クオリアとは
概要
クオリアは感覚・意識やそれにともなう経験などを表現するために使われる言葉です。
基本的にクオリアの具体的なメカニズムはわかっていない事から、脳の活動でクオリアを生み出す場合と生み出さない場合の差もわかっていません。
そのため、抽象的な概念として感覚的な体験に伴って生じる認識のようなものと考えられていて、なんらかの脳活動によって生み出されていると考えられています。
哲学者は長くクオリアについて論じてきましたが「クオリア」という概念自体に意味があるのかという段階から意見がわかれています。
クオリアには狭義での意味や広義での意味があるため、論じる時には両者の意思疎通がしっかりとできているのかが重要になります。
クオリアの意味
狭義での意味のクオリア
短期的な意識経験のうちの一つの感覚的な側面を示します。
具体的には
視覚から得られる情報などの感覚器官を1つに限定し、そのうえで条件を更に定義します。
例えば
青信号から赤信号へ変わる過程を見ている人は途中で表示される「黄信号の明滅を見ている」という事象に関しての同じ経験しているはずです。
このような限定的な条件下で得られる狭い視点での判断が狭義のクオリアに該当し、限られた事象に収める事で研究が行いやすいため脳科学的な研究が進んでいます。
広義での意味のクオリア
広義でのクオリアは狭義でのクオリアにあった条件定義をなくして範囲を広くするため「経験するすべての感覚や非感覚的経験」を含むものとなります。
広義になると一瞬の経験や過去の事象なども検討の範囲とするため、再現することができない事から科学的な研究はとても難しいです。
そのため、哲学的分野での論点として着目されるにとどまっています。
様々なクオリア
感覚による体験は人間の感じる事の出来る全ての要素に影響されると考えられています。
基本的に人は5感から得られる刺激を脳が認識して判断しています。
そのため、クオリアは5つの要素が複雑に絡み合って成り立っていると思います。
- 視覚体験
- 聴覚体験
- 触覚体験
- 嗅覚体験
- 味覚体験
これらの感覚器官から得られた情報は完全に一致する事は基本的にありません。
例え同じ状況で同じような体験をしても脳が情報を処理する時は過去の記憶などから「注目する場所」「対処方法」「経験値」などの影響を受けて、それぞれ異なった認識になる事が多いです。
具体的には
たくさん人がいる場所でみんなが同じ服装でいる場合「誰もが適切だと感じる温度」に調整する事はとても難しかったりします。
これは体型や活動量などの違いによってそれぞれの感じ方には差があるためです。
他にも、料理は知識や経験の影響が出やすいとおもいます。
しかし、このような差が生じる原因は外部からの刺激を処理している脳内で発生する差であるため、クオリアについての研究を進める事はとても難しいです。
「心頭滅却すれば火もまた涼し」と言われるように感じ方には大きな差がでますし、実際に偽薬効果(プラシーボ効果/プラセボ効果)では思い込みによって健康状態の改善がみられると考えられています。
他にも「視覚からの影響を強く受ける人」や「聴覚の影響を強く受ける人」など、どの影響をどの程度受けるのかも異なるため研究に課題は大きいようです。
クオリアの具体例
クオリアによる違いは価値観や感じ方の違いとして現れます。
経験した事のない感覚は相手へ伝えようとしても難しいです。
私たちの見ている色もその一つで、有名な思考実験にメアリーの部屋があります。
メアリーの部屋(スーパー科学者メアリー/一人ぼっちのメアリー)は「色に関する全ての知識がある状態にもかかわらずモノクロの中しか経験した事がない人が、カラフルな世界を実際に目にした時に得る物はないのか?」という思考実験です。
具体的には
- 白と黒しかない部屋で生まれたメアリーはその部屋から一歩も外に出ることなく色を経験しないで育ちます。
- メアリーは白黒の本を読んで様々な知識を身に着けていきますが成長過程で色を経験する事はありません。
- 色に関する情報は十分に与えられるため知識として知らない事がない状態まで学ぶとします。
このように白と黒の部屋で育ち色を経験した事がないメアリーは色彩豊かな環境で色を経験する事で新たに学ぶことがあるのかという実験です。
全ての知識を持っていても実際に経験する事で得る物があると思う人も、得る物はないと思う人もいて意見が分かれています。
そして、外に出る事でメアリーに新しい学びがあるとしたら、それは経験する事で得られたクオリアが影響していると推測されます。
まとめ
同じ事象を経験してもその過程で経験した事によって感じ方が異なりますし、まったく同じ状況を同じタイミングで目にしても着眼点や感じ方は人それぞれ異なるため同じ経験をする事は不可能に近いです。
また、仮にすぐ隣で見る景色でも厳密には異なった景色となるため同じ事象を経験すること自体できません。
この些細な差でも積み重なりは時間経過によりバタフライ効果の様に差が広がります。
また、クオリアを深く研究する事は人間を深く研究する事でもあるため未知の要素が多いです。
クオリアは様々な視点から多角的に分析されているものの、中にはクオリアの存在を否定する考えもあり解明する事は難しいようです。