100%の予測はできません。
このような「確率解釈」と「波の収縮」を合わせた考え方はコペンハーゲン解釈と呼ばれています。
そして、コペンハーゲン解釈などの標準的な解釈では「物質は複数の場所に同時に存在するが、観測が行われた時点で複数の状態の中から1つが選ばれ他の状態が消える」と考えます。
猫の実験の場合、「猫が生きている状態」が観測されれば「猫が死んだ状態が消える」と考える事ができます。
多世界解釈(並行世界やパラレルワールドのイメージです)の場合は「可能性の数だけ分岐した世界が存在する」という考えます。
猫の実験の場合、「猫が生きている世界」と「猫が死んでしまった世界」が別々に存在すると考える事ができます。
また、異なる解釈が存在するのは現代の量子論だけで説明するためには理論が不完全である事が原因であるため、人類がまだ知らない「かくれた変数」の存在があるのではないかという意見もあり、ラプラスの悪魔のように「ある特定の瞬間に全ての物質の状態を把握する事ができれば全てを計算する事で過去や未来について全て予測する事ができる。」と考える人もいます。
つまり、シュレディンガーの猫のように猫の生死を観測する事無く計算式だけで判断できる事になります。
まとめ
シュレディンガーの猫に限らず物事は観測するまでその結果はわかりません。
例えば、株式を購入して10年後に利益が出ると予想しても実際に確認するまでは結果がわかりません。
その過程では損失が出てしまう事もありますし最後まで利益がでない事もあります。
こまめに確認する事で中の状態の予測も大きく外れる事が少なくなります。
量子力学をマクロな世界に置き換えると投資で「利益がでた未来」と「損失がでた未来」が両方存在していて、たまたまどちらかの世界を経験するだけなのかもしれません。
そして、「必ず儲かる方法」は解明されていないため、どちらの未来になるのか正確に予測する事はできません。
しかし、もしも量子力学が発展し全ての事象を観測・計算する事ができるようになれば、過去や未来を全て知る事ができるようになります。
備考
シュレディンガーの猫はオーストラリアの物理学者、エルヴィン・シュレディンガーが発表しました。