ハロー効果(後光効果/ハローエラー)とは
概要
ハロー効果は初対面の相手に会う時などに特徴的な印象を過大に捉えてしまう心理作用です。
第一印象で受ける目立ちやすい特徴は強く印象に残りますが、この時に相手の不足している情報につていは想像で補ってしまう人の習性が影響して実態と異なった印象を与えてしまう事があります。
この影響は相手の情報を知らなかったり、印象が強くなるほど先入観も強くなるため事前情報が一切ない場合などは実際の人物像とは異なった印象を持ってしまう事も多いです。
この状態はイラストを使った伝言ゲームを想像してもらえればわかりやすいと思います。
「前の人の絵を元にイラストを描いて次の人に見せる」というシンプルな事を繰り返していくと最終的には元の絵を予想する事が困難になってしまう程変化しているため「最初の絵を当てる」のが困難である事も多く、事実を伝達するというシンプルな事でも難しさを痛感します。
このような事が起こる原因は、認知バイアスの影響を受けて特徴的な印象を抽出して過剰に意識してしまう事で顕著な特徴が過大に捉えられてしまいます。
これは噂話などにも該当し、特徴的な部分にフォーカスして広まってしまう事で、噂が出た頃は「~だろう」と推測する内容だったものが「~である」と確定情報に変化してしまう事も珍しくはありませんし、このような状態が進むと俗に言う「尾ひれがつく」と言われるように実際の情報と異なる内容が増えてくことも多いです。
ハロー効果の種類
ハロー効果は「良い印象」が強く協調されて印象に残る「ポジティブ・ハロー効果」と「悪い印象」が強く協調されて印象に残る「ネガティブ・ハロー効果」の真逆とも言えるような2種類の効果があります。
- ポジティブ・ハロー効果 (良い印象)
特徴的な印象の評価が高いと知らない他の情報の評価も高いと予想します。
具体的には
「筋トレが好きな人」に対してスポーツが得意だと錯覚してしまう事が多いです。
→実際は運動が苦手で泳げなかったり球技が苦手な事も多いですし、強い人に憧れてトレーニングをしているため筋肉があっても体の使い方が下手だったり小心者な人もいます。
※実態は個人によって異なります。 - ネガティブ・ハロー効果 (悪い印象)
特徴的な印象の評価が低いと知らない他の情報の評価も低いと予想します。
具体的には
「太っている人」に対して運動が苦手だと錯覚してしまう事が多いです。
→実際は若い頃は体を頻繁に動かしていたため運動神経が良くスポーツ全般はたいていできる(体重が重いので体力は続かない人が多いです)ものの、運動習慣がなくなったのに食べる量を減らせずに太ってしまった人は案外多いです。
このような実態とは異なった印象を与えてしまう心理効果ですが、実際にはどのような印象を受けるか・与えるかは個人の影響(知識・経験、プレゼン能力など)が大きいため、等身大の評価をする事はとて難しいと考えられています。
そのため、偏見などの元となる情報を知らないという前提で考える無知のベール(無知のヴェール)という考え方も必要になってきます。
広い視点からの合理的な分析がでてきずに主観的な要素のみで判断してしまうとコミュニケーションが上手に取れずに対人関係が悪化してしまう事もあります。
また、会社などの組織で人事を担当する人は特に注意しなければ優秀な人材に対して誤った過少評価を付けてしまう恐れがあり、最悪の場合は「優秀な人ばかり退社」して組織の活動に支障がでてしまう可能性もあるため注意する必要があります。
ハロー効果の具体例
ハロー効果の与える心理的な影響によって全く異なる判断や評価をしてしまう・されてしまう可能性があるので注意が必要です。
具体例の条件として下記の仮定をします。
- Aさん
有名大学までの教育を受けて高学歴の人材として大企業に正社員として勤める社会人になりました。 - Bさん
高校に入学して早々に中退してしまったため中学校までの教育しか受けずに中小企業にアルバイトとして勤める社会人になりました。 - 他の要素は全く知らないとします。
このような条件のA・Bさんを想像すると全く異なる印象になる人が多いと思います。
具体的には
- Aさんは博識で給料も多く仕事もできる印象を受ける人が多いと思います。
(ポジティブ・ハロー効果) - Bさんは定職に就かずに親元で暮らしてお世話になっている印象を受けるとします。
(ネガティブ・ハロー効果)
上記のように、事実がわからずに先入観で判断してしまうと歪んだ印象を持ってしまう可能性があります。
特に俗にいうイケメン・イケジョ(美男、美女など)がポジティブ・ハロー効果を受けやすい傾向があり、生涯年収などの具体的な数字としても影響がでるといわれています。
しかし、AさんとBさんの実態としては
- Aさん
過激な勤務で人並みの給料をもらって忙しなく働いている。 - Bさん
副収入がいくつもありアルバイトをしているのは世間体のためで、実際は俗に言うfire(ファイヤー)状態であり、不労所得だけで生活できる。
