損失回避性(損失回避の法則/プロスペクト理論)とは
概要
損失回避性は「利益から得られる満足感」よりも「損失による不満感」を大きく評価する心理です。
※損失回避の法則やプロスペクト理論とも言われます。
簡単に言うと「利益が欲しい」と思う気持ちや実際に「利益が出た時」の感情よりも、「損失が怖い」と思う気持ちや実際に「損失が出た時」の感情の方が強いという事です。
つまり、人は基本的に失う事に対して強い嫌悪感を抱く傾向があります。
これは生き残るために遺伝的に継承してきた生存本能が働くためです。
自然界でなにかしらを失う(活動の成果が得られなくて時間を失ったり、食料を失ったりなど)という事は体力を多く消耗する要因となるため、生存確率に影響を与える重要な事で、幽霊や呪いなどの科学的に解明されていない不確実な理解できないものに対して恐怖を感じて避けようとするのも人類の生存戦略の一つです。
そのため、現状維持バイアス(現状維持をする事で失うリスクを回避できるのならば余計なリスクを避け現状維持に努めようとする心理)が発揮されるのは、体力を温存するために遺伝的に継承されてきた重要な生存戦略です。
具体例
実際に失う気持ちの方が強いものはたくさんありますが、現金を失う事を想像するとイメージがつきやすいと思います。
多とえば、1万円得る事よりも1万円失う事の方が精神的な苦痛を伴います。
実験では
- A 無条件で1万円得る。
- B コインを投げて表なら2万円得る。
このような選択肢があった場合、A(無条件で1万円得る)を選ぶ傾向が強いです。
先ほど選ばれなかったBと条件を少し変えたCの場合は
- B コインを投げて表なら2万円得る
- C コインを投げて表なら3万円得る、裏なら1万円失う
このような選択肢になるとBを選ぶ傾向が強くなります。
ここまではいずれも期待値が1万円になる例なので実際にはどの選択肢にも数字上の損得はありません。
- A
- 1万円を100%得られる
- 1万円×100%=1万円
- 1万円を100%得られる
- B
- 表なら2万円
- 裏なら0円
- (2万円+0円)×50%=1万円
- C
- 表なら3万円
- 裏なら-1万円
- (3万円-1万円)×50%=1万円
基本的には人はリスクを回避する心理が強いため、利益が大きくなっても確率が同じなら確実性の高い(リスクが少ない)選択肢をします。
しかし、ある一定の値を超えると損失回避性によって働く心理が有効ではなくなります。
※これには個人差や環境的な要因があります。
例えば、宝くじの期待値はいずれも掛け金の半分未満だと考えられているため、掛け金を失う可能性が非常に高いです。
しかし、上位当選は大きな利益を得られるため、損失の可能性よりも利益を優先する人は多いです。
まとめ
損失回避性はプロスペクト理論とも呼ばれていますが、プロスペクト(prospect)は展望・期待・見込みなどの意味を持つ英単語です。
つまり、私たちは無意識に将来の見通しを行い損失が発生するリスクを避けた行動をする傾向があります。
この損失は過去の経験や蓄積された知識から導かれるため、損失を回避するための行動も多種多様です。
例えば
ギャンブルは多くの人が「お金が減っていく」「当たってもあぶく銭」というイメージを持っているので「ギャンブルによって損する可能性」を考慮して避ける事が多いです。
しかし、ギャンブルにはまってしまう人の多くは過去にギャンブルで良い思いをした経験を持っている傾向があります。
そのため、ギャンブルにポジティブ(良い印象)な感情を持っているため、デメリットよりもメリットの方が多いと感じて積極的にギャンブルを行います。
これが重症化するとギャンブル依存症と言われ、トータルで見ると損失の方が大きいのに単発的な多幸感によって実態と気持ちが乖離してしまう状態になってしまいます。
基本的にはこのような状態になる人は少なく、損を避けようと考えていると次第にリスクを過大評価していく傾向がでてきます。
多くの人は「幽霊(オバケ・ゴースト)」「呪い」「伝承(言い伝え)」「暗いところ」などを怖いと思ったことがあると思います。
特に幼少期はこれらに対しての知識が少ないため、必要以上に怖いと思っていた人が多いと思います。
このような状態は新奇恐怖症(ネオフォビア)と言われ生存本能による影響が強く、論理的な正しい判断をしにくい状態になっています。
このように、人は失うリスクに対しての防衛本能があるため、研究によると失う事は得る事よりも大きく感情が動くそうです。
備考
損失回避性はダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーによって提唱されました。