
ハロー効果(後光効果/ハローエラー)とは
概要
ハロー効果は特徴的な印象を過大に捉えてしまう心理作用です。
この影響は初対面の時のように情報を知らない状態の方が効果が大きく作用します。
そのため、第一印象で受けた特徴的な印象を元にして強い先入観を持ってしまう事で、実際の人物像とは異なった印象を持ってしまう事も多いです。
このような事が起こる原因としては、不足している情報を目立った特徴から予想する事で、認知バイアスの影響を受けて顕著な特徴が過大に捉えられてしまいます。
これはイラストを使った伝言ゲームをイメージしてもらえるとわかりやすく、最初の絵の特徴を元に次々とイラストを描いていくと最終的には元の絵を予想する事が困難になってしまう程変化している事も多く、伝達の難しさを痛感します。
また、噂話なども特徴的な部分にフォーカスしてしまう事があるため、噂の出どころは「~だろう」だったものが「~である」と確定情報に変化してしまう事も珍しくはありません。
ハロー効果の種類
ハロー効果は主に2種類に分類され「良い印象が協調される時」と「悪い印象が協調される時」があります。
- ポジティブ・ハロー効果 (良い印象)
特徴的な印象の評価が高いと知らない他の情報の評価も高いと予想します。 - ネガティブ・ハロー効果 (悪い印象)
特徴的な印象の評価が低いと知らない他の情報の評価も低いと予想します。
このような真逆の印象を与えてしまう心理効果ですが、実際にはどのような印象を受けるか・与えるかは個人の影響が大きいため、等身大の評価をする事はとて難しいと考えられている事から偏見などの元となる情報を知らないという前提で考える無知のベール(無知のヴェール)という考え方は重要です。
広い視点からの合理的な分析がでてきずに、主観的な要素のみで判断してしまうとコミュニケーションが上手に取れずに退陣関係が悪くなってしまう事もあります。
また、会社などの組織で人事を担当する人は特に注意しなければ優秀な人材に対して誤った評価を付けてしまう恐れがあり、最悪の場合は優秀な人ばかり退社して組織の活動に支障がでてしまう可能性もあるため注意する必要があります。
ハロー効果の具体例
ハロー効果の与える心理的な影響によって全く異なる判断や評価をしてしまう・されてしまう可能性があるので注意が必要です。
具体例
条件を下記の4つとします。
- Aさん
有名大学までの教育を受けて高学歴の人材として大企業に正社員として勤める社会人になりました。 - Bさん
高校に入学して早々に中退してしまったため中学校までの教育しか受けずに中小企業にアルバイトとして勤める社会人になりました。 - 他の要素は全く知らないとします。
このような条件のA・Bさんを想像すると全く異なる印象になる人が多いと思います。
例えば
- Aさんは博識で給料も多く仕事もできる印象を受けるとします。
(ポジティブ・ハロー効果) - Bさんは定職に就かずに親元で暮らしてお世話になっている印象を受けるとします。
(ネガティブ・ハロー効果)
上記のように、事実がわからずに先入観で判断してしまうと歪んだ印象を持ってしまう可能性があります。
特に俗にいうイケメン・イケジョ(美男、美女など)がポジティブ・ハロー効果を受けやすい傾向があり、生涯年収などの具体的な数字としても影響がでるといわれています。
このように誤解を生む心理が働くのは、生態系の中で生き残るために物事を即断できる能力が必要だったためで、即断する能力が高かった個体が生存競争に勝ち続けてきた(敵者生存(最適者生存)の世界では即断できる方が適応能力が高かった可能性があります。)ため遺伝的に受け継がれてきた(生存者バイアス)ようです。
ハロー効果の克服
ハロー効果を克服し、先入観を防ぐ対策として、
- 事実的な評価から他の評価を想像しないようにしましょう。
- 一つの行動から得られる評価は事実的な評価一つにしましょう。
- 数字などを意識し客観的事実を元に評価基準を設けて評価するようにしましょう。
などがあります。
基本的に感情と評価は別に考え客観的な視点で捉えなくては現実的な評価との差が生まれてしまいます。
具体例として
やる気のない雰囲気で淡々と仕事をして定時に帰宅する社員のAさんがいるとします。
ここでハロー効果を受けてしまう場合
- やる気のない雰囲気だから仕事もできないだろう
- 淡々と仕事をしてるのだから周りとかかわりたくないのだろう
- 定時で帰っているから大した仕事をしていないだろう
このような「だろう」を主軸とした先入観が生まれます。
ハロー効果を克服するためのポイントとして
- やる気のない雰囲気
→受信者側の主観なのでよくありません。 - 淡々と仕事をしている
→なぜ淡々と仕事をしているのかを確認してください。 - 定時に帰宅
→仕事の進捗具合を算出してくください。
このように感情的な評価と実際の内容の差異がないのかを確認する事が大切になります。
実際のAさんは下記のような社員かもしれません。
- 仕事の効率がとても良い社員さん。
- 仕事量が多く、周りを気にする余裕はありません。
- 親や子供の世話をするため早く帰宅しなければいけません。
- 仕事量が多いのに家に帰れば家事等を毎日しているため疲労困憊で出社してしまいます。
このように最初の先入観とは異なった見え方になる可能性もあり、ハロー効果を受けた評価のAさんと、実際のAさんでは印象がまったく異なります。
まとめ
ハロー効果は私たちの祖先が自然界で生き抜くために身に着けた重要な能力であると考えられています。
自然界では物事を即断する能力は生存に有利に働いたと考えられていて、その遺伝子が脈々と継承されて現代まで残っていると考えられています。
しかし、現代社会では表面的な情報に騙されない冷静な判断が必要な事も多く、時には人の評価を大きく左右するほど重大な影響を与えます。
特に多くの人は初頭効果(最初の印象を大きく受ける)の影響が大きくなりがちで、一度ついてしまった印象はアンカリング効果(その後の評価基準の参考となってしまう心理)の影響を受けてしまうためこのような心理効果に惑わされない様にすることはとても難しいです。
特に評価を180度変えるためには大きなインパクトが必要になります。
既存の評価を覆すためにはコペルニクス的転回(コペ転/パラダイムシフト)でも知られるように、今まで常識だと考えられている事を見つめおす必要があるため「おかしい事がわかない」という状態から始まります。
例えば
いつも残業をする社員がいるとして「残業するのが当たり前」の組織と「なぜ残業をするのか」について調査をする組織がある場合、前者の組織は正しい評価をできていない可能性があります。
残業している社員は実際は仕事が忙しいわけではなく「日中さぼっているため仕事が終わらない」という可能性や「残業代が欲しいから残業している」という状態である事も多いです。
しかし、基本的に一貫性の法則(一貫性の原理)(継続したいと思う心理)が働くため、誰も現状を変えたくないため事実確認は行われずに改善される事もありません。
そして、このような事が組織全体の風習として広まると問題提起する人すらいなくなり、組織は弱体化していきます。
このように、ハロー効果の影響は正しい評価をする際の障壁になってしまうため惑わされないように気を付けたいです。
備考
ハロー効果は心理学者エドワード・ソーンダイクが1920年に書いた論文「A Constant Error in Psychological Ratings」で初めて使われ「後光効果」や「ハローエラー」と呼ばれる事もあります。