偽薬効果(プラシーボ効果/プラセボ効果)とは
概要
偽薬(プラセボ)効果は「病気の症状に効果がない」と考えられている物質での治癒効果です。
日本ではプラセボ効果として広く認知されていると思いますが、基本的に「薬の成分として治癒する効果が含まれていないもの」でも人の思い込みによって実際に病気が緩和される事例が報告されています。
特に主観的な不快感や軽度の病気の改善などで体調にポジティブな変化をもたらせる効果が確認されています。
※実際に病気の改善へ影響しているという点は見逃せません。
効果の影響には大小があるものの、心理的影響を強く受ける人では薬の作用の30~40%は心理効果によってもたらされているといわれているほど大きな影響を与えていると考えられています。
そのため、治療法のない患者や副作用のリスクが高いなど、治療方法に問題(効果のある薬や治療法がなかったり、手術によって完全に切除する事が難しい場合など)のある患者に対して暗示効果を期待して医師免許を持った医者が処方する事もあるほどです。
※客観的測定可能な状態の改善として実際に数字として現れる事もあります。
また、慢性疾患などの精神状態に影響を受けやすい疾患ではかなりの効果が現れる事があります。
具体例
軽度の怪我や体調不良の時は実際の症状による影響よりも精神的な側面によってもたらされる不快感は大きくなる人が多いです。
そのため、特に小さい子供の場合は知らぬ間についた傷と、転んでできた傷が同程度でも「転んだ」という事実に基づいて付いた傷には過剰反応して大泣きをする事もよくあります。
しかし、実際にはそれほどの痛みがないため「お薬だよ」とそれっぽい形の痛み止め(実際にはラムネのようなお菓子)を飲んだ場合でも痛みが緩和される事も多いです。
また、実際に効果のある痛み止めを飲んだ場合でも、本来ならばその薬が作用するまでの時間は半日程度必要でも1時間程度で痛みが引いてしまう事もあります。
このような実際の治療効果とは異なった症状の緩和がみられるのは心理的な効果が大きく影響しているためです。
基本的に「痛み・不安・疲労・うつ」などの症状はプラセボ効果の影響がでやすいと考えられています。
そして、不思議な事に偽薬だと患者が知って服用しても効果が発揮される事があるそうです。
具体的には
- 鬱病(うつびょう)
- 偏頭痛
- 慢性腰痛
- がんによる疲労感
- アレルギー性鼻炎
- ADHD
- 過敏性腸
これらの症状に対する効果は確認されています。
また、癌(がん)などの病気を発症してしまい治療しても改善の見込みがないとされた患者が、医師のいう事を聞かずに独自の治療を行う事で完治した例や、実際にはなんの効果もない悪徳商法のような商品を購入してしまった事例でも、心の底から信じていると治療効果がもたらされると考えられています。
基本的に、薬学的根拠は示されていない一方で、過去の計測結果から偽薬効果は有効な治療法と考える医師も多いです。
その一方で実際に効果が確認されている薬剤投与を継続しても「効果がない」と思い込む事で症状の緩和や改善などの効果でない事もあります。
注意点
偽薬効果の影響によって臨床試験の結果に影響が出る事が予想されるので、それを区別する必要があります。
特に偽薬によって副作用(有害作用)が現れる(反偽薬効果、ノーシーボ効果などと呼ばれる)事があり、副作用があると信じ込む事によってより強く出現する事があるのではと心配されています。
また、実験を行う場合は本物の薬の効果を確かめるために比較対象として利用される事もあります。
まとめ
偽薬効果は薬の値段・医師のへの信頼度・病院の規模・周囲の雰囲気などお様々な要因が心理的影響を与える事で差が生じます。
※薬の色によっても与えやすい効果(赤:興奮、青:鎮静、白:鎮痛)が変わると考えられ(文化や人種などの環境で影響は異なるようです)ています。
また、外科手術の中には偽の手術(肌を切るだけで実際にはなにもしない)を行うと実際の手術を行った時と同じくらい効果がでる事(疼痛軽減)もあるようです。
特に外科手術は事前の打ち合わせや目に見える実績(傷跡)などの影響から「改善された」という思い込みが強くなる傾向があるようです。
※主観的な痛みなどが改善されても数値的な改善はでない可能性も高いので注意が必要です。
火傷も本人が自身の状態をどのように認識するかでその後の症状が異なる(軽度のやけどでも思い込みによって水ぶくれになるようです)といわれていますし、科学的に証明されていない現象は世の中にまだまだ多いです。
そして、プラセボ効果は医療だけではなくスポーツのパフォーマンスにも影響を与えると考えられていて、思い込みによって実際に足が速くなる事があるそうです。
備考
偽薬作用は薬理作用に基づかない薬物の治癒効果で、ヘンリー・ビッチャーが研究報告をして広く知られました。
偽薬はプラシーボやプラセボとも呼ばれるため、ブラシーボ効果やプラセボ効果とも呼ばれます。
偽薬を処方する事に対して賛否がありますがWHOは推奨していません。
また、プラセボ効果の反対の作用をしめすノセボ効果(本来はないはずの副作用を感じてしまう)もあります。