中国語の部屋は思考実験の一種で、答えを導く事ができてもそれが理解に直結しないという考えです。
理解できていない事に対して、正しい解を導く事ができるのかを疑問に思う人もいると思います。
しかし、問に対する回答が知識としてあったり、リスト化されていれば理解できていなくとも正しい解を導く事ができます。
例えば、有名な研究結果・数学の理論・科学物質は理解していなくても解や性質を知っているものは多いと思います。
中にはほぼ間違いないと考えられていても証明がされていないものもあります。
- ウーツ鋼
- ABC予想
- 光速不変の原理
- 相対性理論(一般相対性理論、特殊相対性理論)
- ダマスカス鋼
- 反物質
- フェルマーの最終定理
- ブラックホール
- 粒子と波動の二重性
これらの有名な理論や物質を耳にし、概要(解)を知っている人は多いと思いますが、その内容を理解している人は大幅に減少します。
しかし、これらの情報を知らない人にとって、解を知る人は過程も理解していると考えやすい傾向があります。
中国語の部屋の概要
人が入っている小部屋があります。
そこに中国語の書かれた用紙を入れると、中からは中国語で書かれ返答がきます。
これを見た周囲の人は、小部屋の中にいる人は中国語を理解できていると認識します。
しかし、実際に小部屋の中にいる人は中国語を理解できていません。
小部屋の中には中国語がわからない人がいます。
その人は中国語を記号として認識し、特定の記号のパターンにはそれに対応する記号パターンを返す指示書に従って用紙に書き込んでいます。
例えば
- 你好→你好
- 谢谢→不用谢
- 天气 真 好 啊→真是
このように正しい回答を用意されています。
これを周囲の人は受け答えに問題がないので、小部屋の中の人は中国語を理解していると認識します。
実際の意味は
- 「こんにちは」→「こんにちは」
- 「ありがとう」→「どういたしまして」
- 「天気がいいですね」→「ほんとうですね」
このように、意味を理解していなくても、正しい解を知る事ができます。
日常的な例
中国語の部屋のような現象は日常的にも多いです。
そのため、他者の理解度は言葉だけではわかりません。
例えば、シンプルな料理の調理方法はわかりやすいため、説明できる人も多いと思います。
具体的には、厚焼き玉子の調理方法を尋ねられた場合は「卵を混ぜて焼く」と回答すれば周囲からは調理法をわかっていると認識されるはずです。
しかし、実際に調理を行うとうまくできない人も多いと思います。
そのため、上手くできるかどうか、美味しくできるかどうかが理解度の差になります。
まとめ
中国語の部屋はチューリング・テスト(人と機械の定義についての考え)をアレンジしたものです。
そのため、近年研究が進んでいるAI(人工知能)は中国語の部屋の原理にとても近いです。
AIは条件を満たした解を返しますが、それが理解していると考える人は少ないと思います。
しかし、その過程(機会が判断している)を知らない場合「正しい解を導ける=理解している」と認識してしまう傾向が強いです。
これは人でも同様で、メアリーの部屋(知識と理解は必ずしも一致しないのではないか?)がその代表的な考えです。
全ての知識を備えていても、それを感覚的に体感しなければその知識を理解できていない可能性も高く、クオリアのような未だに解明されていない現象があるのかもしれません。
しかし、箱の中のカブトムシように、周囲から見えるものと自分しか見えないものでは確認するとこは非常に困難であるため、解明する事は困難です。