パンデミック(汎発流行)とは
概要
パンデミックは感染症が世界的に大流行する現象です。
パンデミックは致死率や感染状況によって脅威の認識が大きく異なりますが、歴史的に大きな脅威として認識された感染症としては「天然痘・結核・ペスト・インフルエンザ・コロナウイルス感染症など」の多く事例が発生しています。
しかし、病気の分析はとても難しく、2009年にWHOは「新型インフルエンザH1N1亜型を全ての人類の脅威」と警告をしましたが、その後に弱毒性であることが発覚し、他の季節性インフルエンザと大差ないレベルで被害も小さかったです。
過去のパンデミックについて
今までに人類は何度もパンデミックを経験してきましたが、その度に様々な方法で乗り越えてきました。
近年、人に重大な感染症を起こすことが判明した「新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)」は世界的に流行しましたが、コロナウイルスの仲間(数十種類があります)は過去にも大きな感染症を起こしています。
- 2002年~2003年
- SARS(サーズ): severe acute respiratory syndrome(重症急性呼吸器症候群)
- 中国南部広東省で非定型性肺炎の患者を起源として、重症な非定型性肺炎が北半球のインド以東のアジアとカナダを中心に32の地域や国々へ拡大し世界的規模の集団発生となりました。
- 感染経路・病原性・不顕性感染の有無・病態生理・季節的流行の可能性などの不明な点が多いです。
- 潜伏期は平均5日ですが、多くは2〜10日でこれよりいも長い潜伏期の報告もまれにはあるようです。
- 症状としては「発熱・悪寒戦慄・筋肉痛など」が現れます。
※発熱歴が最も頻繁に 報告されていますが初期の検温ではみられないこともあります。
※約20%が集中治療を必要とし、急速に呼吸促迫と酸素飽和度の低下が進行してARDS(急性呼吸窮迫症候群)へ進行し死亡する例もあります。
- SARS(サーズ): severe acute respiratory syndrome(重症急性呼吸器症候群)
- 2012年~
- MERS(マーズ):Middle East Respiratory Syndrome(中東呼吸器症候群)
- 2019年までに報告された患者の多くは中東地域で、その大半がサウジアラビアで、
他にアラブ首長国連邦・カタール・オマーン・ヨルダン・クウェート・イエメンなどでも発生しています。 - 2015年には韓国で輸入例が発生して一時的に感染が拡大しました。
- 潜伏期は2~14日程度です。
- 症状としては「発熱、咳、息切れや呼吸困難など」が現れます。
※下痢などの消化器症状を伴うこともあります。
発症者で「高齢者・糖尿病・肺疾患・免疫不全状態など」の人は重症化しやすく重い肺炎や多臓器不全に至る事があり、患者のうち約35%が死亡しています。
- 2019年までに報告された患者の多くは中東地域で、その大半がサウジアラビアで、
- MERS(マーズ):Middle East Respiratory Syndrome(中東呼吸器症候群)
このように広い範囲で感染を拡大させてニュースとして取り上げられていました。
パンデミックが起こる背景
パンデミックは突然起こるわけではなく、パンデミックが起こるまでには過程があり、感染症の規模に応じて名称が異なります。
- エンデミック(地域流行):endemic
- 特定の狭い地域の限定されたエリアで感染者が比較的少なく感染の拡大スピードも遅い状態です。
※簡単に言うと小規模で限られた範囲での少数の感染者が見られます。
- 特定の狭い地域の限定されたエリアで感染者が比較的少なく感染の拡大スピードも遅い状態です。
- エピデミック(流行):epidemic
- 特定のコミュニティや地域で一時的に感染の規模が拡大している状態です。
※簡単に言うと小規模な限られた範囲で感染者が多い状態
- 特定のコミュニティや地域で一時的に感染の規模が拡大している状態です。
- アウトブレイク(感染爆発/感染症集団発生)
- 特定のコミュニティや地域で感染症が爆発的に増加し、感染の拡大が急激に起きている状態です。
※簡単に言うと限られた範囲での大多数が感染してる状態
- 特定のコミュニティや地域で感染症が爆発的に増加し、感染の拡大が急激に起きている状態です。
- パンデミック(汎発流行):pandemic
- 国境や大陸を超えて感染範囲が広まり世界中に感染者が多く、感染が世界的に流行している状態です。
