ヘンペルのパラドックスはカラスではないものの情報を集める事で、逆説的にカラスを証明するパラドックスです。
「AはBである」反対に「BでないならばAではない」という事を前提にした内容です。
「カラスは黒い」事を前提とする場合、「黒ではないならばカラスではない」となります。
つまり、黒くないものをすべて調べ、その中にカラスがいない事を確認する事で、カラスを調べることなくカラスが黒だと断定できます。
そのため、実物を観測する事ができなくても判断がつきます。
これだけですと違和感を抱く方も多いと思いますが、論理的には正しいですが、実際にそれを行う事は不可能に近いです。
ヘンペルのパラドックスの問題は黒くないものという定義の曖昧さと実際の総数が多すぎる点、さらには存在が不明なものでも成立してしまう点です。
この問題は前提条件がおかしい事で起こります。
具体例
「幽霊は透明である」ことを前提とします。
この場合「透明でないならば幽霊ではない」となります。
つまり、見えるものを全て調べ、そこに幽霊がいなければ幽霊は透明であるとなります。
ここで問題となるのが
- 幽霊は透明とする定義が正しいか
- 幽霊の存在が前提となっている
- 透明の解釈を目に見えないとする場合、盲目の方との定義の差が生まれる
- 見えるもが多すぎるため、実際に調べる事が困難
特に上記の4番目で取り上げられた絶対数が多すぎる事によって証明することは不可能に近いです。
そのため、ヘンペルのパラドックスは対象となる調査対象が多いとその調査ができないため、限定的な枠の定義を用いる事で有効的に使う事ができます。
例えば、三部屋中、二部屋には人がいる、一部屋には幽霊がいると定義を追加します。
この場合二部屋で人が確認されれば、残りの一部屋には幽霊がいる事になります。
しかしここでも疑問が残ります。
幽霊は実際に存在しているのかという点です。
まとめ
このように、ヘンペルのパラドックスは前提条件を元に展開されるため、前提条件が具体的で正しくなければ成り立ちません。
しかし、その前提条件を正しく導く事ができれば実際にカラスが黒である事はわかる事が多いです。
また、調査を行うためには多大な時間や労力をかける必要性が出る事もあるため、活用する事には一定の条件付けが必要になります。
このため、証明の手段としては特定の条件下で採用される事が多いです。
備考
ヘンペルのパラドックスでは黒くないカラスはカラスではないとしていますが、白いカラスは実在します。
アルビノという色素の変化した個体はその代表ともいえます。
ヘンペルのパラドックスはカラスのパラドックスやヘンペルのカラスとも呼ばれます。