このように根拠のない印象は実態とは異なった先入観を与えてしまうため、誤解が生まれてしまう可能性があります。
このような心理が働くのは、人が文明社会を形成をする以前に自然環境の生態系の中で生き残るために物事を即断できる能力が必要だったためです。
自然環境は敵者生存(最適者生存)の世界で、生き残るために必要なのは環境への適応能力です。
どんなに強い生命体でも環境に適応できなければ淘汰されていくため、自然界では即断する能力が高かった個体が生存競争に勝ち続け生き残ってきたようです。
※剣歯虎(サーベルタイガー)などの生態系の頂点に君臨(現在はこのような言い方は正確ではないと考えられていますが、この表現の方がイメージしやすいと思います)していた生物でも環境に適応できずに淘汰されてしまいました。
このような生存者バイアスが働いていた事から即断する能力が高い遺伝子が脈々と現代まで受け継がれてきたようです。
ハロー効果の克服
ハロー効果は事実と異なった印象になってしまうため、影響を強く受けてしまう人は克服して先入観を防ぐ対策を行った方が良いと思います。
具体的な対策として
- 事実的な評価から他の評価を想像しないようにする。
- 一つの行動から得られる評価は事実的な評価一つにする。
- 数字などを意識し客観的事実を元に評価基準を設けて評価する。
このような要素に気を配る事で対策となりますが、基本的に感情と評価は別に考え客観的な視点で捉えなくては現実的な評価との差が生まれてしまいます。
サンプルとして
- Aさん
やる気のない雰囲気で淡々と仕事をして定時に帰宅する社員
このような人がいる場合ですが、ハロー効果を受けてしまう人の気持ちは
- やる気のない雰囲気だから仕事もできないだろう
- 淡々と仕事をしてるのだから周りとかかわりたくないのだろう
- 定時で帰っているから大した仕事をしていないだろう
このような「だろう」を主軸とした先入観が生まれます。
ハロー効果を克服するためのポイントとして
- やる気のない雰囲気
→受信者側の主観なのでよくありません。 - 淡々と仕事をしている
→なぜ淡々と仕事をしているのかを確認してください。 - 定時に帰宅
→仕事の進捗具合を算出してください。
このように感情的な評価と実際の内容の差異がないのかを確認する事が大切になります。
実際のAさんは下記のような社員かもしれません。
- 仕事の効率がとても良い社員さん。
- 仕事量が多く、周りを気にする余裕はありません。
- 親や子供の世話をするため早く帰宅しなければいけません。
- 仕事量が多いのに家に帰れば家事等を毎日しているため疲労困憊で出社してしまいます。
このように最初の先入観とは異なった見え方になる可能性もあり、ハロー効果を受けた評価のAさんと、実際のAさんでは印象がまったく異なります。
まとめ
ハロー効果は私たちの祖先が自然界で生き抜くために身に着けた重要な能力であると考えられています。
自然界では物事を即断する能力は生存に有利に働いたと考えられていて、その遺伝子が脈々と継承されて現代まで残っていると考えられています。
しかし、現代社会では表面的な情報に騙されない冷静な判断が必要な事も多く、時には人の評価を大きく左右して一生を左右するほど重大な影響を与えます。
特に多くの人は初頭効果(最初の印象を大きく受ける)の影響が大きくなりがちで、一度ついてしまった印象はアンカリング効果(その後の評価基準の参考となってしまう心理)の影響を受けてしまうためこのような心理効果に惑わされない様にすることはとても難しいです。
特に評価を180度変えるためには大きなインパクトが必要になります。
既存の評価を覆すためにはコペルニクス的転回(コペ転/パラダイムシフト)でも知られるように、今まで常識だと考えられている事を見つめおす必要があるため「おかしい事がわかない」という状態から始まります。
例えば
いつも残業をする社員がいるとして「残業するのが当たり前」の組織と「なぜ残業をするのか」について調査をする組織がある場合、前者の組織は正しい評価をできていない可能性があります。
残業している社員の実態は「仕事が忙しい」わけではなく「日中さぼっているため仕事が終わらない」という可能性や「残業代が欲しいから残業している」という状態である事も多いです。
しかし、基本的に一貫性の法則(一貫性の原理)(継続したいと思う心理)が働くため、誰も現状を変えたくないため事実確認は行われずに改善される事がない組織が大半です。
そして、このような事が組織全体の風習として広まると問題提起する人すらいなくなり組織は弱体化していき気がつくと組織の再編ができない状況になっていて倒産してしまう事も多いです。
このように、ハロー効果の影響は正しい評価をする際の障壁になってしまうため惑わされないように気を付ける必要があります。
備考
ハロー効果は心理学者エドワード・ソーンダイクが1920年に書いた論文「A Constant Error in Psychological Ratings」で初めて使われ「後光効果」や「ハローエラー」と呼ばれる事もあります。