ギャンブラーの錯誤(ギャンブラーの誤謬/モンテカルロの誤謬)とは
概要
ギャンブラーの錯覚(gambler’s fallacy)は「実際の数学的な確率の計算」と「感覚的な確率の推測」の差が発生してしまう心理です。
このように「実際の数字と感覚が異なる」事例は多く存在しているため典型的な一部の例はパラドックスとしても知られています。
「ギャンブラーの錯覚」の事例については1913年に発生した「モンテカルロカジノ」での現象が有名なため説明する際に度々使われる事からモンテカルロの誤謬(ごびゅう)とも呼ばれています。
「実際の発生頻度」と「感覚的な発生頻度」による認識を誤ってしまう状況として特に多いのは「確率の偏りが発生している状況」で連続性や関連性がない切り離された独立の事象の場合が多いです。
多くの人は「偏りが収束する確率が高い」と誤認してしまう傾向が強いですが「関連性がない独立の事象」はその都度確率を算出する必要があるため「前後の事象の結果」によって確立が変化する事はありません。
そのため感覚的な推測は論理的に正しくない事も多く、その結果不合理な行動を取ってしまう事があります。
特にギャンブルが好きな性格の人の中には感覚的な要素に頼って賭けをしている人も一定数いるためトータル的な成績では負けているにも関わらず、「勝っている」時の印象が強く残ってしまい総合的な勝率(利益)でも「勝ち越している」と錯覚している人もいます。
※ギャンブルが嫌い(苦手)な人の中には負けた時の印象が強く残ってしまい「自分には運がない」と思い込んでしまい実際の勝率(損失)以上に負けていると誤認している人もいます。
具体例
確率を錯覚するシーンは多く、実際に多くの人が確立を誤解してギャンブルをしていると考えられます。
例えばコインを投げる場合の例
コイントスで「2回連続で表がでる確率は25%」「5回連続で表がでる確率は約3%」と連続で起きる確率は試行回数が増加する程に低下していきます。
このような前提知識がある人はとても多く、この確率の計算から「コインを投げて表が連続で出ている状況」に陥ると「裏が出る確率が上がっている」と誤認する人は多いと思います。
しかし、コインを何回投げても表が出る確率は常に同じ50%です。
※正確には完全にランダムに投げると重心のバランスの違いによって微々たる影響が現れるため若干の誤差が発生します。
このような錯覚が起きてしまう背景として「くじ引き」のように「事前に起きた事象の影響が後の事象に影響を与える」ような状態の場合は試行回数が増加する度に確率が変化していきます。
くじ引きの場合は「有限のくじ」の中にアタリとハズレが混在していて試行回数に限りがあります。
※引いたものを戻して引きなおす場合は確率に変化はありません。
この状況でハズレが数回出るとハズレの数が減少しているため実際にアタリが出る確率は上昇します。
具体的には
10枚のくじの中にアタリは1枚(10%でアタリ)とします。
このくじを引き5回連続でハズレが出た場合、次にアタリを引く確率を計算する時には5枚のくじの中にアタリは1枚(20%でアタリ)となり確率が向上します。
このような事象の影響からコイントスのように「事前の事象が後の事象に影響を与えない状況」の場合でも「くじ引き」のような経験の影響を受けてしまう事で本来の確率を錯覚させる要因となってしまう傾向があります。
モンテカルロのカジノでの出来事
1913年にラスベガスのモンテカルロ・カジノで起きた確率の偏りは有名です。
ルーレットのゲーム中にボールが黒いポケットに連続で落ちたため、次は赤のポケットにボールが落ちるはずだと人々は考えたのです。
ここまでは良くある話ですが、モンテカルロのカジノでは27回連続でボールは黒いポケットに落ち続けました。
その夜の公式記録では人々がボールが赤に落ちるのを待ったために何百万ドルもの損失が出たそうです。
このような信じられない確率の偏りから、熱心なギャンブラーの間では確立の錯覚が広く知られるようになったと言われる事もあるほどで「過去の結果は将来の結果に影響を与えない」ことを証明する事例でもあります。
そして、このような確率の偏りはいつどこで起こるかわからないため、戦略的なスキルを必要とするゲームを除く賭け事全般に言える事です。
時には、錯覚した確率が勝負の分かれ目になり大きな損失を生んでしまう事もあると思います。
まとめ
多くの人はギャンブラーの錯覚の心理に陥ってしまった経験があると思います。
過去の試行結果から次を予測する事ができるのは「特定の条件が同一である場合」に発生するものですが、直感的には「同一の出来事が何度も連続して起こり続ける」ことはあり得ない(確率が低い)と考えてしまう心理が働き「結果が一貫していればいるほど、逆の結果が起こる可能性が高くなる」と考えてしまいがちです。
つまり、コイン投げで片方の面が何度も連続して出るような確立の偏りが発生している状態になっていても、次にコインを投げて表がでる確率は50%です。
しかし、中には期待値がその役割を果たせないようなサンクトペテルブルクのパラドックス(サンクトペテルブルクの賭け/サンクトペテルブルクの問題)のように極めて少ない確率で莫大なリターンを獲得できるような確立の計算もあるため、数学的な正しさだけが全てではありません。
また、理的な錯覚の他にも気を付けなくてはいけない点があり、通常のコイン投げでは無作為に投げるという前提があります。
この前提によって出る確率が50%となっていますが、この無作為という前提条件は投げる人の技量や本来ならばかからない力(磁力など)によって覆す事ができます。
そのため作為的に偏りを持たせる事ができるという点は、常に考えなくてはいけません。
これはコイン投げに限った事ではありません。
例えば、ゲーム内のくじ引きや、ガチャポンは景品の数が減る事はありません。
そのため、多額のお金を課金して何回もガチャを引いてもでない場合は、確率的な偏りによってそのような結果になっているのか、システム的な問題で確率以外の要因からもたらされている結果なのか見極める事は重要です。
また、ギャンブルはたいていゼロサム・ゲームやマイナスサム・ゲームである事が多いです。
そのため、基本的には長く続けて利益ができることは少ない反面、ギャンブルには依存性が高いものが多くあります。
そのため、消費者金融から借入を行ったり、中には多重債務に陥ってしまう人もいます。
娯楽としてギャンブルをしているなら損失で終わっても良いのかもしれませんが、利益を出したい場合はプラスサム・ゲームに参加する事が重要です。
備考
ギャンブラーの錯覚はギャンブラーの誤謬(ごびゅう)とも呼ばれます。