セルフ・ネグレクト(自己放任)とは
概要
セルフ・ネグレクトは生活環境や栄養状態に対して無頓着になる状態です。
セルフ・ネグレクトは自己放任とも呼ばれ、自己(自分)の世話を放任(ほったらかしてしまう事)してしまうのが最大の特徴で「ゴミ捨てをサボる」「ご飯を抜く」「洗濯をしない」などの軽微な段階から始まり、徐々に身の回りで生活に必要な事をしなくなっていきます。
具体的には
一人で暮らしで「引き籠っている」ような状態なのに家の中は俗に言う「汚部屋」状態で、時間があって連絡はいつでも返せるはずなのに「音信不通」で親戚や深い関係の友人と稀にしかコミュニケーションを取らない。
このような状況になっても「なにもする気力がない」ため「改善する気力がない」「助けを求めない」などの状態なため、周囲の人が気がつかないままでいると「ゴミに埋もれて死んでしまう」という事態になる危険があります。
※症状が悪化すると人間関係が希薄になったり欲求も減少していくようです。
健康被害について
セルフ・ネグレクトは意欲や能力の低下によって健全な生活を維持する気力を失ってしまい徐々に普通の生活が遅れなくなっていきます。
そして、そのまま生活環境が悪化し続けると栄養バランスを考えない食生活によって身体の栄養状況が悪化していきますし、劣悪な衛生環境が体調不良を促進させ心身の安全や健康が脅かされます。
常識的に考えたら起こらない病気やケガもなどの健康被害が発生します。
具体的には
大きなゴミから小さなゴミまで部屋中に散乱していて巻き上げられたホコリや粉塵を吸い込むことで病気になったり、足の踏み場がないほどに散らかっているうえに鋭利なガラスの破片などが落ちているため踏んだり擦ったりして怪我をします。
特に劣悪な環境ではゴミが雪崩のように降ってくることから埋もれて窒息死の危険を感じる事もあるそうです。
そして、最悪の場合は「ゴミ屋敷で孤独死」となってしまいます。
セルフ・ネグレクトの具体例
セルフ・ネグレクトは「物が捨てられない」「だらしない」などの性格ではなく、精神的・肉体的な影響(近親者との死別や恋人との別れたショックなど)によって自分の生活が満足にできない状況です。
そのため、生活環境を整える能力が低い人がゴミを貯めてしまうなどは該当しません。
多くの場合は精神疾患や認知症の傾向があるようで、症状に無自覚な事も多いので周囲が気がつき適切な処置を施す事が望ましいです。
セルフ・ネグレクトになると日常的に行っていたことを行わなくなってしまい、生活に問題が起こるような生活環境になります。
- 社会的な活動を行わなくなる
仕事に行かなくなる
連絡が通じない - 衛生環境を気にしなくなる
服を着替えない
お風呂に入らなくなる
ゴミを捨てなくなる - コミュニケーションを行わなくなる
友人からの誘いを断る
人付き合いが嫌い - 病気を放置する
通院や服薬を中断・拒否する
このような特徴がありますが、セルフネグレクトの原因には様々なものがあり
- 身体機能の低下
事故や加齢によって筋力や視力の低下して自暴自棄になってしまう。 - 判断力の低下
精神的なショックや依存症などの病気、認知症などによって十分な判断能力がなくなってしまう。 - 経済的貧困
お金の管理ができない、年金の不足・失業・離婚などの影響で収入が足りなくなり追い詰められてしまう。 - 社会的孤立
近親者との死別・退職・失業・離婚・いじめなどの影響から社会から孤立してしまう。
理由は人によって様々ですが、いずれにしても早期に対策ができないで悪循環に陥ってしまうと自らの努力では負のループから抜け出せなくなってしまうため一人暮らしの人は特に注意が必要です。
セルフネグレクトになりやすい人
セルフ・ネグレクトは年齢や性別に関係なく起こり、若者や高齢者など世代を問いません。
セルフネグレクトは配偶者や家族の死、恋人との別れ、人間関係による原因のほかに、離婚や失業などの環境的な変化、脳障害などの身体的原因によって過度なストレスが溜まりセルフネグレクトになる事が多いです。
また、セルフ・ネグレクトになりやすい環境は孤立しやすい環境です。
そのため、セルフ・ネグレクトにならないようにするためには、孤立しないように注意する事が重要です。
- 一人暮らし
他者からの干渉が減るため、生活環境が乱れやすく、りコミュニケーションも減りやすいので注意が必要です。 - 人付き合いが嫌い
人付き合いが嫌いな人はコミュニケーションを取る機会をなるべく減らそうとします。
そのため、困った時に相談できる相手も限られてしまうため、精神的負担が大きくなりやすいので注意が必要です。 - 近所に家族・友人・恋人などがいない
大人になると自立した生活をするようになるため、学生時代の様に遊べるような環境の人は少ないと思います。
地元から離れ遠方の知らない土地で働く人もいると思います。
このような人は頼れる人が身近にいないため、一人で問題を抱え込んでしまう可能性が高いので注意が必要です。 - 30~40代の人
就職氷河期の非正規社員の割合が多いです。
そのため、非正規で収入も少ないため、自尊心が低かったり、職場での付き合いが少ない人が多いため注意が必要です。 - 持病がある
精神疾患や脳疾患などの病気や、薬の副作用などによって記憶力や判断能力が低下しているため、生活環境に配慮する事が難しい人も多いため注意が必要です。
セルフ・ネグレクトから一人で立ち直るのは困難です。
セルフ・ネグレクトから立ち直る人は、それまでの人生で構築した人間関係によって救われる人が多いため、どのような関係を形成できていたかが明暗を分ける事も多いです。
まとめ
セルフ・ネグレクトは生活を維持するために必要であることを投げ出してしまうため、住居はゴミ屋敷のようになってしまうことも多いです。
そして、そのようになった家屋は周囲の人は不安視する事が多く、地方自治体が動く事もあります。
環境が良くないエリアがある場合は割れ窓理論によって、その周辺の治安が悪くなる可能性があるため、ゴミが溜まっている場所を放置する事は周囲の公衆衛生へも影響を与えるため、早い段階で環境を改善する必要があります。
このように、重症化したセルフ・ネグレクトは自分への影響に留まらず、大きな影響を与えます。
しかし、セルフ・ネグレクトはなりたくてなるわけではありません。
その背景には、それまでの生活で孤立してしまうような背景があるため、そうならないように信頼できる人を見つける事は大切です。
備考
精神的に健全な状態でも自らの意志でセルフネグレクトと同じような環境に身を置く人もいます。
そのような人はセルフ・ネグレクトからは除外して考えられていますが、線引きが難しいです。