※世界規模で感染が広まる事から世界的流行や世界流行とも呼ばれています。
- 国境や大陸を超えて感染範囲が広まり世界中に感染者が多く、感染が世界的に流行している状態です。
このように徐々に感染が広まっていきステージが移行していきます。
WHOではパンデミックの過程をさらに細分化し下記の6段階に分類しています。
フェーズ 1 | 人間を除く動物での感染が拡大している状態 |
フェーズ 2 | 人間への感染が確認され、被害の拡大が予想される状態 |
フェーズ 3 | 限定的(病院や施設など)に感染が拡大している状態 |
フェーズ 4 | 国レベルで感染が拡大している状態 |
フェーズ 5 | 二国間以上で感染が拡大している状態 ※多くの国に脅威が差し迫った状態 |
フェーズ 6 | 世界的に感染が拡大している状態 |
対応の仕方
パンデミックが起きない事が理想ですが、実際には完全に防ぐ事が困難であるため過去に何度も発生しています。
基本的には個人の努力の積み重ねが感染症の流行に左右するため、基本的な対応を知る事が重要です。
- 具体的な情報を集め(感染経路、感染源等)てその対策(隔離等)を決めます。
- 未発見の同一感染者(発症者や潜伏期間中の感染者など)の捜索をして適切な対応をします。
※スーパースプレッダーのような特異体質は特に注意が必要。 - 感染者の治療と共に隔離(感染経路に応じて方法が異なります)を行います。
- 感染場所の消毒を行う。
- 感染者と接触の可能性を考慮した対策(うがい、手洗い、マスク等)を行う。
- 人が多いところは避ける。
人間以外にもパンデミックは発生していて、原人ネアンデルタール人が絶滅した理由の仮説には感染症によるという説もあり、伝染病によって種の絶滅も起きる可能性があります。
また、家畜の感染を予防する法律には家畜伝染病予防法があり、家畜の場合は殺処分によって感染を防ぐ方法がとられる事もあり、畜産農家は農場の家畜を全て処分する事もあるため大きな被害を受けて経営を圧迫する事もありますが、そこまでしてでも感染を食い止めるという方法が取られるほど重大な問題だと認識されています。
また、人間と共に生きる動物は人獣共通感染症に分類される感染症によって感染が広まる可能性があります。
過去には、1990年代初頭からコートジボワールに住むチンパンジーやコンゴ共和国のゴリラなどがエボラ出血熱で個体数を激減させましたし、1999年ごろにアメリカで流行したウエストナイル熱は多くの鳥類の個体数をも減少させました。
反対に動物から人間へも感染し、過去には鳥インフルエンザは移動力が高い鳥によって広範囲の人間に感染してますし、ヒトコブラクダから発見されて重大な感染症を起こすことが判明したMERSコロナウイルスも該当します。
免疫を持つ人が少なかった感染症が変異し、効率的に感染者を増やす能力を得る事で二次感染・三次感染と次第に感染者が増加しパンデミックを起こします。
まとめ
現在は交通手段の発達によって短時間で長距離を移動する方法が増加しました。
そのため、感染者が潜伏期間内に移動する距離も増加した事で感染経路の特定は難しくなり、感染地域も拡大しやすくなったため早い段階での迅速かつ正確な対応が重要です。
しかし、パンデミックとなる前段階の小規模な感染状況の時に効果的な治療法が確立されなかったためパンデミックとなってしまっているため、個人で行える方法は限られてきます。
特に、チフスのメアリーのように、スーパースプレッダーの存在は脅威となり、感染源が知らない間に多くの感染者を増やしてしまう事もあります。
ウィルスは人が肉眼で確認する事が難しいため、個人の意識レベルでの対策がメインである事から、人々が必要とするときに信頼できる情報源と信頼できるガイダンスが世界的に求められています。
近年はインターネットが普及した事で情報の伝達速度が速くなりましたが、その一方で正確な情報と事実に反した誤情報が混在している状況となってしまう事は大きな問題だと認識されるようになっています。
中でもSNS(ソシャルネットワークサービス)のように不特定多数の人が匿名でコミュニケーションを行っている環境は実確認が難しいため情報の信ぴょう性について考える事が重要です。
備考
過去にパンデミックを起こした病気
- 黒死病(ペスト)
- 天然痘(てんねんとう)
- コレラ
- インフルエンザ(スペイン風邪、アジア風邪、香港風邪、新型インフルエンザ)
- 後天性免疫不完全症候群
- ブリオン病
- 高病原性鳥インフルエンザ
- SARS(重症急性呼吸器症候群)