テセウスのパラドックス(テセウスの船)とは
概要
「テセウスのパラドックス」は”テセウス”という名の船が老朽化などの要因によって部品を徐々に交換していき、やがて全ての部品が交換し終えた状態になると”元の船の部品”が全て新しい部品と入れ替わってしまっていますが、この状態でも「”テセウスの船”であるか?」そうでない場合は”どこから”別の船に変わるのかというパラドックスです。
船などの大きな人工物は長期間使う事が多いため部品が壊れてしまっても修繕して使用する事が多いため一部の部品を交換したり時には骨格部分に手を加えて大規模な修繕を行ってでも継続して使用する事が多いです。
このような工程が継続する事で次第に最初に付随していた部品が減少していきます。
その結果、最終的には元の部品がなくなり全て新しい部品で構成された船となります。
このパラドックスでは「全ての部品が入れ替わった”テセウスの船”は元の船と同じと考えてもよいのか?」という疑問についてのパラドックスです。
具体例
現代の船は制作された際に番号を登録して管理されてしまうためテセウスの船のような状況にならないように対策されています。
また、船を所有している人は少ないと思いますし身近ではない人が多いと思うのでここではイメージしやすいうように目にすることが多い自動車を具体例にあげたいと思います。
基本的に路上を走っている車にはナンバープレートがありますし部品を交換しても登録された表記が変更される事はありません。
しかし、車を長期間使用しているとタイヤなどの消耗する部品などから徐々に交換が進んでいきます。
事故に遭遇してしまったらドアを交換する事もあると思いますし長期間使用していれば経年劣化による部品交換も増えていきます。
このように使用する期間が長くなるほど交換される部品の割合が増加していきやがては最初に使われていた部品がなくなります。
※ナンバープレートも新しく発行(表記は変わりません)できます。
そして、最初に使われていた部品が全て新しい部品へと交換された場合でも登録されている情報は更新されていくだけで新しい車両として再登録される事なく情報が継続されて残ります。
※事故履歴や所有者情報などが記録されている事もあります。
このように全ての部品が新しくなっても書類上は制作された時と同じ車体として取り扱われますが実際には初めの車両と同じであると表現して良いのかは疑問です。
また、分品を全て新しく交換した場合「新しい車」と「古い車の部品」が1セットずつの合計2セット存在する事になるため車の部品は全て合わせると二台分以上あります。
つまり、全ての部品を使うと同じ車が2台できてしまう事になります。
※実際に車の部品を交換していく場合はフレームに割り振られた番号とナンバーが紐図いているため自動車ではテセウスのパラドックスは起こりません。
まとめ
テセウスの船をもっとシンプルにしたものに「おじいさんの古い斧」というのがあります。
おじさんの斧は長年使っているため持ち手や刃や金具も交換してあるため元の部品はありませんがおじいさんが使う斧はいつまでも古いままです。
この斧について「いつ買ったのか」と尋ねるとおじいさんは初めて買った日を答えます。
このように定義が曖昧なものは個人の価値観によって定義が変わってしまうため正確に意思疎通を行う事はとても難しいです。
また砂山のパラドックスのように一つ一つ取り除いていくとどこまで元の船と呼べるのかという日本語の定義の曖昧さによる影響も強くでます。