ナルコレプシーは強烈な眠気が繰り返し起こる病気です。
ナルコレプシーの眠気は睡眠時間を十分に確保していても昼夜を問わずに繰り返されてしまいます。
そして、この眠気は自身で制御できない程の強烈な眠気ですが、時や場所を選ばずに前触れもなく起こってしまうため、危険な作業などを行う事は難しくなってしまうため、行動が制限されてしまう厄介な病気です。
また、病気である事を知らない周囲の人からは「仕事に集中できていない」「やる気がない」などと誤解を招く事も多いため、居眠り病といわれてしまう事もあり、身体的な問題だけではなく精神的な問題を抱え不安障害や鬱病(うつびょう)のような状態となってしまう人もいる病気です。
ナルコレプシーについて
ナルコレプシーは過眠症の代表的な病気で、日本人では600人に1人程度だと考えられています。
米国や欧州では2000人に1人程度(判断基準が異なったり、周知が進んでいない可能性もあります。)だと考えられているため、日本人はナルコレプシーの患者が多い傾向があります。
男女の違いによる発症率の影響はないようですが、若年者が発症する事が多い傾向(ナルコレプシーの症状は10代~20代で現れる事が多く、その後も生涯続きます)があります。
また、一卵性双生児でどちらかがナルコレプシーの場合、もう一方もナルコレプシーとなる事があるため、遺伝的な要因も影響していると考えられています。
ナルコレプシーの病気自体が健康状態に重篤な悪影響を与える事は確認されていませんが、危険な作業中でも意識がなくなってしまう可能性があるため、事故のリスクがとても大きくなります。
現在の医療技術ではナルコレプシーを完治させることはできないため、生涯にわたり病気と付き合う必要(ナルコレプシーの種類によっては症状が出なくなる可能性も有り)がありますが、ナルコレプシー自体が余命へ影響(事故を除く)を与える事はありません。
また、医療技術の発展によって治療法が発見(原因が特定されていない段階であるため、数年以内に治療法が見つかる可能性は低いですが、余命に影響を与えない病気であるため、生きている間に治療法が発見される可能性があります)され、病気が治癒する可能性もあります。
ナルコレプシーの原因
ナルコレプシーは1型と2型に大きく分けられていますが、睡眠時の検査結果は同じになります。
1型と2型の判断基準として情動脱力発作(激しく笑ったり怒ったりなど、感情が大きく振れた時に倒れる)の有無がわかりやすい違いです。
ナルコレプシーの原因は完全には解明されていないませんが、レム睡眠とノンレム睡眠に影響を与えたり、覚醒状態と睡眠状態の切り替わりに影響を与えたりと睡眠サイクルに問題を引き起こす事は周知されています。
ナルコレプシーは若年者が発症する事が多いですが、A郡連鎖球菌咽喉炎やインフルエンザや冬季の感染症が自己免疫に影響する事で数か月後にナルコレプシーとなる可能性もあります。
※ナルコレプシー1型は免疫機能の不具合が原因だと考えられています。
ナルコレプシー1型
主な症状:睡眠発作、情動脱力発作
原因:脳脊髄液の中のオレキシンの量が過度に少ない
神経細胞のオレキシン(別名ヒポクレチン)を受け取る受容体があり、結合する事で覚醒状態を維持しています。
しかし、ナルコレプシー1型の場合は視床下部でオレキシンが極めて少ない(オレキシンを作り出す神経細胞のヒポクレチン・ニューロンやオレキシン・ニューロンの働きに問題があり、寝ている間に自分の体を攻撃している可能性が高いと考えられています。しかし、オレキシンが生成されていない、もしくは生成量が少ない可能性もあります。)ため、覚醒状態の維持が困難になっています。
※現段階ではオレキシンを生成できるように治療する事はできませんし、免疫機能を抑制する事もできませんが、技術が発達する事で改善の可能性が高いです。
ナルコレプシー2型
主な症状:睡眠発作 ※情動脱力発作がない
原因:不明
脳脊髄液の中のオレキシンの量が正常のため、ナルコレプシー1型とは原因が異なる事が予想されていますが、睡眠時の検査結果が同じであるため、ナルコレプシー1型とは全く異なる性質の病気ではるものの、その症状が同じだけである可能性もあります。
原因が判明していないので化学が進歩しても治療方法がわからない可能性がある反面、ナルコレプシーの症状が自然となくなる人もいます。
ナルコレプシーの症状
ナルコレプシーの患者は共通して睡眠発作(十分な睡眠時間を確保しているにもかかわず強烈な眠気に襲われ、時間や場所を問わずにねてしまいます)があるため、自分の意思で睡眠がコントロールできません。
