マキャベリズムとは
概要
マキャベリズム(マキャヴェリズム)は「目的を達成するためには手段を問わない」とする政治的思想です。
君主論では「人間は誰しも自己利益を追求しているのだから、君主も合理的に行動するべきだ」と説かれています。
しかし、実際問題として大きな組織になるほど合理性を追求しようとしても二律背反する事が多くなってしまうため、どの視点からどれだけ先を見て考えるのかで最適解は変わってしまう事が増えます。
広義の意味としては「効率が良いならば誠実性・倫理観・道徳心などが欠如していても目的のための手段は問わない」という思想です。
そのため、マキャベリズムは究極の合理主義の一つの形式であるとも考えられています。
マキャベリズムの基本的な思想として非道徳的な行為でも効率を優先させるため、多くの人が倫理的に善くないと考えている事でもマキャヴェリズムを支持するマキャベリストは実行に移そうとします。
具体的には
マキャベリストが「人をだましてお金を稼いだ方が効率がいい」と判断した場合、人を騙す事や貶める事に抵抗がないため、詐欺・悪徳商法・催眠術・洗脳・精神的に追い詰めるなどの行動に罪悪感はないですし、それどころかそのような行動を正当化しようとします。
このように目的のためには手段を選ばない傾向があるため犯罪者に比較的多く、人の弱みを握って利用したり他者を蹴落としたりするなどして目的を遂行しようとします。
※法的にも社会的にも罰せられるリスクがあるため、一部は抑制されていると思います。
基本的には組織の中では出世いやすい傾向がありますが、その反面多くのトラブルを抱えやすい傾向があるため、より有能な人に追放されてしまう事も多いですし、周囲からの反感が多くなると足元から揺らいでしまい出世してもその立場を維持できない傾向があります。
具体例
基本的にマキャベリズムを推奨する人は一般の人が倫理的・道徳的な背景から躊躇する選択肢でも即断してしまう事も多いです。
特にモラルジレンマのように、一般的には正解がないといわれる問題でも効率の良い方を選択します。
ここでは有名なトロッコ問題(トロリー問題)を例にあげます。
トロッコが走行中に車両トラブルでブレーキが利かなくなってしまいました。
線路の先には作業員が5名います。
このままでは5名の命が助かりません。
線路の切り替えスイッチによって行先を変更する事ができ、その先には作業員が1名います。
そのため、現在の線路上の5名を助けるためには、切り替え後の線路にいる1名の命を犠牲にしなくてはいけません。
※法的措置は受けないものとします。
- A. 線路を切りかえず、5名の命を犠牲にする。
- B. 線路を切りかえ、1名を犠牲に5名を助ける。
この状況では、マキャベリストは迷わずBを選択します。
まとめ
マキャベリズムは効率を重視しすぎる傾向が強いため、感情面で他者へと寄り添う事が苦手で、周囲からは異常者と思われる事が多いです。
しかし、会社のように利益を追求する組織ではマキャベリストのような効率を重要視する人は生産性が高かったり、自身の評価をあげるために様々な方法を取っている事も多いため、予想に反して昇進していく事も多いです。
※誠実で謙虚で人間的に尊敬できるような人が昇進しない事も多いのは、その組織が求めている要素が異なるためです。ただし、企業規模が大きくなると社会的な影響力も大きくなるため、道徳心が欠如しているような組織は避難され、最悪の場合は不買運動などに発展して倒産してしまう例もあります。
マキャベリストは遺伝という説もありますが、成長過程の環境が大きな要因にあるとするのが近年の主流です。
基本的に人は「自分の行動は正常である」と思っている事が多いです。
そして、マキャベリストの価値観は目的達成能力に偏っているため「目的を達成している人は有能である」という概念があります。
概ね正しいとは思いますが、その過程で非人道的な行動をしている可能性があるため、マキャベリズム的な思想がある人には注意が必要です。
このような人を治療するためには豊富な経験を持つ専門家の力が必要なため、個人で対処する事は難しいと考えられます。
備考
哲学者ニッコロ・マッキャベリの「君主論」で紹介されています。
また、精神科医のリチャード・クリスティーとフローレンス・ゲイスはマキャベリストは「愚かな人間はたくさんいて、その人たちを利用するべきで、利用しないのは間違っている」と考えていると分析しています。
心理学ではダークトライアドの特性(マキャベリズム、サイコパシー、ナルシシズム)に含まれています。
ダークトライアドは様々なところで見られますが、いずれも不安定で危険な心理傾向が強いです。