
マルチタスクとは
概要
マルチタスクは複数の仕事を並列処理、または短期間に切り替えながら複数の処理をする事です。
マルチタスクの特性上、複数の処理を抱えている状態が続くため「仕事をしている感」が強くなり作業効率が上がる様に感じるかもしれませんが、基本的には作業効率が落ちてしまい生産性が低下してしまう事が多いです。

通常はシングルタスクの方が生産性が高いものの、空き時間が発生してしまう作業や、能力が高すぎて空き時間ができてしまう人はマルチタスクの方が生産性が高い場合もあります。
そのため、マルチタスクを行う事で作業効率が上がる条件としては待機時間を有効活用できるような状況に限られます。
マルチタスクの特徴
基本的に女性の脳は構造的にマルチタスクが得意であると言われています。
人の文明が今ほど発展していなかった当時、女性は他の女性や子供とコミュニケーションを取りながら採集活動をしていて、その名残が脈々と継承されて今も遺伝的に特徴が残っていると言われています。
※男性は狩猟をするために一点に集中する能力が高いと言われています。
これは科学的にも裏付けが進んでいて、脳内で作用している女性ホルモンが関係しているようで、マルチタスクには男女で明確な差が認められたそうです。
反対に、男性はシングルタスクが得意な傾向から、完璧主義の人も多い傾向があり「集中しているのを邪魔されたくない」と感じたり、イレギュラーによって想定外の要素が加わる事に対して強いストレスを受ける人も多いです。
マルチタスクの作業効率
人の脳はシングルタスク(一つの作業を集中して行う事)が基本となっているため、マルチタスクをするという事は実際にはシングルタスクを切り替えながら作業をしている状況です。
特に、職場のようなビジネスの場では複数の作業を同時に行わなければいけない機会も多いと思います。
具体的には
電話で話しながらメールの内容を確認したり、会議に参加しながら議事録を作成するなどは代表的だと言えます。
近年はパソコンが発達した影響で、データとして情報を残したりする機会も増えましたし、インターネットの発展によって通信手段も充実したため、携帯電話・タブレット端末・ノートパソコンなどを使って事務所以外の場所でも頻繁に情報がやり取りされています。
便利になった一方でそれを使いこなす能力も重要になり、年配の人が若者にデバイスの使い方を教えてもらうという光景もよく目にするようになりました。
このような環境で一つの事だけに集中して取り組む事が許される組織は減少傾向にあるため、シングルタスクしかできない人は「仕事ができない」という負のレッテルを貼られてしまう事も珍しくはないです。
マルチタスクの盲点
マルチタスクには大きな問題があり、2つの作業を同時進行した際の効率はそれぞれ半分の50%(合計で100%)になるわけではなく、切替頻度の増加の影響から生産性が大幅に低下(合計で80%程度で2割程低下するという考えもあります)すると考えられています。
それでも、実際にマルチタスクを行っている人の中には効率が良いように見える人もいると思います。
※新人の頃は上司や先輩が器用に仕事を処理しているのを見て「自分にもできるのかな」と不安になった経験を持つ人も多いと思います。
しかし、実際はその人のポテンシャルが高いからできる事で、本来の生産性よりも効率が落ちている状況でも高い生産性をキープできているだけです。
つまり、本来の実力を出し切っていない状態で能力が高く見えるほどの優れた能力を持っている証拠だと考えられます。
ところが、そのような同時に複数の処理ができる優秀な人材は突発的な依頼でも対応でき、上司や先輩から多くの仕事を任される傾向があるため、仕事量が偏って大きくなりやすい傾向があります。
基本的には優秀な社員にはそれに応じた報酬が支払われなくてはいけませんが、日本で広まった「年功序列」の弊害から能力のない上司や正しい評価を受けていない優秀な人材は多いです。
そして、優秀な人材が去る組織ではいくら採用数を増やしても「働き口に困らない若くて優秀な人材」は待遇に不満を抱くと転職してしまい、残るのは転職できないor報酬に見合うように手を抜く人材となってしまいます。
マルチタスクの具体例
マルチタスクを行う際には脳内で作業の切り替えを都度行っているため、切り替え頻度が多ければ多いほど余計なエネルギーを使います。
例えば
厨房で料理をしているプロの料理人を想像していただけるとイメージしやすいと思います。
料理を作る際には1品だけではなく効率よく他の品の工程も進める事ができますが、これは料理のプロである料理人の能力が高いからできる事です。
調理と調理の間の待機時間をうまく活用してスケジュールを組み各作業を効率よく行って生産性が高い状態でなければ成り立ちません。
しかし、素人が何品も同時に調理を行う場合は炒めすぎて焦げてしまう事もあり、生産性をあげようとして効率を下げる可能性もあります。
そのため、素人が使う家庭用コンロよりも調理場コンロの方がコンロの数が多く設置されていたり、最大火力が強いなどの特徴があります。
まとめ
マルチタスクを行っていると個々の進行状況が不明瞭になる一方で疲労感は通常よりも多く蓄積します。
そのため「たくさん働いた」「疲れた」「頑張った」と認識する事が多いですが、実際には生産性が低いの本人の主観的な成果と実際の成果が比例していない事が多いです。
特に「複数の処理を同時にした方が効率が良い」と思い込んでしまっているタイプの一部には、期限が重なると慌ただしくなっていき、最終的には「時間がないから」と周囲を巻き込んで大事にしてしまうトラブルメーカーもいます。
このような人の多くは「一つ一つの作業に集中して取り組んでいれば期日には余裕があったのでは?」と思う事も多いですが、本来ならば間に合う予定でもマルチタスクで処理にこだわりキャパを超えてしまい最終的には周囲の人に迷惑をかけるという結果になる残念な人も多いです。
※さぼっていて期日に間に合わないだけのやる気のない人も多いです。
しかし、その一方で実際には効率が悪いはずのマルチタスクでも、錯覚によってパフォーマンスが向上する事があるようです。
つまり、思い込みによって作業効率が上がっている状況(本人の集中力が向上している状態)です。
この状態を引き出すためには集中して作業を行う必要がある一方で、能力の限界を引き出している状況です。
例えば
「シングルタスクでAとBの合計100%の処理を行うのに能力の70%使ている状態」と「マルチタスクでAとBの合計100%の処理を行うのに能力の120%使っている状態」では同じだけの処理をするためにはマルチタスクの方が能力が必要になります。
そのため、同じ成果を出すためにはマルチタスクの方が集中して取り組む必要があり、シングルタスクで100%の能力を発揮できればそちらの方が作業効率は良いです。
しかし、マルチタスクができる人は基本的な能力が高い事が多く、処理能力を多少落としても一定の効率を保つ事ができるため、柔軟な対応と基本能力の高さから職場では重宝される事が多いです。
備考
マルチタスクは脳の切り替えによって効率を低下させますが、脳内の処理をつかさどる場所が完全に異なる場合は切り替えを行わなくても同時に処理できるようです。
そのため、音楽を聴きながら作業しても効率は落ちないと考えられています。
しかし、音楽の歌詞を理解しようとすると脳の切り替えが起きてしまうため、効率が低下してしまう可能性があります。