ナルコレプシーの判断基準として、3ヶ月のうちに最低でも3回以上の我慢できない眠気に襲われて眠り込んでしまう事がある人が該当します。
常に眠気がある人が多く、運転や機械の操作などの危険な作業をしている最中でも突発的に寝てしまうため、危険な作業は禁止されます。
このほかにも「情動脱力発作(カタプレキシー)」「入眠時幻覚」「睡眠麻痺」「自動症」「ナルコレプトイド性格変化」などの症状がみられる事もあります。
※全ての症状が現れる人は全体の10%程度に留まり、多くの場合はいくつかの症状に該当している状態となります。
しかし、日中の眠気(EDS:Excessive Daytime Sleepiness)はナルコレプシーの人全てに共通しています。
症名 | 症状 |
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情動脱力発作(カタプレキシー) | 感情が大きく変化した時(激しく笑う・怒るなど)に体の力が抜けて倒れたり、頭がくらくらしてしまいます。 |
硬直症(カタレプシー) | 体が硬直してしまい、同じ姿勢を維持して変えない状態です。 |
入眠時幻覚 | 通常の夢よりもクオリティの高い夢を見る事で、夢と現実の区別がつかなくなってしまいます。 |
睡眠麻痺 | 頭は起きていて意識があるのに体が起きていないため、体に力が入らずに動けません。 |
自動症 | 無意識のうちに体が動く現象で、軽いものは癖や習慣と呼ばれますが、重症な場合は意識がないまま歩き回る事もあります。 |
ナルコレプトイド性格変化 | ナルコレプシーの影響(罪悪感や自己否定感など)によって性格が変化していく状態です。 |
ナルコレプシーの眠りは5分~15分、長くても30分以内である事が多いため、急に寝て急に目覚めるイメージです。
寝ている時間が短く、起きてからも記憶の流れが継続している(寝る前の作業にスムーズにはいれる)ため、意識がなくなっていた事に気が付かない事もあるようです。
しかし、周囲の人からは寝ていたのがわかるため、本人は寝ていた自覚がなくても周囲から注意される事もあります。
そして、入眠時幻覚が加わると夢の内容と現実の内容の区別がつかなくなってしまうようです。
具体的には、だれもナルコレプシーについての悪口を言っていないにも関わらず、周囲の人から悪口を言われている幻覚が鮮明に頭に残る事で、夢と現実の区別がつかなくなっていきます。
そして、このような事が継続して続くとナルコレプトイド性格変化(ナルコレプシーの影響によって性格が変化してしまう)が起きてしまいます。
また、この幻覚を見ている間は意識がない状態にもかかわらず、体は作業を継続して行っている(自動症)事もあるため、危険な作業を一人でやる事は避けたほうが良いです。
まとめ
ナルコレプシーは睡眠の病気で、寝てしまうだけのシンプルな病気だと思われがちです。
この病気によって寿命に変化を与える事もないため、ナルコレプシーでない人からすると「大した病気ではない」と思われる事も多いですが、自分の意識をコントロールできない状態で生活する事はとても困難です。
例えば、一晩寝ないで活動していると、睡眠を取らないと危ないと考える事があると思います。
ナルコレプシーの人はこのようなリスクを常に抱えて生活しています。
しかし、ナルコレプシーが疑われても実際には睡眠負債が蓄積していただけであったり、睡眠時無呼吸症候群(SAS)などの影響である可能性や、単純な睡眠時間の不足が原因である事もあります。
また、ナルコレプシーに似た症状で突発性過眠症がありますが、検査でしか違いがわからないため、病院でしっかりと診断してもらうほうが良いです。
ナルコレプシーは覚醒状態と睡眠状態が安定せずに切り替えが頻繁に起きてしまう事で常に眠気がある人が多いです。
また、通常の睡眠では入眠後はノンレム睡眠へ移行しますが、ナルコレプシーはレム睡眠へと移行するため、身体機能が制限されてしまう事もあり危険です。
そのため、寝すぎなナルコレプシーですが対処法として、睡眠時間を多く確保(基本的な睡眠時間は8時間以上で、ロングスリーパーに分類されるような人は更に長く睡眠時間が必要です)したり、仮眠を取ることが有効である人もいます。
ナルコレプシーは一般的には投薬(モダフィニル、メチルフェニデート、ペモニンなど)を行い覚醒状態を維持させることが多いです。
※ナルコオレプシーの治療薬の中には覚せい剤取締法の対象となっているメタンフェタミンなども含まれています。
ナルコレプトイドの人は抗うつ剤なども処方される事があるようです。
一般生活で気を付ける必要がある対象として、車の運転や湯船などは特に注意が必要(避ける事が望ましい)です。